まあエレスの言ったとおり、捜さないことには何も始まらない。標的はミラーを持っていった猫一匹。場所は「こっちのルアス」。それこそ干支が一周してしまいそうなほどの、気の遠くなる話だった。ルアス99番街の広さを把握し切れていないリーヴァにとっては、99と言う数字の大きさをそのまま町の割合に転換してしまい、大袈裟なくらい困惑していた。 「おい、ちょっと待て」 酒場を出ようとしたリーヴァ、エレス、黄色シグナルの三人を、ドジャーが呼び止めた。 「オメェら本ッ気で猫一匹捜すつもりか?」 つもりも何も、ミラーがなくては元の世界に戻れない。ミラー以外に戻る方法がないとは言いきれないが、そんな雲を掴むようなことするなら猫を捜すほうが早いに決まっている。 「しつこいようだがここは荒くれの溜まったゴミ箱って言われているルアス99番街だぜ? 女三人がちょろちょろうろついてみろ、いつ襲われるか分かんねぇぞ?」 「大丈夫ですって、リーちゃんいますし、ナルちゃんいますし」 安心できる根拠になっていない。そんな期待をされても困る、とリーヴァは思う。 「いや、だからな……その、何だ」 それっきりドジャーが口ごもるものだから、アレックスがふっと笑い、 「ドジャーさん、最近ガードがゆるくなってきてましてね、そういう話を聞くとほっとけなくなってきているんですよ」 「だ〜ッ! うっせアレックス!」 ドジャーはアレックスの頭をぺしりと叩いて、恥ずかしそうにそっぽを向いた。 ガードがゆるいと言うと、さっきの孤児院のことを聞いて感性でもくすぐられたのだろうか。けど別に孤児院なんてそこまで珍しいものでもないから 「――その代わり、条件がある」 ドジャーがそっぽを向いたまま言ってきた。 「条件?」 こういう時の条件って、割に合わなさそうで嫌な予感がする。 「リーヴァ、後で俺の酒に付き合え」 「――ほえ?」 思わず拍子抜けな声が出た。 「ドジャーさんっ!」 エレスがちょっぴり怒った顔をしている。 「リーちゃんを酔わせた勢いであーんなことこーんなことしようったって、そうは問屋が卸しませんよ! リーちゃん酒豪なんですから! 先に潰されるのが落ちですよ!」 エレスの警告にリーヴァは思わず身を案じるしぐさ。 「んなこたしねえよ!」 ドジャーはすぐに言い返すが、 「ドジャーさんっ!」 再びエレス、 「リーちゃんは一女性としての魅力がそんなにないんですか!?」 「俺がどういやオメェは満足するんだ!?」 狂気乱舞しかかるドジャーを、リーヴァとアレックスが慌てて身を乗り出して押えつける。「私右腕やるんで!」「じゃあ僕左を!」 「ガハハ! 面白そうじゃねえか、俺もやるぜ」 メッツが言った。 さて残るは。 「協力してくれますよねっ?」 エレスが胸をときめかせ、目を輝かせ、手を組んでアレックスを見つめる。 「あ、いや僕はまだご飯――」 「ありがとうございますー」 スキルが発動する。 エレスは取り合わず、積極的にもアレックスの手を掴んでぐいと引っ張りあげた。 「食前と食後の運動だと思えばいいんですから」 「まあ……いいですけど」 食事を基準に考えるこの二人は、ほだしてしまった以上どこまでも歯車が噛み合いそう、とリーヴァは思う。 一応これで戦力は、最初の二倍である六人となった。 ドジャーが人差し指でこめかみを押さえる。 「――んじゃあ三つに分かれるか。ルアス99番街もそこまで広く占めていねぇ。俺にとっちゃだが」 酒に強い奴と酒が好きな奴。 馬と騎士。 凹と凸。 そこでリーヴァが思い出したように、 「――あ、出来れば今日中に見つけ出したい、かも」 「なんでだよ。長時間いたらこっちにつなぎとめられるってこたぁないんだろ?」 「そうじゃないんだけど……。私、お酒飲んだら次の日絶対二日酔いするから」 「……オメェ酒に強いのか弱いのかよく分かんねぇ奴だな」 「武器とかもいるかな〜?」 「まあそうですね。ドジャーさんが言ったとおり、ここは結構物騒ですから。万が一の護身用程度に」 「ま、俺の敵ではないけどな!」 ドジャーとメッツの声が綺麗に重なり、カカカッ、とガハハッ、という笑いまで揃った。 それなら、今からでも遅くないから――とシグナルは青色に変わって魔力生成を図ることにした。 じゃあ私も準備しよう、とエレスがマリナに向かって、 「マリナさーん! 工具とかあったりしますかー?」 あったりした。マリナはカウンターの下に隠れたかと思うと、そこにあった工具セットを掴み上げ、カウンターの上にどっかりと置いた。最近、店を壊す無謀な輩が増えてきたために、こうして工具セットもすぐに取り出せるように用意していた。 やったあ、とエレスはプレゼントを待ち焦がれた子供のようにふたを開け、ドライバー、折りたたみ式ののこぎり刀、仕舞いにはスパナまで嬉しそうにポケットに突っ込んでいく。あるいはベルトに差していく。しかし、バールはセットの中には無い。マリナの意向だ。こちとら店が損壊するたびに板をあてがって釘を打ち込まねばならないに、何が悲しくて釘を引っこ抜かねばならぬのか。 「そんなもので闘うの?」 「当たり前田のクラッシュギャルズですっ!」 古い上に違う。 「ある意味オメェもアレックスと一緒だってことだな」 「ある意味って、何が?」 アレックスは外見を見る限りでは騎士なのだが、実は聖職者の魔法も携わっている。こちらの世界では 穏やかそうな顔つきはそういったところから出来上がったものなのか、とリーヴァは思う。むしろ騎士がおまけのような気もしてきた。鎧を着こなしていたから騎士だと判別できたものの、もし聖職者の法衣を身に纏ってうそぶかれたら、間違いなく自分はうなずいてしまう。 「大工と聖職者じゃ離れすぎていると思うけど……」 「そうですよ、第一ネーミングが思いつきません」 「あはは、別に工具を扱うだけで大工をやってるつもりじゃないですよん」 あらかた準備を終えた後、六人は酒場の外へと踏み出た。リーヴァ、エレス、シグナルにとって「こっちのルアス」を見るのはこれで二度目になるが、改めて見渡すと確かに酷く寂れた物悲しい雰囲気で、胸苦しさを覚えた。 ドジャー、アレックス、メッツに道案内をしてもらいつつ、それぞれの方角へと別れることとなった。 ドジャーとリーヴァは酒場を出て左へ。 アレックスとエレスは酒場を出て右へ。 メッツとシグナルは酒場を出てまっすぐ。 よし行こうとしたその時、リーヴァはドジャーに呼び止められた。 「まあ待て、こういうのはスタートが肝心だ。直にどでかい合図が来て俺は突っ走るからしっかりついて来いよ?」 何の合図だろう、と思ったその直後、背後から「ぬわり」とした強烈な気配を感じて、 「こらああっ! あんたたちお金払ってから行きなさーい!!」 「ほらスタートだッ!」 爆竹が爆ぜるような勢いで六人は散り散りになった。ドジャーは「カカカッ!」と、リーヴァは「うわあ」と、アレックスは「アーメン」と、エレスは「あっはっは」と、メッツは「ガハハ!」と、そして青色シグナルは「はわわわ……」と言ってそれぞれの方向へと駆け出した。マリナの怒声が背中に追いつく。リーヴァはこころの中で謝りながら、それでも振り返ることは出来ず、そのまま突っ走る。走る、というよりも逃げる感覚だったことをひそかに白状する。 酒場、「Queen B」を中心に、様々な人物がいた。 入口を出て左側へ逃げるもとい走る者、正面に走る者、右側へ走る者、騒ぎを耳にして泥酔から醒める者、何があったんだと思いつつも酒を飲む者、とばっちりを受けたくないがためにさっさと会計を済まそうと財布を漁る者、ギター片手にご乱心の者。 そして、酒場の屋根に着地し、一部始終を聞いていた者。 「――リュカオン、カネス、感じているな」 先頭にいた長身長髪の男が立ち上がり、後ろの二人に背を向けたまま訊ねる。 「ん、ああ。この世界とは違う変わったにおいだ。すっげえ感じる」 修道士と思われる男が鼻をわずかにひくつかせながら答える。 「ああ……女のにおいだ……いいなあ……狩りてえ……!」 こちらは魔術師の男。舌をだらりと垂らし、猟奇的な言葉をつぶやく。わななく拳からは魔力が溢れている。 「ん、レラプス。猫のにおいもするぞ。すっげえ……まではしねえけど」 「ああ? リュカオン……猫なんて料理するほどそこらへんにいるだろうがよお」 消去的にだが、リュカオンと呼ばれた修道士にカネスが言った。 レラプスという名の盗賊は比較的落ち着いた口調で、 「――話から察するに、あいつらの持ち物を失敬した、というところか。このにおい……おそらく異世界からやってきたせいだろうな」 「うあー畜生……このにおいたまんねえ……異世界の奴らなら……きっと良いもの持ってんだろうなあ……!」 魔術師カネスは獰猛な笑みを浮かべる。もう我慢ならん、と言った感じに立ち上がった。 「迷子の猫ちゃん捜しはぁ……犬のおまわりさんの役目だろお。俺ぁまっすぐ突っ走った魔術師と戦士を追うぜえ……!」 そう言って屋根を飛び降りた。 「ん、レラプス、お前はどっちへ行くんだ?」 「俺は左へ行った修道士と盗賊を追う。さすがにこうも猫のにおいが弱いと捜すのには骨が折れる。まずはこなせることからするさ」 「ん、じゃ俺は右に行った聖職者と騎士だな。――ああいう変わった連中がこっちにくるのって……なんつうか、すっげえ縄張り荒らされるような気分だ。実のところ俺も狩りたくてしょうがない」 レラプスは冷笑して肩をすくめ、屋根から飛び降りる。リュカオンもそれに続く。 盗賊レラプス、修道士リュカオン、魔術師カネス。 この三人組を、 左へ進んだドジャー、リーヴァは組み合わせが良かったのか、お互いの足を引っ張ることなく、他のペアよりも比較的速いスピードで当りを駆け回っていた。 「カカッ、リーヴァやるじゃねえかぁ! 俺と同等に走れるとはなぁ!」 「新聞配達やってる砂漠育ちなめないでよ。ドジャーもやったらどう? いい小遣い稼ぎになるかもしれないよ」 「わりぃけど俺はちびちびとした努力が嫌いなんだよ。がっぽり稼げた結果がありゃそれでいいんだぜ!?」 確かにそういう図太さを持っていなければ、こんなところでは生き延びられないし、盗賊なんかやっていけないだろう。 だけど、そんなこと云々を抜きにしても、そこが何だかドジャーらしい、とリーヴァは思った。 突然だった。 地が揺れた気がした。 いや、本当に揺れたのだ。 たたらを踏みながら顔を見合わせた。 ドジャーも足でその感覚を掴み取ったらしい。 地震かな、と思いつつぐらついた身体を整えようとした瞬間、 「――いたっ」 右足に鋭くて白い痛みを感じ、リーヴァは顔を歪めた。 ドジャーも立ち止まり、その場にしゃがみこんだリーヴァのもとに寄る。 地震で足さばきをしているさなかに、右足の親指の付け根辺りで、思いきりガラスの破片を踏んづけていた。そこらに散らばっていて、窓か花瓶かは分からないほどの破片だった。 「カァッ! んな足輪してっからだろ? ここじゃ散らばっているものに怒っても仕方ねえぜ」 「はいはいどうせ私の不注意だよっと……」 傷口から血の雫がぷっくりと膨れ上がってくる。垂れて赤い筋を曳き、足と足輪の隙間へと入り込んでこようとする。もたもたする思考を冷静に整え、リーヴァは白い絆創膏を取り出してぺたりと貼り付けた。 そのとき、喉が窮屈なのを覚えて、 ――あれ。 まずいと思ったときにはもう遅い。心臓がいきなり胸の奥から浮上してきた。捜し始めて15分ほどだから、まだそんなに走っていないはずだ。なのに視界が妙にぐらつく。足の筋肉がつーんと痛くなる。 ドジャーもリーヴァの様子に気づいたのか、冗談半分に、 「おぉ〜い、どおしたぁ? もうへばったのか?」 「……うん」 「おい!?」 本当にへばった。自分から訊ねておいてその反応は無いでしょと思う。 「ちょっと、体調が、」 「――トイレか? それとも女のアレか?」 そんなおおっぴらに言わないでよ、と思うのだが、反論する気力はどこにもなかった。動悸がする。頭の冷たい血が頭へと下り、それに伴って意識がほんのりと遠のく。 リーヴァは自分の走りの特徴を、自分で忘れてしまっていた。自分の同等の俊敏さを持っている者と一緒に走れることに嬉しさを感じ、注意を払っていなかったからだとこころのどこかで認めていた。 リーヴァは超弩級の長距離型人間だ。ちょっとした距離ならば細かなことを考えずに走れるのだが、それ以上を視野に入れるとなると、先を見越した体力の使い方が必要となる。少し立ち止まるなどもってのほかで、鬼ごっこだとよっぽどの規模で無い限りは序盤にやられるが、反対の立場だと無敵の力を発揮するタイプだ。 せめて、 せめて、あと何キロか走りたい。 ペースを掴むためにゆっくりと走れば、そのうち全力状態となって、10キロぐらい簡単にすっ飛ばせるようになれる。 まあでもそんな事情も知ったこっちゃないだろうから、個人的な要求も通るはずが無く、ドジャーは頭をくしゃくしゃとかきながら、 「怪我してるところわりぃけどよ、とりあえず走るぞ。目的は走って勢いつけつつ猫捜しだ、OK?」 うん、とリーヴァはうなずく。足の具合を確かめつつ慎重に立ち上がったとき、 「――その必要は無い」 すぐさま振り返った。ほら見ろおいでなすった、とでも言うようにドジャーはすでに構えを取っていた。 右へ進んだアレックス、エレスは食後にもかかわらず、大層なペースで捜索していた。もともと運動神経の良いエレスと、騎士であるアレックスのペアだったからか、ドジャー、リーヴァペアよりは劣るとも十分な歩調だった。 「大体皆さん、ご飯のありがたみの意識が薄れてきていると思います」 アレックスの見解に、エレスは深く同意する。 「あー分かります分かります。三度の食事が当たり前って観念、はっきり言って食べ物にも失礼だと感じますよねえ」 リーヴァの予想は的中し、二人は自分の歯車を綺麗に噛み合わせていた。意気投合するあまりに、本来の目的をそっちのけにしてしまいそうなほどだった。会話の大半は食事に関することであり、残りは職業その他である。 それでも二人は真面目な性根を持っていたので、猫捜しは怠っていなかった。その他にも別世界のルアスについて思うことがあるのか、エレスはよく辺りを見回していた。 「やっぱりこういうルアスを見るのは辛いですか?」 「いやあそういう気分じゃないんですけどね、私たちの世界もこんな風になってたかもしれないだなーと思っちゃいまして。他人事では済まない気もしてますよ」 アレックスとエレスは、同時に立ち止まる。 「エレスさんの仰っている事を否定する気は毛頭ありません。……ですが僕は、これからも生きる世界がこういう風になってしまったことは……考えたくは無かったです」 「そうですか。ま、ポジティブに行きましょうポジティブに!」 二人は振り返って構える。 「今のあなたはこちら側の人間≠ナす。あまり傷つけたくも、傷つけさせたくもありませんが……一応覚悟はしておいてください」 「もちのろんろんです」 二人の視線の先には、黒い髪をした修道士が立っていた。 「ん、話は終わったか?」 残るはメッツとシグナルペア。この二人が一番ムラがあった。そりゃあドジャーとリーヴァは息があってたみたいだし、アレックスとエレスも同調していた。けれど、酒場に後からやってきたメッツとシグナルは、まだまだお互いのメンバーのことを十分に理解していないのである。 お互い余り物だった、と言えばそれまでだった。 しかも、メッツはミラーの重要性を把握し切れていない。 そして、シグナルの性格の切り替わりについていかねばならない。 あまり深く考えていないメッツはマイペースにのっしのっしと歩き、見慣れた景色を流し見していた。 単純に「面白そうだから」猫捜しに手を貸した。五人に置いてけぼりにされて一人酒を飲んで煙草をふかすのは、気分良いものではない。図体同様、豪快な性格をしたメッツにとってはじっと留守番するなど問題外なのである。静かに崩壊に向かいつつある世界とはいえ、一日単位で眺めれば非常にお粗末なものだった。最近特にマンネリ化が酷い。こころを程よく燃やしてくれるような、変化のあることを求め続けねばやっていけない。喧嘩沙汰になったらそれはそれで許容範囲だった。 「んで? その猫がくわえて行った手鏡がないと、お前ら三人組は元の世界に戻れないってことだよな?」 振り返って、パッケージの中に残っていたシケモクを取り出してくわえ、火をつける。実はこれ、ドジャー、アレックスと共に酒場に行く前に、メッツ一人で何でも屋に寄り道して買ってきたものだ。すでに半分は吸いきっていた。 二メートル距離を置いてメッツの後ろを、青色シグナルがくっついていた。 「は、はい……こ、これくらいの鏡を巾着に入れていたので、猫でもくわえられるかと思います……」 シグナルはうなずき、恐々と人差し指と人差し指、親指と親指を引っ付け、いびつな小さい円を作って見せる。 「あー分かった分かった。――ところでよ、お前何もそこまでおびえなくてもよくねえか?」 シグナルは恥ずかしそうにうつむき、 「ご、ごめんなさい、と、殿方とお話するのは慣れていませんので……」 それはその性格のときだけだろう、とメッツは思う。別に怒っているつもりじゃないのにどうしてこんなに怖じ怖じとしているのか。 「……その性格めんどくせぇな、黄色になれよ」 「は、はい、分かりました……」 メッツは上手く頭が回らないので、せっかく魔力のたまる青色になっていたのにも関わらず、シグナルにそう告げる。 つまり、蓄積充填から分析解明のシグナルのチェンジする。 諾々と従うシグナルは黄色になり、やる気のなさそうな顔で見回す。 「これだけ空気が汚いと、わたしでも猫のにおいは追えないよ〜」 メッツはため息と煙を吐き、 「――使えねえなあ、お前」 黄色シグナルはむっとして、 「うるさいな〜、あの店主のことが好きなくせに〜」 「か、関係ねえだろっ! っていうかなんでそんなこと分かるんだ!?」 「顔に書いてるもん〜!」 無礼にもシグナルはメッツのでかい面をびしりと指差す。メッツはかなり狼狽する。表情を押し殺すが、絶対に悟られていると思う。黄色シグナルの驚異を胸に刻まれた。 「んじゃもう赤になれ……」 「赤になるとわたし、うるさくなるよ〜?」 プライベートを筒抜けにされるよりかはましだ、とメッツは思う。豪快なあの性格の方が、自分とマッチするかもしれない。 しぶしぶ黄色帽子を外そうとしたシグナルの手がふと止まる。忌み嫌う人間の気配を察知したカラスのように、 「どうした?」 「何だか変な魔力を感じる〜……」 メッツにそんなものは感じられなかったが、今のシグナルがそういっていると言うことは―― 「……ルアス99番街って、こんなに野蛮な奴がいるの〜?」 「あったりめぇだ、やるかやられるかの世界だぜ」 メッツはつまんだシケモクを弾いて捨てる。 むう、とシグナルは考え、赤色になる。 「まあいいぜ、やるからにはやってやる!」 「ガハハ! そうこなくっちゃな!」 メッツと赤色シグナルは、遠くにいる魔術師を 「おぉっし追いついたあ……さあ、狩るぜえ……!」 |
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