「あいあい、こうです・・・・・・・・・・・・・かっと!!!!」

ドジャーは突然そのダガーを切り裂きニックの方へ投げつけた。
それは見事にニックの腕に命中する。
その拍子にニックは「ぐっ」と言葉を漏らしながら
ルゼルを掴んでいた腕を緩めた。
その拍子にルゼルは腕から逃げ出しジルコン達の方へと走り出す。

「ジルさん!」
「ルゼルっ!早くこっちへ!」

「させるか!わたしの獲物だ!」

切り裂きニックは放してしまった獲物(ルゼル)を追おうとする。

「こっちこそさせませんよ料理長(殺人鬼)さん!」
「ルゼルを獲物にさせるわけにはいかないな」

アレックスとルセルは同時に空中で十字を切った。
そしてルゼルとニックの間。
そこに二つの魔方陣が浮かび上がり
そして同時に二本の青白いパージフレアの炎が吹き上がった。

「くっ!」

それはルゼルからニックを妨げる形になった。
パージフレアの防壁。
聖なる炎のとおせんぼ。

「チャンス!」

ルロクスは手をくぃっと動かすと
地面に転がっていたオーブがふわっと浮いてルロクスの手に戻ってきた。
そしてルロクスが詠唱と共にオープに魔力を込めると
ルロクスの両手の中でオーブが光り輝いた。

「ファイアビット!」

ルロクスのオーブから多数の炎が飛び出す。
そしてその炎達がニックを襲う。

「ちっ!」

切り裂きニックも伊達に99番街で殺人鬼をやってないといった様子で
女と思えない身のこなしで避ける動作をした、
だがファイアビットの多数の炎を全て避けきる事はできず、
二発の炎がニックに直撃する。

「くそっ!」

そしてその片方の一発はニックの手にもつパンプキンダガーを弾き飛ばした。

「へへっ、やった」
「これで終わりだな」

「そう、終わりですねニックさん」
「カカカッ!お仕置きの時間だ!」

ドジャーが右手を振り落とすと
ニックの足に蜘蛛の巣が絡まった。
自由を縛り付けるスパイダーウェブというスキルだ。

「クソォ!チクショゥ!この切り裂きニックちゃんが捕まるなんて!
 今日も女の肉をカットカットカット(切って切って切り尽くす)だけだったのに!」

ニックは地面を叩いた。
悔しそうに。
・・・・・と思いきや・・・。

「なぁーんちゃって」

切り裂きニックは突如笑った。
そしてパンプキンダガーを持った右手を振り落とす。
すると、
足に絡まっていたスパイダーウェブが切り裂かれた。

「切り裂きニック(ニック・ザ・カッター)は切るのが大好きなのよ!
 人の肉を切る(カットする)のも蜘蛛を切る(カットする)のもお手のものってね!」

「なっ!」
「クソォ・・・・」

ジルコン達がまた戦いの構えをとった・・・
が、

「え?あれ・・・」

切り裂きニックの動けなかった。
スパイダーウェブはカットしたというのに。

「残念です殺人鬼さん。ホーリーディメンジョンはカットできなかったみたいですね」

切り裂きニックの後ろにはアレックスが立っていた。
足元にはホーリーディメンジョンの魔方陣。
もちろん切り裂きニックの足元ごと。

「正真正銘ゲームオーヴァーです」

「チクショウゥ・・・わたしがカットし損ねるなんて・・・」

ニックはとうとうダガーを放り投げた。
正真正銘諦めたのだ。
それはニックの降参を意味し、
この件の解決を意味する。

「じゃぁ"シメ"に入るか」

ドジャーが言う。
そしてジルコンの方を向く。

「さ、ジルンコ。出番だぜ」

「へ、俺?」

ジルコンは少し不思議そうだった。
だがアレックスはルゼルとジルコンの様子を軽く見た後
ドジャーの行動をなんとなくだが理解した。

「ジルコンさん。いいとこあげますよ」
「そういうこった」
「ま、トドメって奴ですよ」

ジルコンは迷った。
そして言う。

「そんな・・・。犯人とはいえ身動きのできない女性を殴るわけには・・・」

ジルコンがチラリとニックの方を見る。
ニックはそれを睨み返した。
それをお構いなしにアレックスが話を続ける。

「ジルコンさん。そこがジルコンさんの優しさだろうけど、
 やっちゃってください。思いっきりね。そしてよく考えてください
 あそこにいるニックは女性ですか?
 それともルゼルさんを殺そうとした酷い人間ですか」
「男を見せなジルンコ。お前はただのお人好しか?
 それとも仲間思いで仲間を傷つける奴は許せないスーパーマンか?」

ジルコンは考える。
そして拳を強く握り締めたと思うと
一歩一歩とニックに近づいた。
そしてニックの目の前で止まった。

「あなたは本当にルゼルを殺す気だったのか」

捕らえられたニックは笑って答える。

「フフ、あたり前だろ?じゃなきゃどうしてさらうんだ
 7人の女を殺したワタシにお涙頂戴な動機があると思ってるのか?」

「そうか」

ジルコンは拳を構え、
そして・・・・・・・

「てりゃぁ!!!」

思いっきりその拳を突き出した。

ルゼルはとっさに目をつむった。
耳を塞いだ。
無音。
なにかと思い。
ルゼルはゆっくり目を開けた。

そこにはニックの眼前で止まっているジルコンの拳があった。

「やっぱり今無防備なこの人を殴ることはないかな」

辺りはキョトンとした。

だがそれを尻目にジルコンは拳を下ろして言った。

「俺は最初からルゼルが無事ならそれでよかったんだ。
 俺は人を殴りたいんじゃない。人を守りたいだけなんだ」

最初に噴出したのはルセルだった。
そしてそれにつられてルロクスも笑い出した。
ルゼルはまだキョトンとしている

「ジ、ジルさん・・・・」
「アハハ」
「ジルコンらしいや!」

「なかなか面白い人ですね」
「カカカッ!お人好しもそこまでいくと立派なもんだな!」









                 






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