「ちょっとさ〜。助けて欲しいことがあってさぁ〜〜」
「助け?」
「うん〜・・・・。できればギルドのみんなに助けてもらいたくて〜・・・・」
「ギルドっつってもなぁ。連絡つくのはここにいる分とレイズだけだぜ?」
「あ〜、マリナとレイズはお仕事あるからいいよぉ〜〜」
「俺はヒマみたいな言い草だな・・・・」
「実際ヒマでしょ?今日の会計おごってあげるから手伝ってあげなさいよ
 ロッキー君。私のことだって別に気にしなくてもいいのよ?ギルメンのためだし」

ギルメン・・・・。
こんな小さい子も《MD》のメンバーなのか
という事はこの子にも懸賞金が・・・・
両手でモス酒のジョッキを持つのがやっとっていう小さな子なのに・・・
末恐ろしい時代だ・・・

「ん〜。無理にはいいよ〜。せめて〜。ドジャ〜とメッツだけでも助けてくれない〜?」
「あぁ、メッツは無理だ。こいつ今これでも病人なんだ」
「えぇ〜〜!じゃぁドジャーだけぇ?」
「いーや。なんか知らねぇけど助けて欲しいんならここにもう一人」

そう言ったドジャーの親指はアレックスの方をむいていた。
やっぱり僕か・・・・

「え〜?お兄ちゃんだれ〜?」

ロッキーの小さくつぶらな瞳がアレックスに向いた。
まるで小動物のような目である。

「新しい友達よ」
「タダ働きが大好き、みんなの奴隷のアレックスです。よろしくロッキーさん」
「ロッキーさんて・・・・オメェこれに"さん"付けはねぇだろ・・・」

その前のところにつっこみはないのか・・・

「じゃぁロッキー君」

「よろしく〜〜。アレックス〜〜」

ロッキーはアレックスに飛びつく。
とても人懐っこい性格のようである。

「カッカッカ、アレックス。ロッキーの経歴聞いたらビビるぜ?」
「へ?《MD》のメンバーって事は99番街の人なんじゃないんですか?」
「ロッキーに限っては少し違う。もちろん99番街の仲間には違いないんだが、
 実家が超エリート一家なんだ。誰もが知ってるようなな」
「へぇ〜。どこなんですか?」
「カプリコ砦だ」
「へ?」

実家がカプリコ砦?
ってことはロッキー君はカプリコ?
いや、どう見ても人間だ・・・・。
たしかに背格好はカプリコのようだけど
さすがにカプリコと人間の識別くらいはできる。

「ロッキーはな、子供の頃カプリコ砦に捨てられたんだ。容姿の問題でな
 そのロッキーを拾って育てたのが・・・・3人のカプリコ。エイアグ・アジェトロ・フサムだ」
「え?!その三人ってまさか?!」
「そう。ロッキーは人世にまで名の通る、かの『カプリコ三騎士』の養子なんだよ」
「えぇぇ?!」

エ、エリートなんて言葉で片付く話じゃない・・・・・
カプリコ三騎士といったらカプリコ界に生まれた伝説といってもいい
"同じ時代に3っつの伝説が生まれてしまった"とさえ言われている。
そんなモンスターに育てられたなんて・・・・
凄い・・・・

「んでロッキー。本題の"助けて欲しい"ってのはなんなんだ?」

「ん〜とね〜〜〜。実はね〜エイアグパパに子供ができたんだ〜。コロラドっていうんだ〜」

「は?ガキ?」
「さ、三騎士の子供ですか?!」
「あら、じゃぁそのコロラドって赤ちゃんはロッキー君の義弟になるのね。おめでと!」

「うん。ありがと〜。僕も血は繋がってないけど弟ができて嬉しかったんだぁ〜
 でもね。おととい・・・・・そのコロラドがさらわれちゃったんだ〜・・・・」

ロッキーはしょんぼりとうつむく。
ドジャーがそっと酒の入ったジョッキを置き、そして軽く椅子にもたれかかった。

「なるほど。人間に・・・・か」
「三騎士の子となれば優秀な子になるのは間違いないしね」
「強力なモンスターに成長するのを恐れてでしょうか、
 またはその逆。そのコロラドという子を利用しようとしてるのかもしれませんね」

「パパ達はモンスターだから町に来にくいんだけど
 僕ならって事で犯人を捜しにきたんだ〜。でもほんとにパパ達はカンカンだよぉ〜!」

ロッキーが自分の両手の人差し指で頭にツノを作った。
鬼のようなイメージをしているのだろうがその様子はあまりに可愛らしい。

「なるほど。でも犯人はルアスにいるんですか?」

「な〜にもわかんな〜い〜」

「カッ!とりあえずおめぇはギルメンの俺達がいるからここに来たわけだな」
「でもルアスから捜すのはセオリーだと思います。
 単純に一番人口が多い街ですし、今の世の中でも一番活気があって情報量も多いです」
「何にしろ情報を得る事からだな。99番街に『ウォーキートォーキーマン』っつぅ情報屋がいる。
 奴に当たりゃぁ金次第で大概の情報は手に入るだろう。とりあえずそっからだな」
「あら、彼なら調度・・・・・・」

マリナの目線が違うテーブルの方に飛ぶ、
そしてその目線の先にはオレンジ色の盗賊服・トレカベストを着用した男が酒を片手にしていた。
楽しそうな酒事だ。相席の男に途切れる事なく楽しそうにしゃべりかけている。

「でなでな!その主婦に夫の浮気情報を売ってやったんだよ!その主婦ったら顔を真っ赤にしてよぉ!
 んで次の日、今度は夫の方が俺っちのとこ来やがった。んで「妻の浮気情報を売ってくれ」だってよ
 ハハハ!売ってやったよ。ん?はっは、そうそう妻も浮気してたってことさ
 夫婦そろって救いのねぇ奴らだったぜ!それでな・・・・」

「おい、『ウォキートォキーマン』よ。いや、本名はミルウォーキーだっけか。
 どっちでもいいか、まぁ商売の時間だぜ」

ドジャーがそう言いながら情報屋『ウォーキートォーキーマン』の座るテーブルへ座る。
とりあえず自分ひとりで話しをするつもりのようだ。

「なんだい話のはずんでる時に・・・・ってドジャーか、
 俺っちの所に情報買いに来るのも久しぶりだな。たしかメッツの情報を探しに来て以来だ」
「用がなけりゃテメェの面なんか見ようと思わねぇよ。ま、だが今は情報が欲しいんだ」
「OKOK。俺っちは言わずと知れた情報屋『ウォーキートォーキーマン』だぜ?
 いつでもどこでも情報を売るのが俺っちのポリシーだ。イッツァウォキトォキ♪ってか?
 だがあんたは金にケチィからな、ちゃんと払ってくれるのかい?」
「今日のここの支払いはマリナがおごってくれるとよ」
「あん?食事代で足りるショボい情報が欲しいのか?」
「もちろんそれだけじゃない。・・・・つっても他に何を支払うってわけでもねぇ
 だが俺がする質問自体が支払いだ。意味わかるか?」
「情報交換って事か、OK。話しな」
「ロッキーの親父に子供が産まれた」
「! マジか・・・・三騎士の子か。そりゃビッグな情報だな。ツリが来るぜ」
「で、一昨日。その子がさらわれた。人間にだ」
「・・・・なるほど。その手がかりが欲しいって事か。一昨日・・・・ふむ。怪しいのはあいつだな」
「こんだけの情報で分かるのか?!」
「いやぁー、怪しいってだけの情報だ。探ってみて違ったらまた俺っちの所に聞きに来てくればいい。
 情報は惜しみなくだしてやる。お前のくれた情報はそれくらいデカいからな」
「カッ!で?怪しいってのは?」

情報屋ミルウォーキーが話そうとした時だった。
いつの間にかドジャーの後ろにアレックスとマリナとロッキーが迫り、耳をかたむけていた。
ミルウォーキーは少し驚き、声をつまらせたが、
そのまま話しを続けた

「俺っちがクセぇと思うのは"モリス"。ウィリップ・モリスだ」

「あら、モリスってあのルアス銀行のオーナーよね?」
「なんか聞いたことあるぅ〜〜。あの広場にいる太ったおじさん?」
「ルアス銀行長、兼ルアス商業団体の会長って奴か」
「騎士団崩壊後に一気に失脚した人ですね」

「そう、モリスは無法時代になってはじめた闇金融で一気に信用を無くした上に、
 ルエンに自分の商業団体の店を片っ端から潰されていっちまって一気に失脚した
 そんなモリスのデブった図体。遠目でも広場で確認できるあの体がここ最近見られねぇ
 最近権力をもちかえそうと裏で動いてるふしがあった。最近では結構注目の情報だったんだ」

「まぁ怪しいな」
「そいつがコロラドをぉ〜〜!」
「いや、まだ分からないですって」

「いや、俺っちは結構核心している。モリスが犯人だとな。
 なんせ奴は・・・・・世界でたった二人の"羽を持つ者"の片方
 言わずと知れた『堕天使(センターフォード)』モリスだぜ?」

『堕天使』
モリスはモンスターコロシアムのオーナーである『ペ天使』アンジェロと同じく
羽を持つ者である。
もちろんアンジェロと同じくあくまで羽の生えた服を着ているだけなのだが
アンジェロと違うところは・・・・・・翼が黒い事であった。
アスガルドに行って手に入れたと言われている。

「カッ!アンジェロの事があったからもう片方もなんかって事か」
「たしかに怪しいといえば怪しいわね」
「でも核心的な手がかりは何一つありませんよ?」
「でも〜・・・・他に手がかりがないならぁ〜!」

ロッキーがテーブルの上に飛び乗る。
そして小さな体の小さな拳を握り締める。

「モリスの居場所くらいなら一日待ってくれたら俺っちが調べ上げるぜ?」

「ま、手がかりがないじゃしゃぁねぇ」
「怪しい所をつついていくしかないですしね」
「じゃぁミルウォーキー。明日連絡くれ」

「あいよ。あっ、いや、その前に情報のツリをやる」

「情報のツリ?」

「そこのお前。あんたアレックスだろ」

「え?なんで僕の事・・・・」

「俺っちの知らない情報なんてないさ。まぁ、あんたを含めあんたらに言っとく。
 まぁ今回の件には関係ないんだが、実はな、最近あんたらの情報がよく売れる」

「あん?」
「《MD》の情報がってこと?」

「そうだ。そしてアレックス。特にあんたを嗅ぎつけてるやつらがいる。
 むしろ《MD》の情報はあんたのオマケだ。一緒に行動してるっていうな
 まぁそいつら近いうちにでもあんたらの前に現れるだろうよ。俺っち結構話しちまったからな」

「カッ!余計な事を」

「俺っちはあんたらの味方じゃぁない。あくまで情報を売るだけの人間なんでね
 金次第でいつでもどこでもが心情だって言ったろ?悪く思うな
 ま、金次第。つまりは今回の件に関しては協力させてもらうから安心しな」

「金でぽいぽい動くなんて世話ねぇ野郎だな」
「ドジャーさん・・・・・自分に言ってるんですか」
「カッ!俺は金が大好きで金のために動きはするがなぁ根本的に違うんだよ!」
「どのへんがですか?」
「あん?・・・・・・あぁ〜・・・・・・・・・・だから根本だ」
「・・・・・・そうですか」

とりあえず口の勢いだけはいいんだからなぁ・・・・

「ドジャァ〜〜ほんと変わってないねぇ〜〜」
「ロッキー。てめぇもだ・・・・。オメェは牛乳飲んでから言え・・・・」
「なんだよぉ〜〜!ぼくカプリコ砦では大きい方なんだよぉ〜〜!」
「カプリコ砦でデカくてもなぁ・・・・」


ロッキーと義弟にあたる、さらわれた三騎士の実子コロラド。
そして犯人の疑いがあるのはアンジェロと同じ"翼を持つ者"である『堕天使』モリス。

いろいろな問題が渦巻く中。

一人無関係だとイビキをかく男。
彼は酒場の地面でヨダレを垂らし、幸せな夢を見ていた。

「ガハハ・・・・マリナ・・・・もう食べられないって・・・・・」








                 






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