「いくよ『GU(ジッツー)』!!」
「キィ!!」
「チャージラッシュ!!」

GUは猛突進を開始し、アレックスはその上で槍を突き出す。
そしてそのままフランゲリオンの腹を突き抜けた。

「ショット!ってか?」

ドジャーはダガーを一本投げつける。
そのダガーはモンブリングの中心。
目のど真ん中に突き刺さった。

「っしゃぁ!インナーブル(ど真ん中)!」

すれ違いざまにダガーを引き抜き、なお進む。

モンスターを切り倒しながら
アレックスとドジャーは真っ直ぐ城門へ向かって進んでいた。

疲れ知らずの陸上最速モンスターGキキにまたがるアレックスと
自慢の快速特急足で突っ走るドジャー。
そして、

「見ろよアレックス!」
「えぇ!内門ですね!」

辿り着いたルアス城跡内門。
内門は門の役割を果たしていなかった。
一年前の攻城戦によって崩された城門はすでに半壊したままである。

「内門もノックの必要はねぇみてぇだな」
「このまま突っ込みましょう!王座は入ってまっすぐです!」
「王座に行くのか?」
「・・・・・・・・・・・・他に思いつきませんよ」
「まぁな」

二人は速度を保ったまま城内へと駆け込んだ。

まっすぐ行けば王座。
そのアレックスの言葉だったが、
そうは簡単に事は進まなかった。

アレックスとドジャーは進行を止めた。

「クッソ!なんじゃこりゃ!」

城門へ入ってすぐ。
その進行方向は大量の岩で埋め尽くされていた。
城内は決してせまくない。
だが進行方向の全ては数え切れない数の大岩によって阻まれていた。

「ありがとう『GU(ジッツー)』」
「キィ♪」

アレックスはGキキを卵に戻した。

「城が崩れたのか?」
「いえ、この岩は人工的なものですね・・・・・・」
「チクショウ!呼んでおいてお引取り願いますってか!」
「道が全て塞がれているわけではありません」
「あん?真っ直ぐいけば王座だっていってたじゃねぇか」
「それが一番だったんです・・・・・・・・ですが目的地の王座は最上階です。
 まっすぐ行くというより最上階を目指せばいいんです」
「んで、他の道があんのか?」
「もちろんです。なんたってお城ですよ?
 ですが入っていきなりが防がれていると行く道は二つしかありません」
「二つあれば何の問題もないじゃねぇか。どこだ」
「すぐ左右ですよ」

ドジャーとアレックスのすぐ左右。
つまり内門から入ってすぐ左右に小さな階段が配置されていた。

「狭い螺旋階段です。実はこの階段を上っていけば最上階まで直行できます」
「そりゃ無用心な事で。攻め込まれた時に困るだろうが」
「城内まで攻め込まれるのなんて稀だったんです。それほど騎士団の武力は強力なものでした
 仮に攻め込まれても強力な兵士を階段に配置しておけば狭い故に突破されずらいです」
「つまり・・・・・・・待ち伏せにはかっこうの階段だってことか」
「そういう事ですね」
「まぁ行くしかないわけだな。で、左右どちらの階段を使う」
「そうですね・・・・・・やっぱり」

「左だな」「右ですよね」

お互い「はぁ?」といった顔でお互いの顔をのぞいた。
しかしすぐさま二人はそれぞれ左右へと向かった。
言った事は違うが、それぞれの意見としては成立したようだ。

「カッ!どっちが先に最上階に着くか競争だな」
「"着けませんでした"・・・・は無しですよ?」
「上等」

ドジャーは左の階段。
アレックスは右の階段へと上がっていった。



















「ったくよぉ。こういう時は左の壁に沿っていけば必ず目的地につくもんなんだぜ
 なぁにが「右です」だ。左に決まってんだろがアレックスめ」

迷路と違っていつもその理論が成り立つわけではないのだが
そんな事も考えずにドジャーは階段を上がっていった。

石壁に囲まれた螺旋階段。
昇っても昇っても同じ景色に見えた。
狭い螺旋階段を昇りに昇る。
だが狭い通路の中
ふと視界が広がった。

そこは大きくはない階段の出入り口であった。
つまりここから2階へ行ける。
しかし2階に用はないのでドジャーはさらに階段を上へとあがる

同じ景色の階段。
さらにさらにと昇る。
螺旋にそり、昇り続ける。

そしてまた階段の出入り口に出た。

「3階か。よく考えたら最上階って何階なんだ」

そんな事を言ってる時だった。
ドジャーの横から何かが繰り出された。
ドジャーは咄嗟に避けようとしたが間に合わず、
ガードの上からその一撃を受けてしまった。

3階の方へと吹っ飛ばされるドジャー。
着地と同時にガードした腕が動くか確認する。
ダメージはあるが大丈夫なようだ。
いや、何か痺れているような気がする。

「俺の相手はヤサな盗賊か」

ドジャーへ攻撃を繰り出した者が言う。
その男は階段への道を自らの体で塞いでしまった。

その男。
屈強な体をした修道士であった。

「誰だテメェわ!」

「フン、これから死ぬ者に名乗る名など無いわ」

突然その修道士の両手がビシビシと音を鳴らし始める。
あれは・・・・雷。
修道士の両手を雷が渦巻いていた。

「稲妻パンチってやつか・・・・・・だが並のじゃねぇな」
「当たり前だ。カミナリとは神が鳴るからカミナリなんだ
 大地の怒りというスキルがあるが・・・・・・・これは天の怒りだ!!!」

言うなり突っ込んでくる修道士。
真っ直ぐ
ただ真っ直ぐ勢いよく。
電気を纏った拳を突き出して。

だが来ると分かっていればドジャーが避けるのは難しくなかった。
攻撃を外した修道士の拳は
そのままドジャーの背後の壁面に打ち付けられた。
石の壁面がへこむ。
石がパラパラとこぼれ、その稲妻パンチの威力を物語っていた。

「これが・・・・・神の力の一撃だ。だがコレを避けたのはホメてやろう」

神とか・・・・どこかで聞きなれたような言葉だった。
いや、どこかと言わなくとも分かっている。
最近よくその手のアホに絡まれるからだ。

「アンジェロやモリスみたいな事を言うんだなテメェ」
「ほぉ。アンジェロとモリスを知っているのか
 フン、だが、あんな奴らよりも天に選ばれるべきは俺だったのだ
 次は俺がアスガルドに選ばれる番だ。あの人がその手がかりを持っている」
「あん?」
「お前が死んで天国(アスガルド)にいった時のために特別に教えてやろう
 特別だ。特別だぞ?神に選ばれる俺の名を気安く知る者はそうはいない
 死ぬゆく者に教える名などないが、褒美だ。聞いておけ」

修道士の男の腕の電気がバチバチとさらに力を増した。

「俺の名はブル。『ライトニング』ブルだ!」

ブルがまた突っ込んできた。
右腕が唸りをあげてドジャーを襲う。
その拳。
稲妻パンチがドジャーの横をかすめる。

避けた事を勝機とドジャーがダガーを突き刺そうとした。
だが、続けざまに左腕の稲妻パンチがドジャーを襲ってきた。

「コンビネーションか!!!」

不意をつかれ、稲妻パンチがドジャーの横腹に直撃した。
ただ雷があるというだけでなく、重く、強力な一撃。
それを食らってドジャーは吹っ飛ばされた。
そして壁へと叩きつけられる。

全身に雷を残り気を残しながら、ドジャーは片ヒザを着いた。

「シビれたろう?これが神の力だ」
「・・・・・・チッ。静電気みたいなもんだぜ」
「減らず口を・・・・」

たしかにドジャーのダメージは深刻だった。
一撃直撃を受けただけだが、
立ち上がるのがやっとである。
雷によってのダメージの蓄積ツラいのだ。

「ジっとしていろ」

ブルは両手を雷で渦巻きながら近づいてくる。

「ざけんな!」

右手を振りながらドジャーは移動しようとした。
が、その進行方向の壁に稲妻パンチを叩き込む。
ドジャーが今度は逆に逃げ込もうとするが
そちらにももう一方の手の稲妻パンチが壁に突き刺さった。
逃げ場は無かった。

「観念しろ」
「ケッ!息がクセぇんだよ。顔を近づけるなってんだ」
「・・・・・・終わりだ」

ブルは両手を引き抜いた。
雷は纏っていない。
その手でドジャーの頭を掴んだ。
そして両手でドジャーの頭を掴んだまま持ち上げる。

「死刑の方法を知っているか?電気イスというやつだ」
「さぁてね。マッサージ機の一種か?」
「フン。死ね!!!!!」

ブルはドジャーの頭を掴んだまま腕から大量の電気を流し込んだ。

「ガアアァァァァア!!!!」
「神の力にひれ伏すがいい!!!!!!」
「・・・・・・・・なぁーんてな」
「何?!」

雷を流し込まれているはずのドジャーは平気であった。
まるで何も感じていないかのようである。

「神の力が通じないだと?!」
「アホか。良く見てみろよ」

ドジャーの足元。
そこから何かが垂れていた。
それはドジャーのアクセサリの一つ。
どこのアクセサリか分からないが細いチェーンのような物が地面に垂れていた。

「アース代わりに使って地面に電気を逃がしてるだけだ。
 っつってもノーダメージとはいかねぇようだ。結構効くぜこの電気はよぉ」
「馬鹿な・・・・」
「さすがに長く受けてちゃヤバいかもな。今んとこはやっぱマッサージ機程度だがな
 さぁてと。・・・・・・・・・・・食らいな」

ブルが腹に違和感を感じた。
そこにはドジャーのダガーが刺さっている。

「突き刺し・・・・・・この俺をこんなチンケな攻撃で」
「おっと。ここでドジャー先生の盗賊講座だ
 これは盗賊の基本中の基本。"突き刺し"。だがこれをちょぃとひねれば」

ドジャーはブルにダガーを突き刺したままチョィとひねる。

「がぁぁああ!!!」
「"えぐり"だ」
「クソォ・・・・・・その前にお前を感電死させてやるわ!」
「そりゃぁイヤだな・・・・・さぁて仕上げだ・・・・」

ドジャーは足元のアース代わりにしていたアクセサリに足をかけた。

「こりゃぁ俺もちと度胸がいるけどよ・・・・・」
「何をする気だ・・・・・」
「もうきっかけは作ってあんだよ。お前に壁際に追い詰められる時
 あるスペルをお前にかけておいた。なんだか分かるか?」
「・・・・・戯言を!!!」
「"属性変更"。俺の攻撃属性をお前の弱点へと変える盗賊の超高等技術だ
 さぁて問題。現在電気が体中に流し込まれてる俺。
 つまり今の俺の属性は"女もシビれる色男"って事だ。
 たった今このアース代わりのアクセサリを蹴り外したら・・・・・・
 ダガーを突き刺されているお前はどうなると思う?」
「や、やめろ!!!!!」
「や・だ」

ドジャーはアクセサリを蹴飛ばした。
その瞬間
ブルに強力な電撃が流し込まれた。

「がぁあああああああああ!」

ブル自身フラつき・・・・その場で片ヒザをついた。
もちろんドジャーを手放した。

「やっべ俺自身もメチャクチャ効いたぜ・・・・・・・・・・・無茶な戦法だったな
 だがブルとやらよ。オメェ自身自分の雷食らってどうだったよ?
 カカカッ!"イっちまう"快感だったんじゃねぇか?
 ブルだけにブルっときたろ?おっと今のはサムかったか失礼」
「クソォ・・・・・」
「さぁてと・・・・立場が逆になったな。そろそろ終わりにしようぜ」

ドジャーがダガーを構えてブルへと近づく。
ブルは動こうとするがよろめく。
ドジャーがえぐりで与えた傷。
腹から出すぎているその血が致命傷のようだ。

「・・・・・・この『ライトニング』ブルを追い詰めるとはな。観念した。負けだ。
 天国(アスガルド)に行く前に・・・・・・名前を聞かせてはくれないか」

ドジャーの口もとが笑みで歪む。

「これから死ぬ奴に名乗る名なんかねぇな」

そしてドジャーはブルを一刺しした。
あっさり。
そして無駄なく一刺しで勝負を終わらした。

「ったく。どいつもこいつも地獄に行く事は思いつかねぇのかよ・・・・
 クソッ・・・・ブルって野郎・・・・・・・・ひさびさに手こずらされたっての・・・・・・」

ドジャーはフラフラと階段を昇ろうとする。

「・・・・・・・・・・・・・・よく考えたらあいつが電気止めてたら負けてたな俺・・・・
 アレックスみたいに慣れない作戦なんて使うんじゃなかったぜ・・・・」

ドジャーはハァとため息をついた。







                 






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