「ふ、ふざけるなよっ!!!!」

リッド=スチュワートは手元の作戦書をたたきつけた。
怒り。
それはクチャクチャになった作戦書が物語っている。

「イヤなら降りてもらってもいいんだがね。
 この攻城戦は我ら《GUN'S Revolver》が指揮している以上従ってもらうしかない」

片目に切り傷。
隻眼の剣士スミス=ウェッソンが表情を変えずリッドに言った。
リッドも表情は変えない。
怒りのまま。

「ふざけるなよ!!!六銃士の一人だかGUN'Sだか知らんがなめているのか!?
 なんだこの配置は!我々《メイジプール》が単体で最前線とはどういう事だ!」
「俺の片目が見たところあなたは天下の魔道ギルドがGMさんとお見受けするが・・・
 天下に名高い最強の魔術師"魔道リッド"さんが文句とは・・・・。自信がないのか?」
「自信とかじゃない!我々は魔道ギルド《メイジプール》だぞっ!!!!
 魔術師しかいないんだ!なのに援護なしの前線とはどういう事だと聞いているんだ!」
「そのままの意味だが?」

あまりに軽く返すスミス。
リッドはグッと拳を握る。
怒りのあまりだ。
が、怒りは我慢しながら我慢ならないを主張する。

「あんたらほどなら分かるだろ!?魔術師ってのは攻城戦において最も効果を発揮する職だが、
 その分狙われやすい!そしてモロい!そんな魔術師ギルドが先陣などきれるわけないだろ!!」
「あなた方の力を認めての作戦だとドラグノフ様が言ってたぞ?」
「そういう問題じゃないと言ってるんだっ!!!!」
「まぁ作戦の変更はない。最前線と内門破壊。精進してくれよ。あんたなら楽勝だろ?
 なんたって『風林火山(レインボーマウンテン)』の魔道リッドなんて呼ばれてるんだしよ
 その7色の魔法を期待してるぜ?なんたって世界最高の魔術師なんだからな」
「貴様!」

リッドは足を地面の作戦書へ叩きつける。
そして作戦書を足でギリギリと踏みこする。

「ギルドひとつだけで難攻不落の内門を崩すなどできるわけがないだろ!!」
「あんたらのギルドにはメテオのエキスパート『フォーリン・ラヴ』もいるだろ?
 もう一度言う。作戦に変更はない。これがGUN'Sの意思でドラグノフ様の意思だ」

そう言ってスミスは背を向ける。
そして人ごみの中へ歩いていった。

リッドは歯がゆく、悔しい。なんとも言えない気持ちになっていた。

攻城前の外門付近500m地点の場所。
攻城戦が開始されるのもあとわずかだろう。
15のギルドが渦巻くこの場。
《メイジプール》も当然集まっている。
その数約500。
集まるギルドの中でも有力株ではある。
が、
指示された作戦・配置。
それは単体での最前線。
そしてそのまま内門をやぶれという無理難問だった。

「メチャクチャな作戦ですね・・・・マスター」
「フレアか」

そこには穏やかな顔をした女性魔術師がいた。
オフィサーの一人、フレアだ。

「あぁ、ムチャクチャすぎる。そしてムシャクシャする。
 まず魔術師が最前線ってだけでも馬鹿馬鹿しい作戦なのに、
 その上"内門をやぶれ"だと?アホか。やぶれと言ってやぶれたら苦労せんわ!」
「そうですよね・・・・・・」
「あぁあの野郎!一言で内門を崩せなどと書きやがって・・・・
 大体、ここ長い間一度たりとも内門は破られた記録がないんだぞ!馬鹿馬鹿しい!
 内門にはあの部隊長『AC(装備漬けの)』ミラがいるんだ!
 いくらこの攻城戦にかけているといっても生半可にやぶれるか!」

「・・・・・・・・・・・マスターにしては弱気じゃないですか?」
「そうですよ」
「なっさけね」

突然リッドを囲む数人の男女。
それはさきほどから側にいるオフィサー、フレアをはじめ、
ウィンドル、マリン、ライトと言ったオフィサー達だった。

《メイジプール》のオフィサー。

世界一のメテオ使い『フォーリン・ラヴ』のフレアはじめ、
『ウィンドウ・ウィンドウ(窓辺の風)』ウィンドル、
『クーラ・シェイカー』マリン、
『輝きのタクティカ』ライト。

どれも世界に名高き魔術師達。

「GUN'Sの奴らを見返してやりましょう!」
「俺らの力をナメるなってな!」
「魔力こそ志向の力だと!」
「頭の出来の違いを知らしめやろうよ!」

「お前ら・・・・・・」

リッドはムシャクシャしていた気持ちが治まった。
世界に名をはせる魔術師達。
それをまとめる自分がゴチャゴチャ言っててどうする。
反省した。
自分の立場と、
今の自分のあり方を・・・

俺は『風林火山(レインボーマウンテン)』リッド=スチュワート。
世界最頂点の魔術師、魔道リッドだ。
そしてその前に世界最高の魔道ギルド《メイジプール》の長でもあるのだ。

「やってやるか・・・・・長いこと誰もが成しえなかった"内門崩し"
 我ら《メイジプール》の力を持って!エリート魔術師の力の智を持って!」

「その意気よマスター!」
「リッドさんはそうでないと!」

盛り上がるオフィサー達。
リッドは笑顔で返した。

「よし作戦だ。我々魔術師は普段はまるで高級ワインのように守られるものだが・・・
 今回はそうもいかんらしい。自分の身は自分で守らなければならない。
 が、我らが内門崩しを成すためにはどんな犠牲を払ってでも守らなければならんものがある
 分かるだろぅ?それは・・・・」

リッドの目が、視線が動く。
オフィサーであるウィンドル、マリン、ライトの目も釣られて動く。
その目線の先は・・・・

オフィサー、フレアであった。

彼女フレアは、世間では『フォーリン・ラヴ』と呼ばれている。
その理由は、世界一のメテオ使いだからだ。
落ちてくる(フォーリン)メテオ(ラヴ)の規模。
それは世界最大規模と言うに相応しいだろう。
その分とてつもない詠唱時間が必要だが、
フレアのメテオさえあれば・・・・
あるいわ内門を崩すことも・・・・・

「フレアさん!」
「やってやりましょう!」

他の3人のオフィサーは力強い目でフレアを見つめた。
フレアもそれに力強い目と頷きで答えた。

リッドは思う。
ここはいいギルドだ。
スオミで英才教育を受けたものばかりだから
プライドが高く、融通が利かない奴らばかりなのが難だが、
それ故に仲間内でお互いを認め合う尊敬の心もある。
自分達はエリートで、こいつらもそうだ・・・という。

オフィサーのフレア、ウィンドル、マリン、ライト。

こいつらだけを見てもギルドの良さが分かる。
質だけじゃない。
それは繋がりの強さ。
その繋がりは友情(フレンドシップ)とかではない。
スオミという融通の利かない社会が生み出した、
尊敬(リスペクト)という名の繋がりだ。

このギルドを・・・失いたくない。
このギルドを・・・成功に導きたい。

「『ノック・ザ・ドアー』が到着したらしいー!準備が整い次第攻撃を開始するぞー!」

「よし、やるか。
 新入り、低レベルな奴らは外門の外で待機だ。
 ここから先はこの俺と、4人のオフィサー。そして精鋭300人だけでいく。
 異論のある者は?」

誰も異を唱えない。
リッドは「よし」と言い、

最高の仲間達を引き連れ、
魔道リッドは立ち上がった。




この仲間達を・・・失いたくない。
この仲間達を・・・成功に導きたい。



ただ思いは・・・・


それだけだった。















-------------      1時間後         ---------














「クソッ!!!クソッ!目を開けろウィンドル!!!ウィンドルぅうううう!!!!」

リッドの手の中。
そこにはオフィサーの一人、ウィンドルの屍があった。

ここは内門前。
攻城戦の最前線。
大声を出さないと何もかもがかき消されるような戦場の音。
武器が飛び交う。
人が飛び交う。
血の海。
世界で一番人が死んでいる気がする。

そんな中、
リッドは涙を流していた。
大事な・・・大事な仲間の一人失った。

「クソォ!ウィンドル!!」

戦場の真ん中。
リッドは心を痛め、
うつむいた。

先ほど決心してばかりなのに、
すでに大事な仲間が自分の目の前で命を落とした。
ウィンドルだけではない。
次々と仲間達も・・・・・・

思考回路が停止しそうだった。


「魔道リッドだなっ!死ね!!!!」

突然斬りかかってきた騎士。
リッドはハっとした。

だがその騎士の横に氷の槍が刺さる。
それはオフィサーが一人、マリン=シャルの氷槍アイスランス。

「マスター!ボケっとしてないで!
 マスターの魔法がないとこらえきれないわ!!!」

そう言いながら、マリンは詠唱を始める。
アイシクルレインの詠唱。
放たれた魔法で数人の騎士が氷で串刺しになった。
だが騎士の数は減る気がしない。
騎士は溢れ、次から次へと迫ってくる。

それにエリート魔術師達が必死に抵抗し、
・・・・・・・・散っていく。

味方も残りももうわずか・・・・
無理じゃないのか・・・こんなもの・・・

相手の騎士は何人いるんだ・・・
数千?万?
こっちは300連れてきたが・・・・
もう魔術師の姿自体見つけづらい・・・・
何人が生き残ってるんだ・・・・

・・・・!?

他の皆は無事なのか!?

「マリン!フレアとライトはどうなった!?」
「何言ってるのマスター!フレアさんはあのメテオを見れば分かるでしょ!?」

リッドが少し見上げる。
落ちてくるメテオ。
数個の隕石。
間違いない。
オフィサー、フレアのメテオだ。

生きているんだな・・・よかった。

「じゃぁライトは?!」
「ライトは・・・・・・・・死んだわ・・・・」
「なっ、ライトも!?」

リッドは地面に拳を打ち付ける。

そして現実を受け入れる。
見渡せば分かる仲間の数。
現状を理解する。
そして理解すればするほど・・・・それは悲しい状況。

「クソッ・・・・やはりムチャクチャな作戦だった!見ろ!周りを!
 この配置に300も連れてきた私の仲間が・・・・もうたった20やそこらだ・・・・
 その上援護はこない・・・・。GUN'Sの奴ら、俺達《メイジプール》を見殺しにしやがった!
 俺達を捨て駒・・・・・オトリに使いやがったんだ!
 俺らが死んでいく中、他のギルドはまだ外門の外でチンタラまだ準備をしてやがる!」

内門前の広場。
そこに広がる大量の死体。
騎士の死体。
身内の魔術師の死体。
地獄絵図の中、
まるで光っているかのように同胞の死体だけが目に入った。

「私が・・・私が決断しなければ・・・・この作戦で仲間は・・・・ウィンドルも・・・ライトも・・・・・」

バチンッ!
と大きな音がする。
何の音かとリッドは戸惑った。
だが、
自分の右頬が痺れて熱くなっている事に気がつき、
なんの音か理解した。

右手を平手で振り切った状態でマリンは言った。

「目を覚ましてマスター!ここは戦場の心臓部なのよっ!
 そして目の前には内門!私たちの悲願よ!これを壊すためだけに仲間達は死んでいったの!
 なのにマスターはこんなところでグズグズして・・・泣いてたってしょうがないのに!
 私のお姉ちゃんと一緒だわ!やりもしないで投げ出して!!!!」

マリンは振り向く。
そして詠唱を始める。
フローズンシャワー。
詠唱が終わったと同時に、
降り注ぐ氷が、目の前の騎士達を一掃した。

「いいわ!フレアさんは私が守る!マスターはそこでウジウジしてて!」

・・・・・

なんて・・・
力強い仲間だろう。

リッドは思った。
自分がこんなだからこそその力が分かる。
仲間が死を覚悟して戦った。
8方向まるまる騎士に囲まれ、
援護が来る気配もない。
戦場の中、
7000以上の騎士団の中、
残る20人ほどの魔術師。
その中で、まだ決心がついてないのは・・・・

マスターである自分だけだ。

リッドは決心した。

「マリン」

必死で範囲魔法を唱えているマリン。
リッドはそのマリンの肩に手を置く。

「何よマスター!」
「お前は戻れ」
「はぁ!?何言ってるのよマスター!」
「今いるメンバー全員、フレアを含めて外門へ退け」
「なんでここまできて退くんですか!
 それに退くも何も帰り道まで騎士団で埋まってるんですよ!」
「それでも退け」
「マスター!」
「GM命令だ」
「・・・・・・・・」

マリンは一歩足を退いた。
マリンにもリッドの決心の表れを感じられたからだ。

「フレアだけは全力で守れよ。あいつは内門を壊すための"鍵"だ。
 内門は『AC(装備漬けの)ミラ』と強靭な人間の肉壁がある。
 あの『ノック・ザ・ドアー』でも崩すのは困難だろう。フレアのメテオが必要だ」
「・・・・・・・はい」
「外門の外に退却できたら、待機させているヒヨッコども200人の意向はマリン。お前に任せる」
「へ!?」
「今からお前が《メイジプール》のGMだ」
「マ、マスターは!?」
「分かるだろ?」
「・・・・・・・・」

リッドはマリンを見つめる。

マリンは右手を氷漬けにした。
氷槍アイスランス。
そして真横に迫っていた騎士に突き刺したあと、
マリンは頷いた。

「マスター。私は逃げ出さない人が好きです。
 だからスオミから逃げた姉は嫌い。海の中で泳ごうともせず、水面へ逃げたから。
 でもやっぱりマスターは違いますね。
 海の中でも、もがき、さらに深いところへ潜ろうとする。
 分かりました。その命。この私マリンが海の名にかけて引き受けます!
 逃げないマスターのために逃げる事が、私なりの逃げないことです!」

マリンは大声で号令をかける。

「逃げるわよ!私を中心に集まって!」

その声はフレアにも聞こえただろう。
20人ほどのギルドメンバーにも聞こえた。
戸惑っていたようだが、
ただ一人堂々立つリッドを見て、
皆は足を後ろへ向けた。

「キューピー!あんたはフレアさんの護衛よ!
 他の者達も逃げることだけ考えず、魔法の手は緩めないで!」

マリンの声がこだまする。
魔の同士達が自分の横を過ぎ去っていく。

ふと逃げていく仲間達の中、
足を止める女魔術師が一人。
フレア。
フレアは寂しそうな目をしながら、言った。

「マスター・・・・・・・・・・・できれば死なないでくださいね」
「・・・・・・・・・・・・・できん約束はしない」
「できれば・・・・・でいいんです」
「・・・・・・・・叶える気のない約束はしない」
「・・・・・・・」

「フレアさん早く!逃げるわよ!」

マリンが叫ぶ。
フレアは戸惑う。
そんなフレアにリッドは言う。

「フレア。お前は《メイジプール》の要だ。
 お前が内門を崩すんだ。そのために生き残れ。
 その時、最前線と内門破壊というメチャクチャな作戦が・・・・・・叶う時だ」
「私も・・・約束しません・・・」
「GM命令だ。最後のな」
「・・・・・・・・・」
「そんな顔をするな。お前は俺の最後の意地だ。
 内門の破壊に貢献して・・・その時ムチャな作戦だしやがったGUN'Sの奴らに言ってやれ
 "ざまぁみろ。やってやったぜ"と。俺の代わりにな」
「・・・・・・・・・・・はい」

そうしてフレア、マリンを含めた《メイジプール》の前線隊は退避を始めた。

戦場には・・・リッドだけが残った。

「さぁて・・・・俺は俺で意地を張るか・・・・・
 仲間がやられっぱなしじゃぁシャクだからな」

王国騎士達がリッドを囲む。

「《メイジプール》のGM。リッド=スチュワートだな」
「我らにも守るべきものがある」
「騎士団のため誇りのため。魔道リッド!お前のお命頂戴する」

囲む騎士達が槍を一斉に構える。
円形に囲む。
数十本の槍が全てリッドに向いていた。

「あぁ。俺の命くらいくれてやる。だが、ただではやれん」

リッドは両手を広げ、突き出す。

「俺は世界最高の魔道ギルド《メイジプール》のマスター魔道リッド!
 『風林火山(レインボーマウンテン)』と呼ばれる世界最高の魔法!
 7色の魔を知れ!目の前に立つ男(俺)は虹だ!敵を知り己を知れば百戦殆うからず!」

詠唱を始めるリッド。
唇を動かし、
声を発する。
唱えるのは呪文。魔と知をはりめぐらした力。

「黙れ!世界一の魔術師だろうと!一人で何が出来る!!!」
「こっちは何人いると思ってるんだ!」

リッドの右側の騎士達が突っ込んできた。
が、


リッドの魔法が放たれた。
それはハリケーンバイン。
巨大な竜巻は騎士達をゴミのように巻き込む。

「疾(はや)きこと風の如く・・・・・・・」

ハリケーンバインは回る。
未だ騎士達を飲み込みながら、

その中、リッドは違う詠唱を始める。

「ヤバい!次の魔法が来るぞ!」
「かがめ!相手は至高の魔術師、魔道リッドだぞ!」
「狙うは魔法詠唱の合間!隙をうかがえ!」
「いや・・・まて・・・」
「やばい!しまった!」

魔法は放たれなかった。
いや、発動はした。
それは攻撃魔法ではない。

「其の徐(しずか)なること林の如く」

クイックスペル。
詠唱速度をあげる魔法。

「詠唱速度をあげられたぞ!」
「一気に来る気だ!」
「その前に潰せー!」

騎士達がヤバいと思い、リッドに突っ込もうとするが、
遅い。
間髪いれず次の詠唱を始めていたリッド。
クイックスペルで速度の上がったリッドの魔法詠唱には追いつけなかった。
リッドが右手を突き出す。

「侵掠すること火の如く!!!!」

ファイアストーム。
広範囲の火炎がリッドの左手から放たれ、
騎士達が炎に包み込まれる。

「ぐぁぁああ!」
「あつい!あつぃいいい!」

地まで燃えているようだった。
騎士は火を体に地を転がりもがく。
一撃で20数の騎士達が炎の中に散っていった。
炭となって・・・

騎士達は躊躇する。
だが、

「か、かかれ!」
「一斉にかかれ!」
「8方向からかかれば魔法も対処できないはずだ!」

リッドの周りの騎士達が、
とうとう一斉に飛び掛った。
一人に対する人数ではない。
まるで化け物の対するような戦い方。

が、

突然、騎士達の真下の地盤が揺らぐ。
地震?いや、違う。
地面が崩れ・・・・破片が浮かび上がっている。
岩ほどの・・・地面の塊とでも言うべきか、
それが数個、リッドの周りに浮かぶ。

「動かざること・・・・・・山の如く」

そして暴れ狂う岩達。
メガスプレットサンド。
リッドの周り一帯。
騎士達は総崩れ、
岩に打ち付けられ、
緩んだ岩盤。

「こんな規模のスプレッドサンドだとっ!?」
「これでは進行が・・・」

騎士達が崩れている間、
リッドは次の魔法の詠唱が終わっていた。

「知り難きこと陰の如く」

広げた両手。

「の、のぁぁぁ!!」
「力がぁあああ!」

そこで3人ほどの騎士達が悲鳴を上げた。
エナジースイッチ。
気力を吸い込み、
魔力を補充する。

そして・・・・
魔道リッド。
そのMPが満たされた。

「食らえ!!!このリッドが最大出力を!!!・・・・・・・・・・・・・動くこと!!!雷の震うが如く!!!!!!」

放たれた。
それはクロスモノボルト。
降り注ぐ雷の柱。
稲妻の閃光。
地面に突き刺さる電流の槍。
落ちる豪雷。
天災をも超えた、
最高の魔道の混信の雷(怒り)





モノボルトがやんだ時、

そこには200を超える騎士の屍と、

全てを出し切ったリッドがいた。

「はぁ・・・・はぁ・・・・・・」

リッドの足が崩れる。
超絶規模の魔法を連続で撃ちすぎた。
常人の魔量の器を遥か凌駕する魔法の連続。
魔力も・・・体ももう・・・・限界だった。
だが、

リッドの周りには、
まだ見渡す限りに騎士達がいる。
どれだけ倒しても、
無駄なのだ。
一人に対し、
向こうは世界最強の騎士団達。
数は無数。
一人に対しては無限蔵といっていいほどの数。

あっという間にまたリッドは囲まれた。

「・・・はぁ・・・・はぁ・・・・」

もう魔力はほとんど残ってない。
さきほどと同じ事はもうできない。

エナジースイッチなどやっていたら、
その瞬間に潰されるだろう。

「潮時か・・・・・」

疲れ、限界。
その中で視界に映る騎士達の姿。
突っ込んでくる。
一斉に。

リッドは最後の力を振り絞って立ち上がる。

「やれる事はやった・・・・決心するか・・・・・」

フラフラとする。
ダメージを受けたわけではない。
が、魔法の負荷がかかりすぎた。
あれほど強力な魔法の連続。
無茶だったのだ。
いや、分かっていた。
分かっていてやった。
悔いはない。

「フレアとマリン達は逃げ切れたろうか・・・・・いや、逃げ切ったに違いない
 ならばやはり悔いはない。終わりだ・・・・・俺も・・・お前らも・・・・・
 ・・・・・・・・ライト・・・・ウィンドル・・・・・・待ってろよ・・・・・・・・・・・・」

リッドは両手を掲げる。

騎士達が突っ込んでくる。
槍が、
数十本の槍が・・・・

リッドに突き刺さった。

串刺し。
誇り高き槍が、
リッドの至る所を突き刺した。

だが、槍が突き刺さったまま、
両手を掲げたまま、

リッドは少しだけ笑った。


「・・・・・・・・・・・・儚きこと・・・・・虹の如く・・・・・・・・・・」



大爆発が起こった。

どこで。
それはリッドを中心に。
バーストウェーブ。

着火点・・・・・・・・・・自分。


自爆。





           ざまぁみろ・・・・・やってやったぜ・・・・・・・・








彼の命は花火のようにはじけた。




巻き上がる煙。


リッドの命ははじけた。





だが、


きっと煙が晴れたとき、








そこには美しい虹がかかっているだろう。


















                 






SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送