ケビンとアジェトロは、
鍔迫り合いをしたまま5分がすぎようとしていた。

アジェトロにとってはケビンを倒すことなど動作もないことだろうが、
相手が将軍とも合って慎重なのか、
それともノカンが劣勢になっていくのをケビンに見せ付けたいのか
いや、楽しんでいるのだろう。
ケビンも能無し将軍ではない。
対峙すればそれくらいは分かる。

なんとなくこの5分で三騎士の見分けもついてきた。

今剣をあわせているのがアジェトロ
なかなか好戦的なようだ
今の硬直状態もこのアジェトロが好きで生み出した状況だろう

そして後ろで堂々としているのがエイアグ
冷静かつ、「参る」などと先導するセリフから
恐らく三騎士の中ではリーダー的な立場なのだろう
三騎士の中に上下があるのかは分からないが、性格的なものだろう

同じく後ろで余所見をしているのがフサム
この5分で分かった事は口数が少ない事ぐらいか
アジェトロやエイアグが話しかけても「・・・・承知」など最小限でしゃべる
冷酷な印象を受ける。

TRRRRR

そんな中、後ろで傍観していたフサムにWIS連絡があった
フサムはゆっくりとWISオーブを返事もしずにとり、

「・・・・・・・・承知」

そう一言発してそのWISを切った

「・・・・・・丘のプラコ隊が全滅だそうだ」
「応?そりゃあ大変だな」

ケビンはニヤリとする。
ジェイピスがやってくれた。
聞いたかこのカプリコ共め、これがノカンの力だ
そう発してやろうとケビン思った矢先だった

「・・・・・敵のニュク隊と相殺だそうだ」

「!?」

そんな・・・・
ジェイピスまで・・・・

ケビンは唇をかみ締める。
幼馴染を二人も失った。
戦場に私情は持ち込まないと決めていたが、
この怒りと悲しみが混じった気持ちは押さえつけるのが難しかった
ケビンの唇から血が滲む

「遊びは終わりにするぞアジェトロ」
「おーう?もう少し遊んでもいいだろうエイアグ
 ノカンと剣を合わせれる事なんてもう金輪際ないかもしれねぇ」
「丘の援護がなくなった状況はこちらにも良くはないんだ
 我ら三騎士の力を一人でも多くの敵へ振るうべきだ・・・・・・・・・・参る!」

後ろで傍観していたエイアグ。
そのエイアグがカプリコソードを持ち上げ、
こちらへ突っ込んできた。
アジェトロと剣同士で鍔迫り合いをしているケビン。

・・・・避けきれない

「将軍!」

その瞬間
ケビンの体に糸が巻きついた。
ケントのヨーヨーだ。
ケビンは糸に絡められ、引っ張られる。
そしてアジェトロの攻撃を間一髪当たらずに済んだ。

「大丈夫ですか将軍!」
「あぁケント。助かった」

助かった。
いや、助かったかどうかは分からない。
まだ目の前にあの伝説のカプリコ三騎士がいるのだから

「参る!」
「応!」
「・・・・・承知」

三つの伝説が飛んできた。

「う、うわ!」

ケントは驚く。
三騎士の身の動きの早さは尋常じゃなかったからだ
だが、それが逆に幸をそうした。
ケントの頭には"戦う"という選択肢が浮かばなかったからだ。
"逃げる"とだけ思ったからこそ次の行動に移れた

ケントがヨーヨーを放つ。
そのヨーヨーは上空の大木の木の枝にグルグルとからみつき、
そして止まったかと思うと
木の枝に巻きついたままヨーヨーが超速で回転した。
そのヨーヨーの回転は
ケントとケビンをその木の枝へとクレーンのように巻き上げた。

ケントが木につかまり、そして木の枝の上へと飛び上がった。
ケントのヨーヨーに巻きつけられたまま
ケビンも木の枝の上へと着地した。

大木の木の上にケビンとケント。
そして大木の下で見上げる三騎士

「ここまでは登ってこれねぇか三騎士さんよぉ。犬みてぇなやつらだな」

「・・・・・笑止」

フサムがボソリと言うと
体ほどあるカプリコソードを一回転させた。
そしてフッ、とフサムの動きが止まると、
一瞬の静寂の後、
ケントのケビンが乗っていた大木が傾き始めた。

「やばいです!」

ケントがまた別の木へとヨーヨーを絡める。
そしてさっきと同じような手順でまた別の木へと飛び移った。

大木が倒れきる大きな音の後、
三騎士が言う

「応応!逃げ続ける気か、"赤剣のノカン"!」
「・・・・・ノカンの将軍のクセに」
「仲間が死に物狂いで戦っているのにお前は逃げるのか」

「?!」

敵の言葉に納得するのもどうかと思う
が、その通りだった。
ブンスターもジェイピスも
ノカンのために命を落とした。
だがノカン軍の将軍である自分は死から逃げるのか?

ケビンはケントのヨーヨーを振りほどき、
そして木から飛び降りた。
木から着地すると、
背中のマントがなびいた。
ノカンの将軍である証明だった

「俺はノカン軍将軍!ケビン!ノカンの誇りとノカンのため!貴様らと戦ってやる!」

「・・・・・・・ふん」
「応、好戦的である奴は好きだぜ!」
「だが我ら三人に真っ向勝負を挑むのは自殺行為だぞ」
「・・・・・死にたいなら死なせてやればいい」
「なら俺にやらせてくれよ。死にたがりは好きだぜ」

死にたがりとはケビンのことだろう
三騎士にとって負けという道はないという事だ

「ぼ・・・僕だってノカンのために!」

ケントも木から下りてきた。
そして両手のヨーヨーでループザループをした後、
手にヨーヨーをおさめて構えた

「応応!死にたがりが二匹に増えたぜ!」

TRRRRRRRRRR

WISはいつも突然に鳴るものだ。
戦場であれば当然であるが
とにかくそのWISは相手のカプリコ側のものであった。
エイアグがWISオーブを手にした
冷静な顔をしていたエイアグだが
WISを聞くなり目を大きく見開いた

「カプリコ砦が教われただとっ!?」

エイアグの後ろにいたアジェトロとフサムが顔を見合わせる
エイアグがWISを聞き終わり、通信を切ると
アジェトロが間を入れずに聞いた

「応!エイアグ、どういうこった。砦が襲われただと?」
「分からん。どう見ても伏兵の様子はなかった」
「・・・・そいつに聞けばいい」

三騎士が同時にケビンの方を向く。
そのケビンの顔は怪しく笑っていた

「策・・・・成ったか」

口を歪めたままケビン顔をあげた。

「策だと?500ほどのノカン兵が砦を襲ったと聞いたが一体どうやった」
「伏兵の様子がない事を見定めてから俺達は出てきたんだぜ!」
「・・・・500もの数の兵を一体どこから」

「下積みの大変な作戦だったよ。作戦自体はもう数年前から始まっていた」

「・・・・・・数年?」

「あんたらにバレずに砦に近づく方法。
 昔のノカン軍は夜襲を使ったが、戦争中で昼夜警戒態勢の今はそれができない
 ならどうやって裏をかくか。答えは簡単で単純であまりにも陳腐な作戦だよ」

ケビンは地面にグルトガングを数回刺しながら言った

「地中を掘ったんだよ。何年もかけてな」

「掘っただあ?」
「・・・・・笑止」
「500の兵が通過できるほどの穴が数年でできるはずがない馬鹿め」

「できるんだな。実際今それを使って奇襲したじゃねぇか。
 まぁたしかにそんな穴を掘るのは簡単じゃねぇが、
 "最初からある穴を加工する"だけなら数年でカプリコ砦まで繋げる」

「最初からある穴?」

「ディグバンカーだよ三騎士さん。ディグバンカーをカプリコ砦まで繋げた。それだけだ
 よく思い出してみろ。俺達ノカンはずっとあの穴の中でテント張っていた。知ってただろ?
 ずぅーっと泊り込みで掘ってたんだよ。砦に繋げるためにな」

「・・・・」
「応応!そりゃご苦労な作戦だったな!」
「まんまとやられたってわけか」

「切り札はとっとくもんだ。これから戦況はひっくる返るだろうよ
 何せ運のいいことにあんたら三騎士が出てきてくれた。不幸中の幸いって奴だ
 砦の防備は薄い。いきなり本拠地が攻め落とされたカプリコ共の焦り様が見たいぜ」

「・・・・・・切り札か」
「参った。これは参る。これには驚かされた。そしてやられた
 カプリコにはできない団結力のある作戦だ」
「たしかにそうだなだがよ・・・・・」
「あぁ」
「・・・・・切り札はこちらにもある」













                 






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