「え〜〜〜〜〜〜〜〜っと、どこだったかなぁ」 ルセルさんはあたりの本を勢いよく引っ掻き回して、あたりを探しまくっていた。 探しているものは−−−石。 薄い紫の髪に濃い紫の瞳。少し背の低い魔術師ルゼルは騒がしく探し回っているルセルを見て、困った顔を見せた。 いつも優しい雰囲気をかもしだす、このルゼルが捜し求めていた人−−−セルカさんのために石が必要になったのだ。 詳しく話していくと切りがなさそうだからやめておくが、今そこであたりをめちゃくちゃにしているような探し方をしている聖職者の青年ルセルさんもルゼルと同様、まるできょうだいのようにセルカさんと暮らしを共にしていたらしい。 ルセルさんが大量に仕入れた知識の源である本が、あたりにちらばる。 丁度俺の居た場所にも本が転がり落ちてくる。 「あうわっとと」 「あ、ジルコンくん、ごめんねぇ〜そこ多分危ない。」 と言うが早いか、ルセルさんは上から本やらなんやらを放りなげた。 下にいる俺の場所に。 その大量すぎる荷物に判断が遅れ−−− 「いでっ!いだだただたっ!ちょっと、ルセルさんっ!!」 「ルセルっ!?ちょっと、考えて物を下ろしてよっ!」 丁度横にいたルゼルの上にも物が落ちてくる。 「なっ、投げ落とさないでよっ!こらっ!!」 しっかり抗議する間も与えずに物が降って来る始末。 「・・・ルセルっ!!やめなさいぃぃ!!」 いつも温和なルゼルが怒ってキレたのは言うでもない。 挨拶が遅れたけれど、俺はジルコン。修道士をしている。 とあることから知り合ったルゼルという魔術師は、人を探していた。 それはセルカという聖職者の女性。ルセルさんとルゼルとセルカさんとで一緒に暮らしていたらしい。 でもその暮らしもセルカさんが突然家を出て行ったことで変わってしまったらしい。 セルカさんの突然の変貌に信じられず、ルゼルも旅を出たんだと言う。 俺はというと、その3人とは全く関係の無いところで関係なく育ったわけなんだが… 一人で旅をしているルゼルがあまりにも危なっかしい戦い方をしていることが気になって、特段、目的も無かった俺は付いていくことにした。 で、これまたひょんなことから知り合ったルロクスという魔術師の少年も引き連れて、今、この場所に居る。 一同の目的は、『セルカさんを元に戻すこと』だった。 で、そのために特定の石がいくつか必要になって、それが一つだけだがこの家に確かある!ということで、ここまで引っ掻き回して探している…のだが… 「ルセル〜?見付かった?」 「ま〜だだよっ」 ルゼルの問いかけに、間延びした声で答えるルセルさん。今まで貯めに貯めまくった本の数々の間に、そんな石を入れておくということ自体、変だと俺は思うんだけど… 「そんなとこにあるのか〜?そこ、本棚だろ〜?」 上にいるルセルさんに向かって、見上げながらルロクスが言う。 すると背を向けていたルセルさんがくるりと向きをこちらに向ける。 「確かここなんだよ、ここのはずなんだ。・・・おっかしいなぁ・・・」 「・・・ルセルってば、片づけが下手だって…セルカ言ってました。」 「これ見てればわかるって…」 ルゼルのぼやきに、ルロクスが反応して頷く。 俺も頷いておいた。 「“手を出すと なぜか怒られ 昼下がり 待ってるだけでも 暇だなオレら”」 「わ〜“57577”とかいう作りの詩ですね〜」 「そそ、オレの姉ちゃんでもあるイリィが教えてくれてさ〜」 「ルセルも時々その作りの詩で面白いこと言ってましたよ〜」 「結構リズムがあって面白くなるんだよなぁ〜」 「そうそう、“575”とかででも作る詩もあるんですよねぇ」 「んじゃあ今度は“575”で考えてみるっかなぁ〜」 「…にしても暇ですねぇ〜」 「だなぁ〜…な、ジルコン。ジルコンも“575”やろうぜ〜?」 ルセルさんが積みあがった本を書き分けている間、暇だ暇だと言ってルロクスとルゼルが話をしていたのだが、いきなり話を振られても…。 「え〜っと…ルセルさん〜?まだです〜?」 さっきルロクスが作った詩でも言っていたように、手伝おうと手を出そうとすれば、それは動かすな、あれはそこにやるとわからなくなるなど言われ、結局手伝うことが出来ないのだ。 だから俺たちはじっと待って、声をかけるくらいしかできないでいる。 「…ルセルが探しているのを待ってるより、僕達、さっさと別の石を探す旅に出た方が良いんじゃないかなぁとか思うんですが…」 「だなぁ…オレもそう思えてきた」 ルゼルとルロクスがぼやく。 俺たちが旅に出る前にどうしても見せておきたいと、これは自分のもとにあるんだと安心させたいからと言って、ルセルさんは旅の準備をしていた俺たちを呼びつけたのだが、こんな様子じゃ待っているよりも旅に出て一日でも早く石を探し出したい衝動に駈られてしまう。 「あのぉ〜ルセルさ〜ん?もう俺たち−−−」 と言い終わろうとしたときだった。 ぱすっ 「んっ?」 特大の本たちが落ちてきたのとは全く違った落下物。 意外にも痛くもかゆくも無かったその落下物を拾い上げてみると、それは 「ゲート?」 「ゲート…しかも集団用のですか。年代物ですねぇ…」 「ルセル〜ゲートが落ちてきたぞ〜?る…ルアスゲートとか書いてあるけど〜?」 俺の手からひょいっとゲートを奪い取ったルロクスは、小さな名札に掛かれていた町の名前を読み上げ、上で作業しているルセルさんに見せるように掲げた。 言われたルセルさんは何のことだろうとひょいっと顔を向ける。 そしてあぁ、と納得した声を出した。 「それ、むかああああああ〜〜〜〜〜しのやつだと思うよ? おれが来る前からあったゲートだから。 なんか凄い鍵が掛かった箱があったから、興味で開けてみたらそれだったんだよ〜。 ゲートってそこらへんにあるようなもんだけど、昔は今より希少価値あったから、それでだとは思う」 「ふ〜ん」 ルロクスがゲートを手で弄ぶ。それをルゼルがやんわりと止めさせて、ゲートを取り上げた。 「ルセル〜?これ、どこに置いておけばいいの?」 「あ、そこの机に置いといてくれ。もう一つあるやつと合わせて保管しとくから。」 「は〜い。」 ルセルさんが自分の手にも持っていたゲートを掲げるようにして見せながらそう言うと、ルゼルが納得して返事をする。 そして、言われた通り、近くの机にゲートを置いた。 ルセルさんも自分の手元にあったゲートと合わせて置いておこうと、資料の上からぴょんと軽い調子で飛び降りた。 そのときだった。 突然、机の上に置いたゲートが光りだしたのだ。 「え?!え?!」 近くにいたルゼルは何がなんだかといった表情をして、頭に疑問符を浮かべている。 もしかしてこれって!!?? 「ゲートが発動した?!」 「ど、どうするんだこれ?!ルアスに飛ばされるのか?!」 俺とルロクスが慌てて声を上げた。 普通、ゲートは巻物状態になっていて、それを開くことで魔力が発動するものだ。 なのに、机に置いた衝撃でゲートの効果が発動するなんて…聞いたことがない。 でも今、目の前で起こっていることは明らかにありえないと思っていた現象であって… 「と、とにかく何かに掴まれ!」 ルセルさんがそう言ってルロクスに掴まった。掴まられたルロクスは当然、『ほえっ?』と不思議そうな顔をする。 俺もゲートの傍にいたルゼルに手を伸ばし、腕を掴んだ。 そこからあとは−−−−− 俺たちは光に包まれ、視界は白一色になっていた。 |
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