「んーなわけねぇだろが!」
「でもモンスター学上ではそうなってるんです」
「あー!認めねぇ認めねぇ!」

ルアス99番街の道端。
アレックスとドジャーは今日も酒場『Queen B』を目指し
足を動かしていた。
他に行くところはないのだろうか。

とにかく毎日のように通る汚い路地。
ゴミを踏み荒らしながら進む。
変わらないルアス99番街の灰色の町並み。
そして変わらないくだらない話

「だってよ?キキだぜキキ」
「そうです。キキです」
「キキがジャイアントキキになるのは分かるぜ?だって面影あるじゃねぇか。
 毛むくじゃらのGキキになっても顔はキキのままだしな」
「でしょう?」
「でも、でもだ。クナは納得いかねぇ。面影なんて毛ほどにしかないじゃねぇか」
「それでもクナはモンスター学上"キキ族"なんですよ・・・・」
「ありえねぇーじゃねぇか!どういう進化なんだよ!
 キキ→クナ→Gキキなんて進化たどってるっつーのか?」
「別に同じキキ族だからって成長過程が同じとは限らないですよ・・・・突然変異したのかも。
 例えば祖先が人間だっていうモンスターだっているんですから分かりませんよ?」
「じゃぁなんだ?!ノカンは人間族だってのか?!」
「別にノカンの話は出してないじゃないですか・・・・
 でもかのデムピアスの祖先が人間だったって話は有名ですよ」
「あーもー。訳分からんくなってきた。結局クナはなんなんだ?」
「"キキ族"です」
「納得いかねー」
「・・・・・」

また振り出しに話が戻る。
というかもう話がループすること3回目である。
なにか出来損ないのスゴロクでもやっている気分だ。

「そういえば99番街のミュンヘルン一家のガキがキキにそっくりだったな」
「その一家のことは知らないですけどそりゃまた可愛い顔してますね」
「カカカッ!聞けよ、そのガキがまた親父にそっくりでよぉ、
 親父はもう剛毛で毛むくじゃらなんだよ。親父はGキキにそっくりってな」

アレックスはその一家を想像する。
家族団らんの様子が頭にすぐに浮かぶ。
そのキキ一家がみんな一生懸命人参を食べているのだ。
頭にその想像映像を残しながらアレックスは少し吹き出した。


「あーあ。でもメンドくせぇ事が多いな世の中」
「人間忙しいうちが華ですよ」
「オメェが言っても説得力ねぇよ・・・・」

うん。まぁね。
僕はヒマな方が好きだしね。

「最近は巻き込まれごとが多いしなぁ」
「僕は人生まるまるこの街に巻き込まれた気分ですけどね」

アレックスは辺りを見回す。
今まで生きてきた環境には無かったこの街。
それがもう見慣れ、
居心地がよくさえなっている。
そしてあまりにいろいろな事が起こってヒマしない所だ。
ヒマは好きなのだが
純粋な好奇心で新鮮な事も好きである。

「まぁ当分面倒事はゴメンって事だ」
「あぁ〜。そういう事は口にしない方がいいですよ?」
「あん?なんでだ」
「そ〜ゆ〜風に思う時に限って面倒に巻き込まれるもんです。
 それも望んでないようなやっかいなやつがね」
「カッ!望んでないから面倒事なんだよ
 そんなわけのわからん事考えなくたって面倒事は来るときゃ来るし来ねぇときゃ来ねぇよ」

その通りであった。
今まさにその"来る時"である。


「ヘロ〜♪ マイネームイズ"めんどうごと"」


声。
それは一つの屋根の上からだった。

「ほらね」
「カッ・・・・。明らかに関わりたくない人種だ・・・・・」

屋根の上の盗賊。
その男は一見して異様。
青い髪。
青い盗賊服。
青いダガー
青いムチ
全身が青かった。

「やっとファインドだぜ。ここまでハードなワークだったナ」

「なんだテメェ。わけの分からねぇしゃべり方しやがって」
「何か用ですか?見つけた・・・・というと僕達を捜してたようですけど」

「捜した捜したキングダムのナイトさんYO!」

「?・・・・僕ですか?」
「珍しい。アレックスに用事か」

「イエス!SO!アレックス!ユーに用があるんダ
 なんでミーがユーに用があるかアンダスタン?」

「さぁて、検討もつきませんね。もしかしてご飯でもおごってくれるんですか?」

「ワッサ?とぼけんなヨ。目的はユーの腰のマニーバッグ。その中のモノだ」

やっぱり・・・・か

アレックスは槍を構える。
分かっていた。自分を狙う理由なんて他にない。
ドジャーもダガーを抜いた。
明らかに相対関係になるだろうと分かるからだ。

「まぁよく分かんねぇけどよぉ、アレックスは渡さねぇってさ
 無理にとは言わねぇがお引取り願おうか?」
「そゆ事です。むしろ息を引き取ってください」

「Oh!ナイスジョーク?ハッハ。キルミー・イフユーキャン?
 OKOK。まぁそう構えるナ。ミーも今回はただの連絡オンリーだ」

「ほぉ、パシりか。やっぱ青いだけに"青二才"なんだな」

「・・・・・・・ah?」

突然その青い盗賊はドジャーに飛び掛る。
カンにさわったようだ。
青い男の冗談まじりだった目が座っている。
青い盗賊は取り出した青いダガーを振り下ろした。
そのダガーはドジャーのダガーと交わり、鍔迫り状態となった。

「DAMDAM・・・・・Fxxk!!口がすぎるなチープシーフ!」
「口がすぎる?カッ!オメェこそそのアホみたいなしゃべり方をやめてから言いな」

青色の盗賊はダガーを弾き、
後ろにバックステップをする。
そして後ろ向きのまままた民家の屋根へと飛び乗った。
またさっきと同じ展開である。

「ワンサゲン!もう一度言うゼ。ミーは連絡に来ただけオンリーだ
 ケンカはイッツオーヴァー。OK?用件を伝えるゼ
 大きくはひとつだけだ。カモン。トゥー・ザ・キャッスル。それだけだ」

「あん?キャッスル(城)?ルアス城か?」
「あそこは王国騎士団が崩壊してから廃墟になってるはずですが・・・・・」
「カッ!まぁ関係ねぇ。わざわざ行く必要がねぇ、だろ?」
「そうですね。肝試しならもっと暑い時にいきますよ」

「ハッハー!バット。そうグッドにはストーリーは進まない
 ユーの仲間、ウェール・・・・mets?メッツだったな。入院してるらしいじゃないか
 襲うのはイージーだ。来なけりゃヒムを・・・・・ハハハ!アンダスタン?
 Oh,あとあのナンセンスな酒場もBOMB!・・・・といってもいいんだゼ?」

とても聞き取りにくい言葉だが、
・・・・言いたい事は分かった。

「そう来ますか・・・・・」
「カッ!アレックスだけじゃなく俺らの事も調査済みってか」

「YES!ァーン・・・・『ウォーキートォーキーメン』?ヒーはホットな野郎だったゼ」

「メッツさんと『Queen B』の事は僕を誘き出すための手口だと思いますけど、
 それが敵を増やしてる事に気付いてないんですか?」

「イッツ。ノープロブレム。敵が数人増えてもミー達の足元にもドンツカム
 アンド、その腰の物にはそれほどのバリューがあるんでネ
 とにかく覚えておきな!トゥモロウだ!場所はルアスキャッスル!
 そしてミー達は・・・・・・・・《ハンドレッズ》・・・・OK?
 アァ〜。セレクトの余地ナッシンだがな、それじゃぁ、シーユーグッバイ!」

言い残して青色の盗賊は体をひるがえす、
そして屋根の上を飛び移りながら走り去っていった。
逃げ足が速い。
青い影が見る見る小さくなっていく。


「『ハンドレッズ』・・・名前だきゃぁよく聞くギルドだな」
「名前だけじゃないですよ・・・・有名なギルドです」
「カッ!知るか。間違いないのはケンカ売ってくるナマイキな野郎どもって事だけだ」
「・・・・・」
「あん?どしたアレックス」
「今回は・・・・僕の問題です。皆さんを巻き込むわけには・・・・」
「カッ!ふざけんなよ?話聞いてなかったのか?もう俺達にも火の粉飛んでんだよ」
「・・・・・・迷惑をおかけしてしまって・・・」
「迷惑?カッ!迷惑は迷惑に決まってんだろ!だからってんな事気にすんじゃねぇよ」
「ですが・・・・」
「カァ〜〜・・・・・。なんなんだオメェは。いつものオメェらしくねぇ
 あんな、普段は俺らの私情にオメェを巻き込んだりしてんだ。
 たまにはオメェが巻き込むのもいいだろ?」

ドジャーがポンとアレックスの肩を叩く。
アレックスはドジャーの顔を・・・・・目を見た。
・・・・・いつ見ても目つきの悪い目だ。
もういやらしさが滲み出ている。
どうやったらこんな風に成長するのか
だが・・・・・嫌いな目じゃなかった。

「・・・・・そうですね。うん!そうです!たまにはドジャーさんが恩返ししてくれてもいいですね!」
「カッ!現金なやつだな」

ドジャーは顔に手をあててヤレヤレと首を揺らす。
ピアスがブリンブリンと揺れた。

「だがな、アレックス。今回は・・・・・話してもらおうか。
 オメェには話してもらってない事がくさるほどある。
 話したくねぇ事もあるだろうが、少なくとも今回の件に関係あることはゲロってもらうぜ」
「・・・・・分かってます」



「・・・・・・・・アレックス殿?」

続けざまの突然の声その2。
それはアレックスとドジャーのすぐ横からだった。
アレックスとドジャーは咄嗟に武器を身構え振り向く。

「・・・・・・もしかしてアレックス殿ではございませんか?」

そこには全身黒いスーツに身を包んだ男が立っていた。
中々整った綺麗な身なりだ。
頭には黒く大きなシルクハット
そしてなんと言っても目立つのは清楚なヒゲだった。

「客の多い日だな。誰だ?《ハンドレッズ》ってギルドの野郎か!?」

「は?いえいえ、私は・・・・」

「ピ、ピルゲンさん?!」
「へ・・・・・?」

ドジャーは驚いてアレックスとピルゲンを交互に見た。

「ピ、ピルゲン?あの有名な?」
「そうです!ピルゲンさんです!生きてらしたんですね!」

「そういうあなたこそアレックス殿。まさかこんな所で会えますとは・・・・・」

「相変わらず丁寧なしゃべり方ですね」
「ちょ、どういう事か説明しろって・・・」
「あ、えぇーっとピルゲンさん。こちらはドジャーさんです。
 とてもお世話になってます。お世話もしてます。ヒドい人です」
「どんな紹介だ・・・・・」

「これはこれはドジャー殿。私はピルゲンと申します。
 元王国騎士団34番隊・部隊長をやらせてもらっておりました」

「ぶ、部隊長〜!?ピルゲンって部隊長だったのか!?」
「えぇ、行政を行っているからあまりそういった印象をもたれないんですよ」
「カァ〜・・・・城の前でヒゲ自慢してるだけかと思ったぜ・・・・・」

ドジャーがピルゲンのヒゲをのぞく。
ピルゲンはそれに気付くと自慢げにヒゲを整えた。

「私の部隊、34番隊は行政部隊でございました。
 これでも内政外交全ての業務をお任せいただいておりました」

「はぁ〜・・・・。まぁ王国騎士団が政治を行っている時点でそういう役割もいるわな」
「よく一年前の攻城戦で生きてましたねピルゲンさん」

全滅。
その言葉が表すとおり
アレックスは他の生存者に初めて出会った。
いや、他に生存者なんていないと思っていた。

「私はあの攻城戦ではギルド側に和平を申し込みにいっていたのです
 罠ではないと証明するために単独の任務でございました。
 結局ギルド側には和平を決断するようなまとまりも意志もなく、
 私は捕虜とされていたのでございます。城を落とされてからは用済みにされましたが・・・・」

「カァ〜!運のいいこった。そうだな騎士団は全滅したんだもんな
 まぁここに王国騎士団の奇跡的な生還者が二人揃ったわけだ」
「・・・・・・・」

複雑な気分だ・・・。 

「そうでございますね。アレックス殿。あなたこそよくぞ生きておられた」

「あぁ、そういえばアレックス。オメェ部隊長と知り合いなんてスゲェじゃねぇか」

「何を言ってられますドジャー殿」

「あん?」

「知らないのですか?」

「・・・・・・・は?何をだ?」

「王国騎士団16番隊・医療部隊の部隊長。それがアレックス=オーランド。彼です」

「・・・・・・・あ、・・・・・え?・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
「・・・・・・」

ドジャーは驚いた目をピルゲンからアレックスへと移す。
アレックスは置き所のない目線を地面の方に反らした。


「・・・・・・だ、誰がなんだって?」









                 






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