「急ぐぞお前ら!」

ジェイピスは崖(クリーク)の下まで来ていた。
崖というよりは丘だった
ジェイピス達はこの丘をとりにきた
急な坂を上り始めている
ここまで来ると、ここが絶好の狙撃ポイントだとよく分かる。
戦場は少し離れたすぐ下にあり、全体を見渡せる。
ルアスの森は所々以外は木は多くない。
それでも森の中にいると木が重なり、視界はそこまで先が見えるわけじゃない。
だが上からだとほとんどの場所が見渡せる。
どいつもこいつも狙ってくれと言わんばかりの射的場だ。

だが今はその逆の状況だ
すでにこの丘を敵のカプリコが占拠している
カプリコには狙撃に秀でたものがいないが、
カプリコにもこのようなポイントを欲しがる者達がいる。
プラコだ
爆弾は断然高位置が有利。
投げ落とすだけだからだ。

とにかくつまりは
この丘(クリーク)をとるかとらないか
それが断然戦況に変化を与える。

「ジャイピス隊長!丘の上を!」
「あぁ」

崖の丘の上を見上げるジェイピス
そこには数にして数十匹。
先にこの崖を占拠したプラコ達がニヤニヤと笑っていた
そして丘の頂上にいるプラコが問題だった。

「よぉ!ジェイピス!ひさびだな!」
「あぁ、二度と見たくないと毎回思うぜマイセ」

マイセはプラコ部隊の隊長。
ジェイピスとは戦場のたびに顔を合わす。
理由はもちろん毎回のようにこういった狙撃ポイントを奪い合うからだ。
毎回勝敗は五分五分といったところだ。

「一足遅かったな!今回は俺達の勝ちだ!
 この丘の頂上はこマイセ率いるプラコ隊のもんだぜ!」

マイセは丘の頂上からジェイピス達を見下す。
マイセからはジェイピスたちがまるで丘を這い上がってくる蟻に見えるだろう
見下されるとジェイピスは腹がたった。

「遅くないぜマイセ。この丘は俺達がもらう。お前は一足早かった。それだけだ」
「毎度吹かすねぇジェイピス。そんな崖の下の方にしがみついてるだけのクセによぉ」
「今はな、だが数分後にその頂上に立っているのは俺達だ。
 代わりにお前らが丘の下に転がる。死体となってな」
「あぁ〜ん?遠くからピュンピュン撃つしか能のないニュクノカン風情が!」
「ほぉ〜、プラコがそういう事いうか。羽があるくせに重くて飛べないペンギン野郎達のくせに」
「ケッ、ほざけ。今日はカプリコ・ノカンの最終決戦だ。俺達も最終決戦といこうぜ」
「お前の最終決戦だ」
「いや、お前のだジェイピス!」

マイセは両手に爆弾を抱える。
マイセの部下達もだ。

「爆弾が上は有利!なんたって落とすだけだからな!死ねジェイピス!!」

マイセとその部下達が爆弾を落とす。
それはまるで空襲。
ジェイピス達へと降り注ぐ。

「うわぁああ!」
「ぎゃぁ!」

マイセ達は狙って爆弾を落としているわけではないだろう
だが効果は抜群。
ジェイピスの部下達がひとり・・・またひとりと爆弾の餌食になっていく。

「チクショゥ!お前ら、応戦するぞ!」

ジェイピスのニュクノカン部隊は一斉に吹き矢を構えた。
そして一斉に吹き矢を吹き放っていく。
それはまるで雨が逆に降るようだった。
丘の上のプラコも次々に吹き矢に当たり、
丘の上から虚しく落ちていく。

一進一退とはいかなかった
断然上のプラコ達が有利なのだ。
ジェイピスの隊のニュク達はどんどん爆弾の餌食になっていく。
だが負けてもいなかった
ニュクノカンたちは爆弾と違い、吹き矢を狙って撃っている。
崖の下にいながらも命中率では負けていない。
ニュク・プラコ双方、
淡々と一匹また一匹と倒し倒されが続いていた。
だがやはり爆弾の方が上。
ジェイピスの隊は気づくと6人ほどになっていた

「特大のをくれてやんぜジェイピス!!」

頂上のマイセ。
マイセが抱えていたのは大きな爆弾。
サンドボムとは思えない大きさだった。

「そぉーらよっとぉ!」

それをジェイピス達めがけて投げ落とした

「やばい!伏せろお前ら!丘に貼り付け!!」

ニュクノカン部隊は一斉に身をかがめる。
そして特大のサンドボム。
それはジェイピスより少し右へと落ちる。
そして丘の壁にぶつかり炸裂した

「うわぁあああ!」

そのサンドボムの直撃を食らった者は二人
だが被害はそれ以上。
何故ならその爆発は丘をえぐり崩したからだ。
気づくとニュク隊はジェイピスを合わせて・・・・・たった二人

「ぎゃぁ!」

たった今ジェイピスだけになった。
プラコはまだ10匹以上残っている。

「一人じゃ寂しいだろジェイピス!仲間と同じところに連れてってやるぜ!」

マイセが特大のサンドボムをもう一個抱える

「今度は外さねぇぜジェイピス!俺達の腐れ縁もこれまでだ!」
「あぁ、これまでだな」
「おぉ、潔いな!諦めも肝心だからな!」
「いや、終わりっつったのはお前が死ぬからだ」
「おうおう!そんな丘の下っかわでよく吠えるもんだ!
 10対1。この状況が分からないアホになったかジェイピス!?」
「そういう前は俺の腕を知らないのか?」
「ばーか!そっからじゃぁ部下はかろうじて倒せたとしても頂上の俺の命には届かねぇよ!
 俺に届いたときには威力もなくなってる!頭を狙ったとしてもな!」
「頭か。まぁ別にお前のイカれ頭をぶち抜いてやることもできるんだぜ?
 俺の吹き矢の射程距離を知ってるだろ?だがそれはしない・・・・・・・・・こういうのはどうだ?」

ジェイピスは吹き矢を構える。
規格外の長ロングバレルの吹き矢。
その吹き矢は一直線にマイセを狙っていた。
いや、マイセではない。

プッ!

ジェイピスの吹き矢が飛ぶ。

「あ?」

その吹き矢の矢が刺さったのは・・・・
マイセが手にもつ特大のサンドボムだった。

「な!?ちょ!!ジェイピスてめ・・・・」

マイセが言い終わるより前に
特大のサンドボムが特大の爆発を起こした。
マイセが手に持ったままだ。
その爆発は大きく、
丘の天辺をえぐり壊す。
そして衝撃も大きい。
一網打尽という言葉がピッタリ。
プラコ達は爆発に巻き込まれた者も巻き込まれていない者も
高き丘から落ちていった。

「ストラァ〜イック!ってな」

ジェイピスの勝利だった。
プラコは全滅。
こちらもジェイピス一人になってしまったが、
それでも丘をとれるのだ。
勝利である。

ジェイピスはロングバレルの吹き矢を背中に背負い、
丘を登った。
爆発のせいでほんの少しだけ高さが減ってしまったが問題はない。
頂上にたどり着くとそこにあったのはやはり絶景だった。

「丘(クリーク)制圧任務完了っと」

ジェイピスは丘の頂上から戦場を見回す。
そしてケビンの姿を見つけた。

「やっべ!三騎士と遭遇してやがんじゃねぇかあのアホ!死ぬ気か!?」

ジェイピスはすぐさま吹き矢を構える。
ここからの狙撃。
三騎士を相手にしてもノーリスク。
三騎士を倒せる。
自分ならできる。
いや、今の状況。
むしろ三騎士を倒せるのは自分しかいない
ジェイピスは吹き矢で狙いを定める。

ふと
ジェイピスの体が浮き上がった

体が飛んでいる。
いや、何かに掴まれている。

「へ・・・へへ・・・油断したなジェイピス・・・・」

その声はマイセだった。
ジェイピスの肩をマイセの鍵爪が掴んでいる。
そして宙を羽ばたいているのだった。

「プラコが飛べない?大間違いだジェイピス。
 飛べるプラコもいるんだよ。このマイセ様のようにな」

マイセはプラコの中では数少ない背中の羽での飛行可能なプラコだったのだ。
爆発で飛ばされた後、なんとか浮遊して墜落を免れたのだろう

「チ・・・・。だがマイセ。お前もフラフラじゃないか。二人分飛ぶのがつらいんだろ?」
「チクショウその通りだ!自分の爆発を食らうとは思っていなかった!
 たしかにこのまま飛べねぇ・・・・へへ・・・・だがな・・・・こうすればいいだけだ」

ジェイピスを掴んだまま宙を飛んでいたマイセ。
だがそれをやめた。
もちろん飛んでいた事をではない。
ジェイピスを掴むのをだった。

「クソッ!!」

ジェイピスは上空から投げ出される。
ただでも高い丘の上。
それより高い所から落とされたのだ。

絶望的だった。

下は崖のせいでむき出しの大地
漫画のように木の上に落ちて助かるという事もありえなさそうだった。

「ハッハー!つぶれちまいなジェイピス!」
「てめぇも道連れだマイセ!」

宙を落ちるジェイピス。
だがジェイピスは諦めない。
空中で吹き矢を構える。
そして

「て、てめっ!?そっから!?・・・・あっ・・・」

空中でマイセの頭を正確に射抜いた。
射落ちる死鳥マイセ。

「ストラァ〜イック」

ジェイピスは空中で吹き矢を放り投げた。

そして・・・・・

鈍い轟音が鳴り響いた。

ジェイピスが地面に叩きつけられたのだ

「ガハッ!」

大量の血を吐くジェイピス。
体から落ちたため未だ意識はあった。
だが体は衝撃でもうグチャグチャだった・・・

「チクショウめ・・・・指一本動かねぇ・・・」

そう言ってジェイピスは倒れながら自分の腕を見た。
指一本動かないのは当然だった。
落ちた衝撃で右腕は吹っ飛んでいたからだ。

「寒ぃ・・・・死ぬんだな俺は・・・・・」

自分が死ぬことを感じられた。
もうどうしようもない状況だと。
たとえヒールやリバースでも無理だ。
修復不可能な体だ。
もう痛みも感じない。

「ノカンの勝利・・・見届けたかったけどな・・・・」

痛みは感じない。
だがひとつ感じれるのは自分の目をつたう涙の温度だけだった。

「ケビンの野郎・・・・俺にえらそうに任務を命令しといて・・・・死んだら承知しねぇぞ・・・・
 ブンスターの仇を討つ前に帰ってきたら天国(アスガルド)に来ても追い返してやる」

意識が朦朧としてきた。
もう死ぬのが分かった。

「ケビン・・・・ケント・・・・お前らは長生きしろよ・・・・」

ジェイピスは目をつぶった。
もう動くのは口だけだった。


「・・・・・・吹き矢遊撃部隊・・・・隊長ジェイピス・・・・・・・・・・・・・・・任務未完了・・・・・・」


その言葉を最後に

ジェイピスは静かに息をひきとった














                 






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