ボロボロになったルアスの城の外門の前に
アレックス・ドジャー・マリナの3人は立っていた。

城と城壁は所々ボロボロに崩れ果てており、
それが王国騎士団の栄光は過去のものだと物語っていた。

片側が倒れている外門。
もう門としての役割を担えていない
その外門から見える中の光景
それを見て
ドジャーは一言言った。

「アレックス。あれはお前の昔の同僚か何かか?」

雄たけびとうなり声
外門から一歩以上中にひしめくのは

多大な数のモンスター達だった。

「あれが『カメレオンブルー』のジェイが操るモンスター達ってことね」
「予想以上の数だぜ・・・・」
「そう言えば噂で聞いた事あります。
 廃墟と化した今のルアス城はモンスターの住処になってしまっていると
 だから今は人々はここの事をこう呼ぶそうです」

アレックスは槍で地面に二つのアルファベットを書いてもう一度口を開いた。

「モンスターキャッスル(MC)と・・・・」

3人はもう一度城の敷地内を見る。
モンスター達が縦横無尽にひしめくのをみると
たしかにもうこの城は所有権は騎士団からモンスターへ渡ってしまったと思える。
モンスターキャッスルと呼ばれるのも納得だ。

「MCねぇ・・・・・」
「ねぇ、敵の数の話も大事だけど味方の数にも問題がある気がするんだけど」

マリナが両手を広げてみせる。
アレックスとドジャーとマリナが立つ城門前。
そうである。
予定ならここにレイズとエクスポもいるはずである。

「あいつらの遅刻なんて想定の範囲内だぜ」
「でもどうするんですか?待ちます?」
「あぁ〜・・・・どうすっかなぁ」
「私の怒りはもう待ちきれないわよ」

マリナがギターを担ぐ。
店に面倒事の火の粉を飛ばされたのだ。
重罪である。
その火の粉はマリナの怒りを最大火力まで灯した結果となった。

「そうだな。あいつらは必ず来る・・・・・・・と思う」
「もっと仲間を信じてくださいよ・・・・」
「まぁ、"来る気がする"。俺達の間柄はこんなもんでいいんだよ」
「で、どうするの?3人まとめて行くの?」
「この数のモンスターを相手にすると思うと少し骨が折れますね・・・・・」

鳴き止まない城敷地内のモンスター達の声。
まるで入って来いと誘っているようだ。

「城の庭園での戦闘組と突破組に分けよう。
 突破組はモンスターを無視して一気に城まで突っ切る。
 戦闘組はオトリ・・・・・というと響きは悪いが突破組に道を開くために庭園で戦闘だ」
「それでいいわ」
「どう分けるんです?」
「とりあえず聖職者は分けたい。といってもアレックスは今回の主役だからな
 お前は奥まで行かない事には話になんねぇ。オメェは突破組だ」
「じゃぁレイズは着き次第戦闘組ね」
「というよりそう考えると選択の余地もねぇな。
 あとから来るエクスポとレイズは遅々と突破組に着てもしゃぁーねぇ」
「ドジャーさんの駿足は突破組に使いたいですしね」
「そうなると現時点で突破組に道を開いてやる仕事ができるのはマリナだけだ」
「まとめると私とエクスポとレイズはこの庭園でモンスター狩りね」
「僕とドジャーさんはその内に一気に城内に突破」
「よし、話し合いは簡潔に完結が一番だ。これでいくぜ」

「じゃぁ私が進路を確保するからちゃんと突破するのよ?」

マリナがギターを担ぎ、
そして城門の方へ単独で歩んでいった。
だが大きな門へ向かう一人の女性の背中はあまりに小さかった。

「ちょ、ドジャーさん!よく考えたら現時点マリナさん一人ですよ?!
 あの数のモンスターを相手にするのは無謀じゃ・・・・」
「カッ!何言ってやがんだアレックス。マリナはあれでも《MD》のメンバーだぜ?」
「知ってますよ!強い事も知ってます!イヤというほど。
 でもマリナさんはどう考えても大勢を相手にできるタイプではないんじゃ・・・・・」
「いや、分かってないな。分かってねぇよ
 お前は知らないだけだがマリナはこの3人の中じゃ唯一の対多タイプだ」
「え?」
「お前、昨日酒場でマリナが詩人でどうこう言ってたな」
「はい。あ!そうか!詩人ということは・・・・」

アレックスは城門内へ入りつつあるマリナの方を見る。
そして肩のギターを見て言った。

「大勢の敵を一気に眠らせる事も可能って事ですね」
「違う」
「え?」
「根本的に違う。いや、ある意味眠らせる事には変わりないけどな」

マリナは外門をくぐり、
とうとうモンスターが渦巻く城敷地内へと入った。
マリナはギターを構えた。
それはいつものこん棒代わりに振り回す持ち方ではなかった。
しかし、酒場でギターを演奏する持ち方でもなかった。

「魔物がなんぼのもんなの?女は獣・・・・・ってね
 さぁ!心地よい悲鳴のワルツを演奏してあげるわ!!」

マリナがそう叫んだ瞬間。

激しく荒々しい連続音が響く。

瞬く間に周りのモンスター達が穴だらけになって死んでいった。

アレックスは一瞬目の前で何が起きているのか分からなかった。

「何がどうなって・・・・・」

だがやっと理解が追いついた。
マリナが持つギター。
その先から無数の何かが発射されている。
そう。
あのギターは・・・・

マシンガン

「どいつもこいつも穴空きチーズになっちゃいなさい?!!!」

マリナのギターから銃弾がとめどなく発射される。
ドラムがブラストビートを奏でるように途切れる事なくなり響く銃弾の発射音。
それは重く、鈍く、それでいて軽快な弾丸のサンバ。
いや、相手も永遠の眠りにいざなう子守唄(ララバイ)か
火を噴くギター。
いや、それはもうギターでなく兵器であった。

「アレックス。サンチョワイキって知ってるか?ルケシオンに生息するモンスターだ」
「えぇ・・・・」
「そいつが使ってる武器があのワイキギターだ。魔物も物騒な物作る世の中だな」
「人が使ってるのは初めてみますよ・・・・」
「魔物に使えりゃ人も使えるさ、露店にだって売ってるんだ」
「・・・・・マリナさんの戦い方があんな風だなんて」
「カカカッ!見ろよあの戦い」

笑顔でマシンガンギターを扱うマリナ
並大抵の反動ではないだろうが、それを抑えつけて弾丸を発射している。
ギターで人間を吹っ飛ばすほどの力があっての事だろう。
両手に抱えられたギターから小さく凶悪な銃弾が無数に連射されている

「通称"MB14mmマシンガン"いつもは片手に酒とフライパンなのにな」
「題して"女店主と機関銃"・・・ってとこですか」
「カカカッ!・・・・おぉっとそうだ。アレックス。おめぇマリナの店の名前を覚えているか?」
「え?えっと・・・・"Queen B"でしたっけ?」
「そうだ。そしてありゃぁマリナの二つ名でもあるんだ」
「"クイーンビー"・・・・女王蜂ですか・・・・・」
「あぁ・・・・・」

ドジャーが親指でマリナの戦闘地域を指差す。
見る見るモンスター達が穴だらけにされていった。

「"蜂の巣にされちまう"ってことさ」

そんな意味があったのか・・・・

「マリナさん・・・・もしかして詩人じゃないんですか・・・・」
「おぅ、あの服はルケシオンとかで売ってる偽服とかコスプレ服とか呼ばれる奴だ」

ショックだ・・・・。

「まぁ蜂だけにトゲのある女だとは思ったろ?」
「トゲじゃなくて針ですよ・・・・」

マリナはモンスターの中心でギターを振り回す。
振り回すといってもいつもとは逆。
先端が先。
それは銃口と呼ばれるものである。
そして惜しみなく発射される無数の弾丸
響きわたる軽快な連射音、
アレックスはマリナの二つ名を知ったせいか、
その連射音がまるで飛ぶ蜂の羽音のようにも聞こえた。
そして山積みになっていくモンスターの残骸。
アレックスはいつもと違った形でマリナに目を奪われた。



突然ヒュン!と細い何かが二人を襲った。
瞬時に二人はそれぞれ左右に素早く動いてそれをかわした。

正体は
細く長いサーベル。
その持ち主は海賊帽子をかぶったモンスター

「キャメル船長か」
「たまたまマリナさんの弾幕から逃れてきたんですね」
「チッ!」

アレックスとドジャーはもう一度武器を構えなおす。
キャメル船長の細長い剣がこちらをまっすぐ見据えている。

「一応一般的には強敵ですよドジャーさん」
「一般的には・・・・だろ?」
「そうですね」

アレックスが笑う。

「ドジャーさん。さっきのマリナさんのあだ名でひとつ思った事があるんです」
「あぁ、多分今俺が思ってる事と一緒だ」
「そうですか」

アレックスは右手の槍に力を込める。
ドジャーはダガーを手元でクルクルと回転させた後、回転をとめて突き出した。

「いきますよ!ブラストアッシュ!」
「ご馳走だ!食らいやがれ!」

アレックスの槍から放たれる槍の連続突き。
ブラストアッシュの突きの嵐がキャメル船長を襲う
ドジャーのダガーからも同じく連続突きが放たれた。
盗賊のスキル"めった刺し"だ

二人の右手から放たれる高速連刺。
刺す・・刺す・・刺す刺す刺す刺す殺(さ)す!

キャメル船長が槍とダガーで穴だらけになっていく。
そして穴だらけになって帽子を落とした。
あまりにあっけなかった。


ドジャーはダガーを回転させた後腰に戻し
アレックスは槍を担ぎ、言った。

「蜂の巣にするのは女王の仕事じゃないです」
「働き蜂(俺達)の仕事だな」







                 






SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送