「で、俺達はこの庭園を突破するわけだが」
「・・・・・?何か問題でもあるんですか」
「ある」

と言ってドジャーはアレックスの足を踏みつけた。

「いててて!何するんですか!」
「問題はコレ。アレックス。お前は足が遅い」

僕が遅いんじゃなくてドジャーさんが速いだけじゃないか・・・・

だがたしかにドジャーは盗賊の中でもトップクラスの瞬足の持ち主だ。
盗賊でトップクラスという事は全ての人間の中でトップクラスという事である。
マイソシア中を探してもそれに追いつける者などそうはいない。

「このモンスターが渦巻く庭園を一気に突破しようと思ったらお前の足じゃ少し物足りねぇ
 ってか俺はお前を置いていくぞ。お荷物ってのはそういうもんだ。で、どうする気だ?」
「それに関しては大丈夫ですよ」
「あん?なんだその自信は。速度ポーションでも大量に買い込んだのか?」
「速度ポーションがあってもドジャーさんには追いつけないでしょ」
「まぁそうだな。俺もブリズウィク使うわけだしな」
「で、使うのはコレです」

アレックスは腰のマネーバッグから一つの物を取り出した。

「卵?」
「そうです。守護動物の卵です」
「ほぉ、なるほどね。お前が騎士・・・・それも部隊長ってんならエルモアの一つでも持ってるわな」
「違います」

ドジャーはズルッと体ごと力を落とした。

「お、おい。んじゃなんなんだよ・・・・」
「なんなんだよって前言ったじゃないですか」
「あん?」
「コロシアムででしたっけ?僕の守護動物は・・・・・」

そう言ってアレックスは地面に卵を投げた。
すると中から守護動物が出てきた。
それは・・・・

「・・・・Gキキか」
「そうです」
「"そうです"じゃねぇだろが!こりゃ物資運搬用の守護動物じゃねぇか!」
「Gキキにだって乗ろうと思えば乗れますよ。それにバカにしちゃいけません」

アレックスはジャイアントキキの背中の毛を撫でてやる。
Gキキは気持ちよさそうな顔でキィ〜と鳴いた。

「陸上最速のモンスターを知ってますか?それがGキキです」
「・・・・・なるほどな。たしかにGキキの速さは誰もが知るとこだな」
「久しぶりだね『GU(ジッツー)』」

呼ばれてGキキは「キィ♪」と返事をした。

「なんだそのイカツい名前・・・・」
「『GU(ジッツー)』は騎士団で至急された特別な訓練を受けたGキキなんですよ
 その2号機なので『GU』です。速そうでしょ?」
「いや、速そうな名前じゃあるけどよ、その可愛らしい顔に合わないっつーか・・・」

Gキキは瞳を煌めかせながらキ?と鳴いた。

「訓練されてるからこの呼び名じゃないと返事しないんですよ・・・
 でも僕は僕でちゃんと可愛い名前付けてるんですよ」
「なんて名だ?」
「"お茶付け"です」
「・・・・・」
「いい名前でしょ?」
「お前・・・・・その日の朝ごはんお茶漬けだったんだろ・・・・」
「え?!よく分かりましたね!?」
「・・・・・・」

呆れるドジャー

「まぁとにかく行くか」
「そうですね」

アレックスは返事をしてGキキにまたがる。
Gキキにまたがる姿はやはり少し異様でもあった。
が、なぜかアレックスにはやけに似合ってるようでもあった。

「アレックス。お前のペースで行けよ」
「分かりました。『GU(ジッツー)』!!GO!」

アレックスが姿勢を低くしてそう言うと、
GUは最大加速で一気に突っ走った。
陸上最速生物は伊達ではない。

「ヒュー♪ イカすな」

ドジャーもそれについていかんと足元から風を起こす。
ブリズウィクだ。
そして一気にGキキの横に並走する。

Gキキとドジャーが高速で庭園を走り出すと、
すぐさまマシンガンを連射するマリナがいる地点に近づいてきた。
マリナとすれ違い座間にドジャーが声をかける。

「よぉ!マリナ!モンスターの料理は順調のようだな!」
「馬鹿にしないでよ!料理は商売(オハコ)よ!」
「食べ残しのないようにお願いしますねー」
「"Queen B"はお残し厳禁よ!」

短い会話を終え、
一気にマリナの横を通り過ぎる。
そして二人はもうマリナが見えないほどに走り去った。

庭園を疾走するアレックスとドジャー

「でりゃ!」
「やあっ!」

ダガーと槍。
一瞬でモンブリングとナイトメアーが屍となる。

ただひたすらルアス城の庭園の最短距離を走る二人。
目の前のモンスターだけを斬り、突き倒し。
ただ真っ直ぐ、猛スピードで庭園を駆け抜けていた。

「まさか本当に俺と同じスピードで走れるとはな
 Gキキってもんはたいしたもんだな」
「それはGキキをホめてるんですか?自分をホめてるんですか?」
「カッ!俺が凄ぇってのは前提だっての。だがまだ俺は100%のスピードじゃないぜ?」
「それは『GU(ジッツー)』も同じです。ね、『GU(ジッツー)』」

「キ!」

そう言いながらGキキに乗って走るアレックス。
通りがかりのメドューサに槍を突き刺し一気に通り抜けた

デスアイの魔法がドジャーへと放たれる
それをドジャーはジャンプで避け
デスアイのお洒落なハットごと頭を切り裂き、なお進んだ。

「マリナさん一人でこれだけの魔物相手に・・・大丈夫でしょうか?」
「なぁに、大丈夫。一人ってわけじゃねぇさ」

調度その時

アレックスとドジャーのはるか背後。

そこで大きな爆音と爆煙があがった

「ほれ、遅刻者が到着したみたいだぜ」
「芸術が爆発したみたいですね」


アレックスとドジャーは背後を見るのをやめ
安心してそのままなお城へと向かった。




















マリナの目の前で起きた大きな爆発。
そして渦巻く爆煙。

周囲のモンスターはいっぺんに吹き飛んだようだった。

「ゴホッゴホッ!」

煙に咳き込むマリナ
そしてマリナが爆心地の爆煙の方を見る。
まるで大岩のような煙
その爆煙の中から一つの影が現れた。

「あぁ!美しい!これこそやはり芸術だね」
「エクスポ!あんたもうちょっと周りを見て戦いなさいよ!」
「おや、マリナ。君は美しいのにドジャーと同じ事を言うんだね」
「・・・・・・じゃぁ前言撤回」

エクスポはアハハと笑い、
意味もなく指をパチンと鳴らした

「何にしろ遅刻よ遅刻!あんたが持ってる懐中時計は飾りなの!?
 『時計仕掛けの芸術家』が聞いてあきれるわ」
「心外だなぁ、ボクにはボクで用事があったんだよ。
 それでも駆けつけるボクの仲間意識は美しいと思わないかい?」
「・・・・・はいはい」
「で、ボクはまだおおまかにしか話を聞いてないんだ
 こんな醜いモンスターの巣の中へボクを呼んだわけだけど、
 一体何をどうすればいいんだい?美の見つからない所は窮屈でたまらない
 あ、サファイアポンナイトは少し美しいね」
「そんな事はどうでもいいわ。とにかくドジャーとアレックス君は先へ行ったの
 私達の仕事はここらのモンスターの掃除ってところね」
「掃除。それは汚いものを美しく変える。掃除とはまるで魔法のようだね」
「あんたと話すと頭が痛いわ・・・」

マリナは額を抑えながら言う。

「・・・・・・・・・んじゃほらヒール・・・・・」

そんなマリナに暖かい光が降り注いだ。
それは白い白衣がやけに似合わない聖職者からだった。

「レイズもやっと到着なの?」
「・・・・・・・さっきからずっと居た・・・・・・・・・・」
「え?いつからよ!?」
「レイズはボクと一緒に来たよ」
「えぇ!?全くあんたはいつも存在感が薄いんだから」
「・・・・・・・・うるさいな・・・・・・・・・死ねばいいのに・・・・・・・・・」

レイズの影っぽい空気。
それは戦闘用に持ってきたツリスタッフによって倍増されていた。
ツリスタッフは青い魚の骨の形をした杖である。
そのツリスタッフを持つ姿は白衣がなければ聖職者とも医者とも思えぬ姿である。
死体のような人間が魚の死体をもっているのだ。


なにはともあれ
マリナ・エクスポ・レイズの3人がこの場にそろった。

「さぁて、掃除の続きよ」
「しょうがないね」
「・・・・・・・・だる・・・・・・」
「ミートボールを魔物さんにプレゼントよ!」

マリナがギターを構える。
そしてやかましい弾丸の連続音をまた響かせた。
達人でも数えるのは不可能ではないかという高速連射。
目の前のモンスター5匹が一辺に穴だらけになりはてた。
ワイズマンという岩でできた堅いモンスターさえ穴が空く。

「ここは奇妙な場所だね」

サンドボムを爆発させながらエクスポが言った。

「何がよ」
「古今東西、分け隔てなくモンスターが存在してるんだ」
「・・・・・・・?・・・・・・・」
「たとえばイカルスにある火山の周辺にしか生息していないはずのチャンプスミル
 ブロニンやツェピラらも寒い地域にしか存在しないモンスターだ
 ポン系のモンスターもスオミの水から作られたモンスターで・・・・・」
「・・・・・・別に・・・・・・無理矢理連れてきただけだろ・・・・・・・・」
「そうよ。たいした問題じゃないわ」
「いや、ボクがいいたいのはさ、そこが醜いってことさ」
「は?」
「・・・・・・・・・」
「無理矢理寄せ集めたって事だろ?これほど醜いモノはないよ
 前に不思議ダンジョンの裏ゾーンという所へ行った。あそこも同じだった。
 普段パレットにあるべきでない色が混同して埋め尽くされている。
 混ぜに混ぜた物に美しさはないよ。絵の具を混ぜすぎると辿り着くのはいつも黒さ」
「・・・・・・よくわかんないぞエクスポ・・・・・」
「レイズには医学があっても美学はなかったかな?」
「・・・・・・・・死んで静かになればいいのに・・・・・・・・」

エクスポはやれやれと両手を広げてみせた。

「・・・・・・・何にしろ・・・・・・・・・戦闘・・・・・・面倒くさい・・・・・・・・」
「何言ってるのよレイズ!やらなきゃしょうがないでしょ!」
「いや、レイズの言う事も一理あるよ。だって美しくないほどキリがないからね」

たしかにとマリナは周りを見渡した。
数が数え切れないほどのモンスター達の群れ。
いやになる。

「頭を倒すしかないわね」
「モンスターのボスかい?」
「いいえ、このモンスター達を操っているジェイという男がいるはずなの」
「『カメレオンブルー(きまぐれの青)』ってやつか」
「・・・・・・・・・そいつ死ねばいいのに・・・・・・・・・・・・・・」
「そういうこと。ジェイを倒せばなんとかなるかも」
「どんなやつなんだい?」
「ドジャーは"青いやつ"って言ってたわ」
「・・・・・・・・・・・意味不明・・・・・・・・・・・」


「HEY!!コールミー!?レディサジェノメン?」

登場だった。
いや、最初から近くにいて声に反応しただけのようだ。
一匹のティラノの上にのっかっている盗賊。
それは全身青。
髪の毛も
ダガーも
ムチも
服も
青で埋め尽くされた盗賊だった。

「あれね」
「間違いないね」
「・・・・青い・・・・・」
「青いわ」

青かった。

「ブルーブルー言うんじゃないゼ!ま、いいか。どうせユー達はゴートゥーヘル
 デッドマン・キャンツ・セイ。ハッハ!ともかくパーティタイムだ」

「何言ってるかわかんないわよ!」
「美しくない語りだね」

「OKOK、まぁいい。終演(ジ・エンド)までエンジョィしてってくれヨ。
 ティラノステイルとレッツダンシン♪ハッハ!じゃぁ、ハヴァ、ナイスデイ♪」

青く目立った格好をしていたジェイ。
その目に付く青色の姿が一瞬にして消えた。

「チッ、逃げ足が速いやつね」

だがジェイが居なくなっても
ジェイが乗っかっていたティラノは消えていない

そのティラノは普通のティラノとは一味違う
緑の肌と大きな体をしていた。
手にもつ大きな骨付き肉
それに自ら火炎を一吹きして焼き
肉汁をしたたらせながら大きな牙を生やした口で一口。
そしてマリナ達の方へ見てニヤリと笑った。

「生意気なティラノね・・・・・」
「醜い・・・・」
「・・・・・・・・・・死ねばいいのに・・・・・・・・・・」












                 






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