「オラオラおめぇら!殺れ!やっちまえ!」

ここはカプリコ砦
そして彼の名はラーク。
ハンドノカンである彼は、ノカンの特殊部隊の隊長だった。
将軍ケビンの作戦である"ディグバンカー奇襲案"
その部隊500の指揮を任されている。

彼は隊長として成績優秀だった
それはブンスターのようにメチャメチャな能力を持っているからでなく
ジェイピスのように確実性のある男だからでもない。
彼は一端に"冷酷非道"な性格だからだ。
それは軍の隊長として時として必要なアビリティ
暖和な性格の指揮者は時として判断を誤り、味方を危機におちいらせるからだ。

「ハッハ!砦はもぬけの殻だ!ザコ兵とパンピーばっか!奇襲大成功だぜ!」

「隊長!」
「ラーク隊長!」

「なんだ?」

「この先は民間地域です。どうしましょう」

「どうしましょう?アホかお前ら。殺れ!メスだろうが子供だろうがだ!
 メスは小汚いカプリコを産むし、ガキは将来ノカンにキバを剥く者だ!
 全部だ!全部やっちまえ!ノカンの完全勝利のための皆殺しだ!
 ハッハ!どーせカプリコの見分けなんざつかねぇしな!」

ケビンはラークの性格を知っていた。
そしてラークが砦に入ったら虐殺を行うだろうという事も・・・。
だがそこは将軍としても苦難の判断だった。
だがラークにやらせるしかなかった。
ブンスターやジャイピスやその他の隊長では、
一般のカプリコを見て思いとどまって作戦が失敗していまうかもしれない
つまりこういった仕事だからこそラークにしかできないからだ
カプリコの事よりノカンの平和。
ノカンの事を思えばという将軍としての冷血にならねばならない選択だった。
戦争の中では漫画のように"心温まる話"が簡単に介入できないことは
将軍として分かっていたからだった。

「ラーク隊長!砦の護衛兵はあらかた排除しました!」

「ほぉ、状況はどうだったんだ」

「前線に出れないためか、老齢のロードカプリコが多目に配備されてました。
 そのロードカプリコの魔法によって隊は痛い打撃を受けました」
「しかしそれでもこちらの隊は250ほど残っております」
「残りのカプリコは一般民だけです」
「どうしますか?」

「どうしますか?だと。お前ら答えは分かって聞いてんだろ?
 見える奴は全部殺せ!カプリコなんて全部クソだ!
 あのキモい顔見るたびその晩に両親が枕元に立ちやがんだ!」

「ハッ!」

「金品も奪い尽くせ!どーせこの砦には誰一人いなくなるんだからよ!
 家宅強盗と同じだ!俺ん家を襲ったカプリコの強盗とな!
 殺しつくして金を盗る!どーせカプリコに金品なんざ"ディドに真珠"だぜ!」

ラークの部隊兵が一気にカプリコ砦の民間区域に突入していく。
残りは戦力を持たない女・子供・老人だけ。
こんな簡単な仕事は無かった。
ラークにとってはいつもやってる事だ。

ラークは昔、自分の家(テント)をカプリコに襲われた事があった。
その時父と母を失くした。
家の中の物もほとんど残ってなかった。
ラークだけが奇跡的に助かった

それからのラークはカプリコへの復讐の毎日だった。
復讐復讐。
我が家を襲ったカプリコがどんな奴かは分からない。
だが奴に復讐したい。
父と母のために

よってラークが下した決断はカプリコの全滅だった。
全部殺せばその中に父と母を殺した強盗もいるだろう

「よいしょっと」

ラークがひとつの民家へと入る。
そこには一人の老婆(ロードカプリコ)がいた。

「こ・・・・殺さないで・・・・」

小さな老体がカタカタと震えていた。

「おいカプリコのババァ。お前は俺の家を襲ったカプリコか?」

「い、いえ違いますじゃ!だから殺さないでくだせぇ!」

「あぁ〜・・・ウソついてるかもしれねぇなぁ。カプリコだしなぁ
 まぁ残念だったなババァ。十分生きただろ?死んでくれや
 恨むんだったらお前がカプリコに生まれちまった事を恨むんだな」

ラークは手に持つノカンクラブを振り落とす。
そして老体を肉塊へと変えた。

「ラーク隊長!」

「なんなんだお前らはよぉ。俺の下す決断なんて分かってんだろ?」

「は・・・はぁ。一応報告を。この民間区域はあらかた片付きました
 ですが民間区域は4・5個あるようです。一度隊を収集して移動した方が良いかと」

「あぁ、OKOK。んじゃ一度表に集めろ」

「もう集めてあります」

「おぉー手回しいいじゃねぇか。そういう命令いらずの奴は好きだぜ」

そう言ってラークも表に出た。

整列しているラークの軍。
多くないその数も
砦の中で整列させると狭いくらいだった。

「ん?」

ラークは隊の数を数えた。

「おいおい。さっきの報告だと隊の残りは250っつってなかったか?
 見た感じ100とちょっとくらいに見えるがよ」

「はぁ・・・・点呼係の数え間違いでしょうかね」

「まさか抜け駆けして金品集めてる奴らがいるんじゃないだろうな」

そうラークが顔をこわばらせた時だった。

数人の悲鳴があがった。

「なんだ?!」

ラークの疑問に対し、これが答えだと言わんがばかり。
一匹のノカンが吹っ飛んできて
ラークの横をかすめた。

悲鳴は鳴り止まない。

「なんだ!?これは俺の隊の奴の悲鳴なのか?!」

この疑問もまたすぐ解消された。
整列していたラークの隊。
その最後尾の方。
仲間が・・・
ノカンが跳ね上がっている?
まるで噴水のようにノカンが上へ横へと吹っ飛び散らされているのだ

整列していた隊が崩れていく。
皆が逃げ戸惑い始めた。

逃げようとするノカン兵の一人をラークが掴み止めた。

「おい!なんだ!どうしたってんだ!?」

「て、敵です隊長!」

「敵だと!?兵は全て殺しただろ!生き残りがいたとしても何故こんなに・・・・
 まさか前線にいると聞いた三騎士が帰ってきたのか?!」

「ち、違う!あれはカプリコに見えるけど・・・・人間です!」

「人間!?人間が何故ここに!?」

「聞いた事ないんですか?!本当にいたんですよ!
 例のやつです!カプリコに味方する人間!『ロコ・スタンプ』です!!」

言うなりそのノカン兵はラークの手を振り払って逃げていってしまった。

「『ロコ・スタンプ』だと・・・・」

聞いた事あった。
たしか三騎士に拾われたとかいう人間の子供
主に砦を狙った人間・魔物に攻撃してくるという小さな悪魔・・・。
人間がカプリコに混じってるなんてにわかに信じられなかったが
本当にいたのかそんな奴。

その疑問さえとうとう解決した。

目の前の逃げ戸惑うノカン兵が
上空へと跳ね飛ばされた。
それを跳ね飛ばしたのは大きなカプリコハンマー
いや、その人間が小さいから大きく見えただけか。
ぶかぶかのローブに深めにかぶったウルフキャップ。
その下に見える顔は・・・・たしかに人間

「お前がボスかぁぁ〜〜〜!!よくも〜〜!!ぼくの家族のみんなを〜〜〜!!!!」

『ロコ・スタンプ』が突っ込んでくる。
まっすぐラークへと
ドラムカンのようなカプリコハンマーがラークへと振り落とされる

「ぐ・・・」

防いだ。
だが重い・・・
ラークのノカンクラブはぐねりと曲がり。
ラークの足は地面へとめり込む。
そしてラークの体がきしんだ。

「みんないい人だったのにぃ〜〜〜!!!!」

ロコ・スタンプがもう一度ハンマーを振り上げ、
そして思いっきりラークへと振り落とす。
二撃目。
ラークはもう一度ノカンクラブで防ぐが、
攻撃が重過ぎる。
体がきしみをあげ、
衝撃で体中から血が吹き出した。

「お・・・お前人間なのに何故カプリコの味方をするっ!」

「そんなの〜〜!!パパ達がパパだからだあぁあ〜〜〜〜!!
 それに砦のみんなはみんな家族なんだぁぁ〜〜!それをお前達は殺したぁぁぁぁ〜〜!」

「・・・・・・」

ラークは力を抜いた。
いや、もう力を使い果たしたからかもしれない。
体ももう限界。
ラークから力が抜けた瞬間。
ラークはカプリコハンマーで地面へと押しつぶされた。
地面にめり込む。
それにカプリコハンマーが蓋をする形。

ロコ・スタンプがハンマーを持ち上げると。
そこには血まみれで体中ボキボキになったラークがいた。

「家族の〜〜!家族の皆の痛みが分かったかぁぁぁ〜〜〜!!」

ロコ・スタンプは涙を流しながら叫んでいた。

ラークはもう体がピクリとも動かない。
だがなんとか口だけを歪ませて言った。

「あぁ・・・・分かったさ・・・・・・お前が戦う理由も俺と同じなんだからな・・・・・」

「うわぁぁあああああ〜〜〜〜〜〜!」

ロコ・スタンプは涙を流しながらもう一度ハンマーを振り上げた。

ラークからそれを見上げると
ハンマーと太陽が重なって見えた。
が、その太陽も長くはもたなかった。
太陽の左右から暗い暗い闇雲が迫り、
そして太陽を隠してしまったからだ。
それはまるでノカンとカプリコの軍のようだとラークは感じた

「あ〜あ・・・死ぬ直前に曇るなよ・・・・」

ラークの顔に一つの液体が落ちてきた。
雨か・・・
いや、ロコ・スタンプの涙か。
まぁ・・・どっちでもいいか。

今まさにカプリコハンマーが振り落とされようとしていた。

「・・・・・・・あ〜あ・・・・カプリコなんて全部死ねばいいのに」

その瞬間ロコ・スタンプのハンマーがラークへ振り落とされる。
そしてその瞬間ラークの生命は断たれた。
振り落とされたハンマーの上に
液体が落ちる。
それは雨だった。
ロコ・スタンプの涙に同調したように雨が突然降り注いできたのだ。

その大雨は
ロコ・スタンプの涙を隠し
その雨音は
ロコ・スタンプの泣き声を隠しているようだった

















                 






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