******注意******

この短編は、
実際のSOADと全く関係ありません。

本編と世界はリンクしていませんし、
実際のキャラとは無関係です。


出てくるキャラも性格変更されております。
なお、
当作品はフィクションであり、ノンフィクションです

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注意2

身内ネタが多いので、分からない事が多いと思います。

アスガルド小説の世界観を破綻させる単語も多々あります。

出来れば読まないでください

****************
















「まったく・・・何よりじゃない」

ユベンは呟いた。
ルアス城前。
外門のさらに外。
騒がしい。
とても騒がしい。

何故かというと、
攻城戦前だからだ。

王国騎士団。
今日、
反乱を起こすギルドが15組。
そのギルド達が、
今か今かと外門前に押し寄せる。

外門前の庭園には、
反乱児達で溢れかえっていた。

「・・・・傭兵『ノック・ザ・ドアー』さえ居なければ、
 このルアス城外に敵をおめおめと野放しにすることもないんだが・・・・」

傭兵『ノック・ザ・ドアー』
どんな奴かは知らないが、
奴が開戦と同時に外門を破壊してしまうため、
外門の外側には兵を配置する意味がないのだ。
だから、
攻めギルド達は当たり前のように外門の近くで待機している。
あるギルドはテントを張り、
あるギルドは陣形を組んで待っている。

「まるでルアス城の外側が祭のようだな」

外門の前。
攻めギルド達によって包囲され、
開戦前というのに、
堂々と待機されている。

「・・・・・何よりじゃない」

何よりじゃない。
何がなによりじゃないか?
その攻めギルド達。
その待機する集団の中に・・・・・

ユベンがいるのだ。

王国騎士団 第44番・竜騎士部隊 副部隊長。
『ドラゴニカ・ナイト』ユベン=グローヴァー。
なのにも関らず、
攻めギルドの集団が待機するこの外門前。
ここにユベンは混じっていた。
何故かというと・・・

スパイ活動だ。

「地味だから」
「地味だからアルね」
「地味だからよ」
「地味だしねぇ」
「シュコー・・・・」

あいつらは声を揃えて言いやがった。
"地味だからスパイに持ってこいだ"・・・と。

「なるほど。能力が備わっており、それでいて目立たず行動できる者。理には適っている」

だが・・・
だけど・・・

「何よりじゃない・・・」

地味だからってなんだ。
なんで無敵の44部隊の副部隊長である自分が、
わざわざスパイ活動をしなければならないんだ。

「・・・・任務は任務か・・・」

ユベンはため息をつきながら無理矢理納得した。
自分に言い聞かせた。
「よっ!あんた」
「今日こそ落とそうぜ!」
などと、
そこらのギルドの男が気軽に声をかけてくる。
いやいや、
俺はあんたらの敵だから。
落としてたまるか。

「まぁ実際ここまで気付かれないと・・・逆に落ち込むな」

今回の攻城戦は、
攻めギルドの人数でいうと1000を超えるだろう。
なのに、
なのにだ。
誰一人として「44部隊の副部隊長が紛れ込んでるぞ!」などと叫ばない。
気付かない。
・・・・。
まぁいいか。
・・・それはそれで何よりだ。
何よりじゃないが・・・・

「あっと・・・・それで・・・・」

ユベンは芝生の上で、
懐から書類を取り出し、
目を通す。

「今回の攻めギルド・・・・まぁ中小ギルドが中心か。手強く過ぎるわけではないがその逆でもない。
 名ぐらいは聞くギルドばかりだし、15ギルドから『サンシャイン』と『イニシエーション』か。
 15ギルドから2ギルド参戦というのは悪くとるべきか幸いととるべきか・・・・」

《GUN'S》や、
《メイジプール》、《昇竜会》などの頂点のギルドがないだけマシだが、
ギルド界のベスト15に入るギルドが2つ。
《サンシャイン》と《イニシエーション》
どちらも強力なギルドだ。
たしかに気は抜けない。

「その二つを中心に諜報活動をしてみるか」

そしてユベンは足を運んだ。
開戦までもう数時間といったところ。
もたもたもしていられない。

「なぁ、そこの人。《イニシエーション》が待機している場所はどこだ?」

「ん?何?」
「あぁ、確かあっちの門の近くだった気がするぜ」

「ありがたい」

本当にバレないな。
泣きたくなる。
順調な事が哀しいなんて、
泣きたくなる。

ともかく、
通りすがりの人間に聞き込みをしながら、
ユベンは《イニシエーション》の待機所へと向かった。

「これか」

テントが張ってある。
"ラッド&ウインプス(強くそして儚き者達)"
そう旗に掲げられたテント。
ここが15ギルドが一つ。
《イニシエーション》の本部のようだ。
テントの周りにはギルドメンバーらしき者達が雑談している。
恐らくテント内にはギルドマスターがいるはずだ。

「見張りなどいないが、勝手に入っていいのだろうか」

よく分からないが、
テントの入り口を潜ってみた。
外見と同様、
小さめの作り。
まぁ攻城の待機用に簡易に作ったものだからそんなもんだろう。

「孤独は弱さ。だが、絆はそれを強くしてくれる」

奥に居た者が、
何やら誰にともなく話しかけてきた。

「絆が紡ぐ聖戦の誓いは古からの約束。弱き者は集い、それは強き力となる」

テントの奥に居た者が振り向いた。

「ようこそ《イニシエーション》へ」

盗賊の格好をしたその男は、
そう笑顔でユベンに話しかけてきた。
恐らくギルドマスターだろう。
ふむ。
だが、
悪いのだが、
あまりいきなり言われても対応に困る言葉だ。

「・・・・・今の決まった?決まったか?ヌルッカス」
「ん?決まったんじゃないかディース」
「そうか。ならいいな」

どうやらテントには二人だけのようだ。
それも両方とも盗賊のようだ。
とりあえず奥に居たその男に話しかけてみた。

「あんたが《イニシエーション》のマスター。ディースか?」

「その通りだ。一人で来たのか?客人。孤独は弱さだ。だが、絆はそれを・・・」

「いや、それはもういい」

・・・・。
と、
別に聞きたくもないので失礼に中断させてしまった。
しくじったか。
スパイなのだから、
もうちょっと下手に出るべきだったか。

「・・・・・」

下手に出るべきだった。
ちょっと怒らせてしまったらしい。

「俺の話が分からんなど、怪しい奴」

ディースという男は、
ムチを手に取っていた。
攻撃してくる気か。

「即刻お帰り願おうか!」

「!?」

やる気まんまんだ。
突如ムチをしばいてきた。
ぐんっ・・と、
そのムチはヘビのように伸び、
ユベンへと襲ってくる。

「くっ・・・」

咄嗟に避ける。
ムチは地面に打ち付けられ、
甲高い音を奏でた。

「なかなかいい身のこなしだ客人!だが必死に避ける事だな!
 俺のムチには毒がある。当たってはタダではすまないぞ!」

毒があろうがなかろうが、
当たってはタダではすまないのは見て取れる。
もう一度ディースのムチが飛ぶ。
避ける事に成功したが、
ムチはテントの壁にぶつかり、
テントのその一箇所が弾けるようにヤブれた。

「おいヌルッカス!お前も手伝え!」
「エー」

ヌルッカスと呼ばれたもう一人の男は、
テントの隅で何やらしていた。

「俺、この爆弾とこの爆弾。どっちが丸いか見分けるのに忙しんだよ」

どうでもいいだろ。

「・・・・そうか」

ディースは突如、
そのムチを止めた。
攻撃をやめた。

「それは重要だな」

なるほど。
馬鹿が二人か。
だが事態が収まってよかった。 
スパイ活動をしにきたのに、
事が荒立ってはナンだ。

「失礼した客人」

「いや・・・・」

先が思いやられる。
・・・・何よりじゃない。
だがとりあえず仕事だ。
ツラいものだな。

「ディース・・・さん・・・か。ディースさん。俺は用があってここに来た」

敵にさん付けか。
まぁ任務だからな。

「あんたがギルドマスターのディース。そしてそちらがヌルッカスだな。
 二人の名はよく聞いている。《イニシエーション》の二人の盗賊。
 『ハブとマングース』と呼ばれるムチ使いとダガー使い」

「おいヌルッカス」
「ンー?」
「俺達有名らしいぞ」
「いいよそんなん。俺は今、回した爆弾がいつ止まるか計るのに忙しい」
「そうか」

あの男はスミッコでさっきから何をしてるんだ。
どうでもよすぎる事にしか見えないが。
まぁいいか。
興味ない。
ともかく仕事だ。

「俺の名はユベン」

「ユベン?あの44部隊の・・・」

「あ、いや・・・・」

しくった。
俺としたことが・・・

「いや、ユベンじゃなくユベーンだ。よく間違われる」

なんだそりゃ。
自分でもアホかと思う。
どんなごまかしだ。

「なるほど。ユベーンか。疑ってすまない」

なるほど。
アホか。
アホでよかった。

「それでユベーン。あんたはこの『イニシエーション』の本部テントに何用だ」

「俺は後世に攻城の歴史をまとめる本を作っている。そのために傭兵として参加させてもらった。
 是非とも15ギルドが一つ。『イニシエーション』に取材をと思って訪れたんだ」

「ほぉ」

ディースという男は、
口元に手を当てた。

「・・・・・・」

そして何やら思わしげに考えた後、
いや、
少しニヤついた後、

「おいヌルッカス。俺が歴史の本に載るようだぞ」
「俺は今、片手で何個まで爆弾を持てるか試すのに忙しい」
「そうか」

よく分からんが気に入ってくれたらしい。
諜報活動はうまくいきそうだ。

「それでいろいろと今回の攻城戦について聞きたいんだ」

「ほぉ」

「書き記すから作戦や物資量。あと『イニシエーション』についていろいろ教えて欲しい」

「お安い御用だ」

そんなお安く教えてしまってどうする。
本当に15ギルドの一つなのか?ここは。
ともかく、
ユベンはペンとメモ帳を取り出した。

「『イニシエーション』は絆のギルド。孤独は強さじゃない。弱き者も絆によって・・・」

「それはもういい」

「・・・・」

いや、
謝らない。
全然別に聞きたくないから。

「・・・・・まぁ、今回の攻城については・・・・」

ディースという男は、
『イニシエーション』の人数規模。
職業の割合。
物資量から今回の攻城においての戦略作戦など、
ドンドンと話してくれた。
ユベンは、
「何大事な事ベラベラ話してんだ。アホかこいつ」
と心で思いつつ、
メモ帳に書き記していった。

「・・・・とまぁこんなもんだ」

「ありがたい」

と言い、
ユベンはメモ帳を閉じた。

「凄く参考になった」

「カッコよく書いておいてくれ。例えば・・・」

「弱さも集えばどうたらこうたらだな」

「よく分かったな」

「言いたい事は分からんが、言うだろう事はよく分かる」

「そうか」

「それでだディースさん」

「ん?」

「次に《サンシャイン》に取材に行きたい。出来ればどこに待機しているか教えてくれないか?」

「あぁ・・・あいつらはたしかなんとも言えない中途半端なところに集まっていたな。
 東よりだが少し南でもあり、かと言って目印もない・・・なんともよく分からんとこだ。
 まぁ奴らの考えている事を理解する方が頭が痛くなる。変人の集まりだからな
 だが《サンシャイン》は同盟ギルドだ。位置は把握している。案内しようか?」

「そうしてくれるとありがたい」

「おいヌルッカス。お前もついてくるか?」
「いーや。俺は今、爆弾の爆発音が本当に「BOMB!」って聞こえるかどうかで忙しい」
「そうか。なら行こうかユベーン」

呼ばないでくれ・・・。
その名前で・・・。

ともかく、
ユベー・・・ユベンは、
ディースに導かれ、
テントから外に出た。

「こっちだユベーン」

ディースが導く方向へ、
とりあえず付いていく。
大人しくしているのが一番だ。
だが途中、
背後で音がした。
テントの方から爆発音だ。
「BOMB!」と音がした。
テントが弾け飛んだ。
馬鹿は死ななきゃ直らないか。

「ここだユベーン」

言われて前方を見ると、
テントも張らず、
芝生の上でゴロゴロしている者達がいた。

「こいつらが《サンシャイン》か」

見たところ、
人数はかなり居る。
さすが15ギルドの一つとでも言うべきか。
なんだあれ。
学生服で歩いてる女がいる。
いや、
変な奴多いな。
だが15ギルドの一つなのだから、
見た目で判断すべきではないか。

「よぉシャイダー」

「ん?」

ディースが声をかけた男。
その男が振り向いた。
シャイダー。
そう呼ばれた。
ならばこの男が《サンシャイン》のマスター。
シャイダーか。

「あぁディースか」

ギルドマスターの貫禄があった。
一見して分かる。
・・・・。
いや、
なんでサンダル履いてるんだこいつ。

「サンダルは正義だ」

いや、聞いてない。
こいつも変人か。
まぁサンダル男、もといギルドマスター、シャイダー。
何はともあれ会うことができたのだ。
何よりだ。

「なぁディース。サンダルは正義だよな」
「そうだな」

どうでもいい。
誰もサンダルについて聞いていない。

「まぁサンダルなんてどーでもいいか」

そうだ。

「なんかヒマだな。違うゲームしようぜ」

もっとマイソシアを楽しめ。
ギルドマスターだろ。

「あんたがシャイダーさんだな」

「ん?なんだあんた」

やっとこさ気付いたのか。

「シャイダー。こいつはユベーンって男だ」
「ユベーーン?」
「分かりにくい間違いをするな。ユベーンだ」

いやまぁどっちも違うんだが。

「ユベーンは今回の攻城戦について取材してるらしいんだ。
 それで《サンシャイン》も取材したいんだってよ」
「取材?そんな事よりECOやろうぜECO」

なんだそれ。
聞いたこともない。
食えるのか?

「シャイダーさん。まぁ軽くでいいんだ。取材受けてくれないか?
 今回の攻城についてはディースさんから大体聞いて把握している。
 だから《サンシャイン》について教えてくれるだけでいい」

「・・・・面倒だな。誰かに任せるか。おいパーム」

シャイダーは、
そこらに集まっているギルドメンバーの一角に向かって声をかけた。
パームと呼ばれた男。
そこにいたのは、
パンダの格好をした男だった。

「あん?なんだよウッセハゲ」
「相変わらずお前はツンデレだな」
「ウッセ!ネッテロー!」

なんだこのパンダ男。
いきなりDループをしかけてくる勢いだ。
というか、
このシャイダーという男はギルメンにこんな口きかれて、威厳はないのか?

「まぁいいからパーム。お前にしか頼めない仕事があるんだ。パームさんは凄いからな」
「やっぱか!」
「うむ」
「んでなんだ?はよいえバーカ」
「こっちのユベーンって男が《サンシャイン》について聞きたいらしい。
 お前がギルメンの事とかいろいろ教えてやってくれ」
「ネーヨ」
「やってくれ」
「いや、お前やれよ」
「俺はいろいろ忙しいんだ」
「お前が忙しいわけないだろ。このニート」
「もう俺は昔の俺ではない」

シャイダーは何かを思うように天を見上げた。

「一度はもう、何も失うものはなかったが、今の俺には失ってはいけないものがある」
「カッコつけて言うな。仕事やめて無職してまた仕事しただけだろ」
「・・・・・・普通に転職って言え」
「まぁいいわ。ヒマだし。基本こーいうのはノリだよノリ。
 俺が《サンシャイン》案内しちゃる。ニーダーの代わりにな」
「ニーダー言うな」
「ニーダーじゃねぇか」
「ニーダーです」
「まぁさっさと終わらすぞ。もうすぐベギャルダ・タコルの試合があるんだ」

「ん?サッカーチームかなんかか?これから攻城戦だろ」

ってかタコルて。
どんだけマイナーな地区なんだ。
恐らく二部リーグに違いない。

「いや、こんなんどーでもいいし。ベギャルダのが大事だし」

「・・・・・それは何よりだ」

「ほれ、さっさとついてこいボケ」

「・・・・・・」

何やら口の悪いパンダ男に案内されるはめになった。
ここまで案内してくれたディースとシャイダーは、
何やら雑談を始めた。
ギルドマスター同士、
いろいろつもり話しでもある・・・・
いや、
どうでもいい話が聞こえてくる。
いやもうサンダルはどうでもいいだろ。
いや、絆がどうこうは十分聞いたって。
あそこの話聞いてるよりマシか。

「おいユベーン。まずこいつだ」

「ん?」

あぁ、
ギルメンの紹介だ。
何やら修道士の身なりをした男がいる。
《サンシャイン》のメンバーの一人か。

「こいつがレンジな」
「チンッ!」

レンジと呼ばれた修道士は、
親指を立てて「チンッ!」とか言い出した。
なんだこいつは。
いや、
だが名前ぐらい聞いたことある。

「こいつこんなだけど強いから」
「チンッ!」

「・・・・この男はそれしかしゃべれないのか?」

「ん?そんなことねーよ。なんとなくなんかの陰謀でこんなキャラになってんだよ。
 「チンッ」以外にもなんか言えるだろ?なんか言ってやれレンジ」
「俺はバイクが好きだ」

「・・・あそう・・・」

そんなどうでもいい事しゃべるならずっと「チンッ!」って言ってろ。

「チンッ!」

それはそれでウザい。
まぁでも強いというならメモっておこう。
たしか以前も単独で奥まで乗り込んできた覚えがある。
見た目で判断すべきではないか。
いや、
軽蔑はしておこう。

「んで次な。さっさといくぞハゲ」

本当に口の悪いパンダだ。
だが、
我慢だ。
・・・何故我慢してまでこんな仕事を・・・
いや、
任務だ・・・
そう思えば・・・何よりじゃないか・・・

そして少し移動し、
パームというパンダ男は、
ユベンを一人の騎士の所へ案内した。

「こいつがウェヴァウヮな」

「・・・・は?何?・・・ウェバ・・ヴァ?何?バウア?」

「ウェヴァウヮな」

全然分からん。
ニュアンスが分からん。
何語だ。

「こいつ二人分だから。合体してるから」

「・・・・何だって?」

「人間二人合体してウェヴァウヮだから」
「ウェヴァウヮだ」

「いや、一人だろ」

「ウッセ!二人いんだよ!」
「ウェヴァウヮだ」

・・・・。
まぁどうでもいいか。
この騎士が実は二人だろうが一人だろうが。
いや絶対一人だろ。
なんだ?
二重人格か何かか?
まぁどうでもいいか。
スパイ活動的には重要そうだけど、
まぁいいか。
考えると頭が痛くなりそうだ。

「んで次」

「なんだこの女・・・・攻城前なのに酒飲んで食って・・・・」

「こいつがモジャな」
「痛いモジャっ!」
「次」

パームという男は、
そのモジャという女を蹴飛ばしただけでもう通り過ぎた。
そんなんじゃ何も分からん。

「はよこいハゲ」

だが案内されるしかないようだ。
というか案内なのか?
拉致気味につれてかれてるだけに見える。

「んでこいつがファバッリ」

次もまた女だった。
その女はこちらに気付き、
いや、
ユベンに気付くと振り向き。

「斬首しろ」

と、
いきなり命令してきた。

「・・・・俺の耳がおかしくなったのか?初対面にいきなり首を切れを言われた気がしたんだが・・・」

「斬首しろ」

「・・・・・」

こいつは危なそうだ・・・。
メモっとこう。

「斬首しろ」

「し、しつこいなあんた」

「まぁファバッリの半分は優しさで出来てるからな」
「切腹でも可」
「ほら、優しいだろ」

どうにでもしてくれ。
とりあえず俺はこの攻城戦でこいつには近づかないと誓った。

「まぁここまでの奴も戦力的な人間なんだよな?」

「おう」

「あと主要の戦力はなんだ?」

「あー、いろいろいるけど・・・あー、あー」

「・・・・なんだ?」

「めんどくなってきた」

「・・・・・」

「もうよくね?」

「・・・・・」

「まぁよくなくてももう案内しねーけど」

「・・・・・そうか」

「戻っぞ。さっさとこいハゲ」

なんかペースに乗せられたままだな。
ともかく、
パンダ男につれられ、
シャイダーとディースの元へ戻った。

「はい俺おかえり」
「おぉ、おつかれ」
「おっかれさん」
「はい」
「・・・・ん?なんだその手」
「マニーマニー」
「・・・・」
「50万グロッドな。そんくらい払えニーダー」
「シャイダーだ」
「ニーダーだろ」
「ニーダーだ」

そう言い、
シャイダーは金貨袋を放り投げた。
あんなんで50万グロッド発生していいのか。
それだけ資金もあるギルドという事か。

「で、ユベーン。いい取材は出来たか?」

「ん?・・・まぁ・・・」

「俺の名はディース」

「あんたはもういい」

「そうか」

変に物分りがいいなこいつ。

「用事終わったんならエコやろうぜエコ」
「何それ?食えるの?」
「食えるよ」
「ってかもうすぐ攻城だぞ」
「んじゃベギャルダの試合ももうすぐか」
「攻城出ろよ」
「出る事に意義があんだぞ」
「別によくね?」
「別にいーな」

これが今回の攻城の頂点。
《サンシャイン》と《イニシエーション》のトップの者達なのか?
いまだに理解できん。

「あぁ、そうだ。ディースさん。シャイダーさん」

「俺がディースだ」
「なんだ?」

「あんたらのギルドが仕切ってて、それで残りのギルドなんだが。
 あぁいや、大概は名がそこそこ通ってるギルド達なんだが一つ知らなくてな」

「それはそれでいんじゃね?」

「いや、教えてくれ。この《ボトルベイビー》ってギルドだけ情報がなくてな」

「あぁバカサイダーのとこじゃん」
「だな」
「俺ら両方とも同盟ギルドだから分かるぜ?」

「ん?あんたらみたいなギルド両方と同盟を組んでるようなギルドなのか?」

「ってかサイダーは俺の弟だしな」

と、
シャイダーが言う。
ふむ。
《サンシャイン》のマスター、シャイダー。
その弟がギルドマスターのギルド。
それが《ボトルベイビー》か。

「血は繋がってないだろ」
「それでも俺達ダー・一族は不滅だ」
「滅びてくれよマジ」
「ってか死ね」
「今すぐ死ねばよくね?」

よく分からんが、
とにかく繋がりがあるのか。
今回の2大ギルド両方と親密な繋がりがあるようだ。
そんなギルドが情報無し・・・か。
せっかくの諜報活動だ。
むしろこういうところを探っておいた方がいいな。

「そのサイダーって男のいる《ボトルベイビー》のところへ案内してくれないか?」

「あん?サイダーならさっき俺がパージしたぞ」

パンダ男が言う。
何って?
攻城前に、同盟ギルドのマスターをパージフレアを燃やしたって?

「また燃やしたのか?」

しょっちゅう燃やされてるのか。
身内に。

「いいだろサイダーだし」
「サイダーだしな」
「死ぬのが趣味みたいな奴だしな」

「・・・・そのサイダーってのはどんな奴なんだ?」

シャイダー、
ディース、
パームの3人が、
「ん?」と顔を見合わせ、
そしてどーでもいいような表情に変わって話し始めた。

「期待しないほうがいいな」
「ザコだザコ」

「ザコって・・・仮にも1ギルドのマスターだろ?」

「いや、ほんとザコだ」
「謙虚じゃなくザコ。ほんっと正真正銘弱い」
「武器ウッドダガーだしな」
「カツオブシだしな」
「素で忘れてカツオブシで攻城出るしな」
「フル装備でも耳とか片耳だしな」
「なんだっけ?指輪の平均3.5リンだっけ?」
「盾とかいまだライドだしな」
「装備自体、ほとんどもらいもんの乞食野郎だぞ」
「乞食だな」
「金も無けりゃ金の使い道もないし」
「ゲート買う金が無くてルケシオンから帰ってこれなかったり」
「狩り行かずに溜まり場篭ってるニート乞食だな」
「だから強くなんねぇんだよな。やっとこないだ蜘蛛覚えたんだっけか?」
「長かったぜぇー。俺ら《サンシャイン》居なけりゃ達成してないからな」
「ってか《ボトルベイビー》自体《サンシャイン》がないと成り立ってないからな」
「ギルドごと《サンシャイン》に寄生してるスーパーパラサイトギルドだからな」
「あいつソロ狩りできないんだっけか?」
「ドロイカンをソロで倒せないとかなんとか」
「こないだ日記でマニアックから逃げてたぜ?」

・・・・なんだそいつ。
上辺の話じゃなく、
本当に正真正銘弱いのか。
一人で狩りもできないって・・・ギルドマスターなのに。

「・・・・まぁだが、攻めギルドの情報に一箇所穴を空けるわけにもいかないしな。
 できれば彼ら《ボトルベイビー》の元へ案内してくれないか?」

「案内っつーか」
「すぐ隣で集まってるからな」
「そういやシャイダー、サイダーらの配置ってどうなったんだ?」
「ん?いや、別に配置とかあいつらに指定しない。無駄なの分かるだろディース」
「まぁそうだな。前の攻城の時も俺とかシャイダーでいろいろ教えてやったのに、
 何も理解してないからな。サボテンに説明でもしてやったほうがまだマシだ」
「いや、俺らは攻城のヒマ潰しに《ボトルベイビー》を参加させてるから。
 《サンシャイン》の総力を使うのはあいつらをイジめる時だけだ」

残虐するために同盟ギルドを参加させているのか。
外見以上に怖いギルドかもしれない。

「んじゃ俺今回も開始と同時にサイダーをパージすっから」
「お前はベギャルダの試合があるんだろ」
「あぁそうか。んじゃサイダーとかどうでもいいな」
「あぁどうでもいいな」
「見かけたらついでに殺せばいいな」
「まぁとりあえずユベーンのために俺とシャイダーで紹介してやるか」
「隣に行くくらいならまぁいいか。パームも来るか?」
「んじゃノカンクラブとってくる」
「必要だな」
「だな」

どう必要なんだ。
とりあえず、
ユベンは、シャイダー、ディースという二人のマスターに導かれ、
隣へ移動した。
本当に隣だ。

「あぁユベーン」

「なんだ?」

「紹介はするが、まぁ遠目に見るぐらいがいいぞ」
「だな。俺達《サンシャイン》は実力の伴った変体集団だとすると、
 あいつらは実力の伴ってない変体集団だ。馬鹿が移る」

それはただの変体だろ。
ってかあんたらも自覚してんのか。
いっそうタチ悪い。

「まぁあいつらは全員揃って何のためにマイソシアにいるか分からない」
「いや、まぁ《サンシャイン》にイジられるためだな。
 世話してやってるんだ。ギブ&テイクみたいなもんだ」

ある意味奴隷集団か。

「だからみんなでエミルやろうぜエミル」

だからなんだそれは。
聞いたこともない。

「お、いいとこにあいつがいるじゃないか」
「だな。《ボトルベイビー》を知りたいならあいつがいい」

「マスターのサイダーか?」

「いや、あいつは役立たずだ」
「戦力としても地位的にもギルドの最下層だ」

何故そんなものがギルドマスターをしている。

「何せサイダーは弟子が4・5人いるが、全員師匠のサイダーより強いからな」
「弟子に何も与えず、逆に弟子アイテムを貰ってる。その上名声を得ているなんて前代未聞だ」

いや、
もうそいつはどうでもいい。
とにかく、
そいつじゃなく、
その《ボトルベイビー》について紹介してくれるという男が優先だ。
・・・・。

「・・・・あいつか?」

ディースとシャイダーが指差した先の男。
そいつはなにやら、
物陰に隠れていた。
だが丸見えだ。
紫オオカミ帽子を被っている戦士のようだが・・・
・・・・なんだ?
・・・・なんであいつネギを持ってるんだ?

「あのネギを持った男が紹介してくれるのか?」

「あぁ」
「あいつはシャラマンダー」
「ネギ男だ」
「ネギ臭くなるから気をつけろ」

ネギ臭くなるのか。
ネギ男なのか。
だがそのシャラマンダーという男。
なんでネギを持って隠れて・・・
ん?
居ない。
さっきまでそこに・・・・

「見切った!!」

突然、
シャラマンダーという男は、
そのネギでユベンを引っ叩いてきた。
当然のようにネギは根元から折れて飛んで行った。

「・・・・・・・」

ネギ男、
もというシャラマンダーという男は、
折れたネギを見つめ、
投げ捨てて背を向けた。

「まだまだだな」

そしてどっか行ってしまった。
なんだ。
いきなりネギで叩かれてどっかいってしまった。
分からん。
分からんがネギ男という呼び名は凄く納得した。

「いや、ネギ」
「こいつに《ボトルベイビー》を紹介してやってくれ」

「ん?」

そのシャラマンダーという男は振り返った。

「ネギだけで十分ですよ」

「それは漫画が違う」
「間違ってないが違う」

「なんだよシャイダーとディっさんじゃないか。なんか用か?」

「こっちのユベーンという男が《ボトルベイビー》について知りたいそうだ」
「いろいろ教えてやってくれ」
「ユベーン。こいつがシャラマンダー。実質《ボトルベイビー》の核だ」

「ん?核というならば普通マスターとかを表すだろう?」

「マスターがゴミだからな」
「クズだからな」
「実質このネギ男で成り立っている」
「《ボトルベイビー》の設立資金もほとんどシャラマンダーが負担した」
「そんでもって能力も上々、横の繋がりも多い」

いや、
むしろどう考えてもこいつがマスターだろ。
恐らくオフィサーなのだろうが、
なんで・・・

「なんであんたみたいなのがマスターになっていないんだ?
 聞いた感じだと、設立自体あんたがやって頂点に立つ資格もあんたにあると思うんだが」

「いや、メンドいしな」

本音だな。

「しゃらくせぇ」

なんだそれは。
口癖か。
流行らんぞ。

「ネギくせぇな」
「ネギくさいな」

「違う。シャラくせぇんだよ」

このシャラマンダーという男もよく分からん。
ネギがトレードなのは分かった。

「まぁ大事な攻城戦とかもこのシャラマンダーのが役に立つぜ?」
「ネギだけどな」
「メダルって何?属性って何?とか言ってるギルマスより話は出来る」

・・・。
これを聞くと、
部隊長という立場と違い、
ギルドマスターという立場は別に能力が備わっていなくても出来るものなんだな。
と思う。
いや、
サイダーという男を標本に考えると世のギルドマスターに失礼か。

「見切った!」

「・・・・・」

またいきなりシャラマンダーという男がネギで叩いてきた。
なんだこの男は。
どこから新しいネギを取り出した。
体からネギが生える体質なのか?

「しゃらくせぇぜ」

流行らんて。

「まぁそれらを聞くとなんだ。《ボトルベイビー》というギルドはどうやって生まれたんだ?
 想像するに、シャイダー率いる《サンシャイン》の奴隷ギルドとして、
 シャイダーの義弟のサイダーを中心に作成されたギルドなのか?」

「その通りだ」
「ウソつけ」
「あながちウソでもない」
「現状はな」
「いやまぁ俺とサイダーは「名前似てるな」みたいな理由だけで仲良くなった」

物凄く魅力のない理由だな。
サイダーとシャイダー。
名前が似てるだけって。

「んでもって《サンシャイン》と《ボトルベイビー》の溜まり場がたまたま隣だったからだ」
「お前ら近いよな」
「一本木を挟んで隣だからな」
「境目ないと一緒だな」
「運命だな。気持ち悪ッ」
「寄生生物の団体が隣にいるなんて考えたくないな」
「まぁそういう事で偶然と偶然が重なって《ボトルベイビー》は《サンシャイン》の寄生ギルドになった」
「同盟っていうかお前らが寄生された感じだな」

「じゃぁ《ボトルベイビー》は《ボトルベイビー》として生まれたわけか。
 ならそれぐらい仲のいいギルドってのは何よりなんじゃないか?」

「うむ。《サンシャイン》と《ボトルベイビー》の活動は、
 もっぱら麻雀だ。ハンゲームという店でよくやってるからヨロシク」

知るか。

「最初は俺とサイダーを中心に作られたわけなんだが」

ネギ男が思わしげに言う。
いや聞いてない。

「ある日、俺がソロで狩りしてたんだネギ」

なんだその語尾は。
無視しとこう
だが聞いてもいない話を、
ネギ男はどんどんと話す。

「そこに全く見知らぬサイダーという男が勝手に混じってきたんだ。許可もなく」

「・・・・・」

「経験を勝手にむさぼっていったネギ」

「・・・クズじゃないか」

「本人はまぁ・・・よかれと思ってやったらしいがクズだな」

「・・・・お前ら・・・ひょっとすると仲良いわけじゃないんじゃないか?」

「いや、そんなことはないぞ。例えば俺は最近結婚したわけなんだが」

「何よりだ。おめでとう」

「しゃらくせぇ」

「んで?」

「子供の名はサイダーが付けた」

「・・・・・は?実子の名をか?ただのギルマスがか?」

「実子の名をだ。俺は男の子が生まれたら雷の牙と書いて"ライガ"と名付けたかったんだが」

「センスないな」

「うむ。学校でイジめられるとかギルメンにいろいろ言われ、
 罵倒と罵声の嵐をあびせられた挙句、却下された」

「周りは正しい」

「結局女の子が生まれた。俺は美しき如くと書いて"ジョビ(如美)"と名付けたかった」

「・・・・・リアルで?」

「リアルで。だが嫁と実母に却下された」

「・・・・嫁と実母は正しい」

「結局サイダーが「男が雷でライガなら、女の子は風でフウカにしたら?」と言ったのが、
 なんとなぁく頭に残っていたせいで、俺の子はフウカになった。
 ぶっちゃけサイダーの事なんて全然覚えてなかったから俺が付けた気でいた」

「・・・だがまだマシな名前だ。偶然とはいえよかったじゃないか」

「いや、だがな。字画がな。字画が大事なんだ子供ってのは」

「酷い名前付けようとしていた割に字画は気にするのか」

「字画は大事なんだネギ!」

「字画よりネーミングセンスに気をつけろ」

「・・・まぁともかく、結果的にはサイダーが名前を付けた事になった」

「そうか」

「名付け親として、サイダーは俺の子の親権の10%をよこせと言ってきている。却下した」

「お前は正しい」

「しゃらくせぇ。でも可愛いんだコレが!俺の子!俺は15まで一緒に風呂に入るぞ」

「おいネギ」
「お前らに変な縁があるのは分かったから」
「お前の子が可愛くないのは分かったから」
「ユベーンにギルメンでも紹介してやってくれ」

「変なのしかいないぞ?」

「知ってる」
「知ってる」
「むしろ変じゃない=個性がないと思ってるお前らを軽蔑する」

「俺はマシだけどな」

「ネギのくせに」
「シャラマンダーのくせに」

「しゃらくせぇ」

「俺のがマシだろ」
「いや、俺のが」

お前ら全員似たり寄ったりだ。

「まぁ付いてきな」

ネギ男シャラマンダーに導かれ、
ユベンは《ボトルベイビー》の待機区域を見て回る事になった。
シャイダーとディースの気軽さを見ても、
友好的なギルドなのだと分かる。
いや、
むしろ見下してるぐらい気軽だ。

「向こうに見えるアフロ男がモモタァだ」

シャラマンダーが指をさす方に、
アフロ頭をした男がいた。
というか、
その男よりもこのネギ男がネギ臭くて鼻を塞ぎたくなる。

「昔のパンクロックが大好きだが、時代に付いていけない懐古厨だ。
 そんでもってモモタァはなんかサイダーと一緒に・・・・なんだっけ?
 アッシュ・・・・キャン?ともかくアッシュなんたらとかいう雑誌を出版してる。
 なんか絵を加工したり、フラッシュとかいうよく分からんもんを作るのが得意だ」

「はよ新しいフラッシュ作れよ」
「掲示板のアイコン増やせ」

「本人に言ってくれ」

どうやら、
動物園的に説明してくれるだけのようだ。
直接話をさせてくれるわけではなさそうだ。
まぁこんな変なギルドの奴と話したくはないが。

「まぁモモタァの得意技は好奇心ですぐいろんな事を始めるが途中で投げることだ」

はよ増やせ。
完成させろ。
何をかは知らんけど。

「んで次」

シャラマンダーが他を指差す。

「あっちでゴロゴロしてる女がイェイイェイだ」

「なんか魔道画面をまじまじと見てるな」

「イェイイェイはアニメのデバック作業に忙しいからな。
 週に十数本というアニメを選別してる。仕事ではなく、本人の趣味であり義務だ。
 周りの人間はイェイイェイが普通だった頃から知っているから、
 「なんで止められなかったんだ・・・」とイェイイェイの進化を嘆いている」

「人間が変わる過程を見てしまったわけか」

「今はもう放置だ。友好的だが周りの意見を取り入れない凄い奴だ。で、次」

今度はその横にいる男を指差す。

「似たような事をしている男。あれがピクルスマンだ」

「凄い名前だな」

「通称ぴーたん。バンドマンとしてフラフラしている。そしてニコニコしている。
 今は曲を演奏することよりも、本棚を毎日漫画で埋め続けながら深夜に働く日々だ。
 そして奴は眼鏡が正義だと思っている。女に眼鏡をかけさせれば科学反応が起きると信じている。
 眼鏡には攻撃力があると思っている。今ではバンド活動よりも眼鏡っ娘を嫁にすることで必死だ」

「ある種のロックだな」

「話題が豊富で空気を読める奴なんだが、自分を見つめなおせないのが難だな」

シャラマンダーは、
また別の場所を指差した。

「あその女がシダックス。昔の仕事先の名前と関係しているらしい」

「キャリアウーマンか?」

「そうとは限らないが、そこらの男よりバリバリ稼いでいる。羨ましい。
 噂は膨張していき、いまでは島を一個買えるくらいの蓄えがあると噂されている。
 だがそのくせ自前のコンピューターは爆発寸前だ。もう買えばいいのに」

「・・・・ケチなのか?」

「いや、そういうわけじゃないが・・・というかそういう言葉を軽々しく口にしない方がいい。
 シダックスが作ったコンピューターウイルスのせいで、町が一つ地図から無くなった」

「・・・冗談だろ?」

「ならいいけどな。最悪、目をつけられたら戸籍がなくなると思え」

関らないほうがよさそうだ。

「んであっちに居る関西弁の男がバーチャル。通称チャル。
 奴はシモネタが正義だと思っている。会話とは卑語の伴う者だと考えている。
 卑猥な言葉が大好きで、人のプライベートとは公開するためにあると考えている。
 チャルとの会話はある種のイメクラだと思っておいた方がいい」

「・・・・逮捕していんじゃないか?」

「まぁもっぱらペア狩りが好きな援交人間だが、とにかく深夜に気をつけろ」

・・・・・。
本当にロクな人間がいない。
ただ変体が生息しているだけに見える。

「あっちにいる女が傭兵のリー」

「傭兵?」

「彼女は固体値が高く、それに比例して人をイジるのが好きだ。
 どん底までイジり倒した後、反論しても「ナイナイ」と一蹴される。
 とにかく人の不幸が大好きだ。人の不幸をハチミツシロップだと思っている。
 誰かの人生が破綻しようとも「バカス」の一言で薙ぎ払う女だ」

「まるで死神だな」

「だが気をつけろ。奴はテンキー操作でクッパもゴウキもお手の物だ」

聞いたことない単語だ。
あまり深く聞かないでおこう。

「あっちで今にも帰りそうなのがコキャだ。通称、午後のコキャだ。
 コキャはオフィサーとしてかなり仕事をしてくれる人間だが、
 ・・・・あぁー・・・・シンデレラ落ちって知ってるか?俺らの中で出来た言葉なんだが」

「いや、知らんな」

「シンデレラの如く日付変更線。午後12時に帰る事を言う。
 奴はどんな理由があっても大概それを厳守する。まさに午後のコキャだ。
 故郷が雪国のせいでマイソシアがいたくお気に入りだ。そのくせ馬鹿だ」

いや、
例えが分からん。
結論的には馬鹿なのか。

「あっちで絵を書いてる女がプルコギだ。絵がうまい。プロだ」

「それはいい特技じゃないか」

「活動的だが苦手なものは親父。実の親父が来ると逃げるように帰っていく。
 地震・雷・・・・とはよく言ったものだ。・・・・・そして男の子と男の子が大好きだ。
 なんとか水許伝とかなんとかの錬金術師があれば毎日がご馳走だ。
 まぁ本人は美化して説明しろと言うだろうが、この紹介自体が拷問なんだ観念しろ」

「誰の意見だそれは」

「さぁな」

まぁいいか。

「そんであっちにいるのがエンだ」

「ちょっとまて」

「ん?」

「・・・いや・・・・初めて見る奴だが、その名前はよくないんじゃないか?
 ・・・・・・どうよくないかは説明しづらいんだが・・・危ない気がしてな・・・・」

「エンはエンだ。間違いなくエンだ」

「そうか・・・」

「エンは中期に入ってきたレギュラーにも関らず、紹介文が無かったような扱いの人間だ。
 まず永遠に続く中二病だ。最近はマシになってきたが、とにかく空気が読めなかった。
 だがまぁなんだ。中二病患者が自分の中二病に気付いただけで中二病には変わりない」

ふむ。
だが、
その中二病という病に関しては、
サイダーという男も酷いものだと思う。
なんとなくでしかないが、
なんか確信がある。
それでエンという名前は大丈夫なのか?
いや・・・何が大丈夫かどうかは知らないが・・・。

「あっちに男と女がいるだろ?あれが姫華と団長。通称ポコとエロシだ」

「名前と通称に共通点がないが」

「なんかサイダーが昔、本人らに使うならこの名前でと言われたそうだ。
 だがあまり聞かないでやってくれ。サイダーもうろ覚えだ」

「まぁなんでもいい」

「奴らは・・んと・・・凄い。なんか凄い。とにかく凄い」

「全然伝わらないんだが」

「とにかく凄い」

「言ってる意味は分からんが言いたい事は分かってきた」

「でもまぁ、こんなもんか。全員紹介していたらキリがないからな。
 俺もネギの飼育と子供の保育に忙しい。特にネギが採取時期でな」

「ネギ自作かよ」

「タマネギだけどな」

「ネギならなんでもいいのか・・・」

「ネギは凄いぞ。最近ネギを持った機械の女が歌うのが流行らしいが、それも俺の影響だ」

言うのは自由だ。
だが絶対違う。

「ディっさん、シャイダー。こんなもんでいいだろ?俺らのギルドなんて紹介してどうすんだよ」
「ん?悪い。途中から寝てた」
「というかあまりに興味がないからどうでもよくなった」

それは俺もだ。

「もう攻城とかいいしECOやろうぜECO。時代はECOだ」
「それももう時代じゃないだろ」
「っていうかシャラマンダー。俺の弟はどこいった。サイダーだサイダー」
「あいつになんか用あんのか?」
「あいつに用があるっつったら決まってんだろ」
「鑑定か」
「鑑定だな」
「それ以外に利用価値ないしな」

鑑定しか利用価値のないギルドマスターってなんだ。

「いや、そんな事ないだろ。パシりにも使えるし、ゴミ箱にもなる」
「あぁそうだな。物の価値が分からんからなんでもかんでも大事にしまっとくからな」
「雪球なんてカバンに入れてるのあいつぐらいだ」
「こないだまでエンチャしたことない奇人だからな」
「クソ付与ゴミアイテム投げても気付かず喜ぶぞ」

自動鑑定機か。
その上パシりも出来て、
ゴミ箱にもなるのか。
ある意味役に立つな。
文房具レベルで。

「ってかさっきパームが燃やしたつってただろシャイダー」
「あぁ、じゃぁ病院か」
「ん?サイダー帰ってきてるのか?数時間前、ギルド狩りで火山に置き去りにしてきたはずだが」

もうそいつどうでもいいよ。

「まぁいいか。ユベーンだったか」
「そのうち帰ってくるだろうから、それから取材してやってくれ」
「迷子になってなけりゃな」

「会ったことないから見ても分からんな・・・」

「大丈夫」
「バグラーチュニック着て、紫狼帽子でカツオブシ(ウッドダガー)なんてそういない」
「あと顔みりゃ分かる」
「(゚ロ゚;)!!みたいな顔してる」
「(゚ロ゚;)!!・・・こんなんだな」

そうか・・・。
どんな人間だ。

「いや、話で大体分かったからもうそこは諦める」

別に会いたくもないし。

「おぉ、丁度WISきたわ。・・・・ん?・・・バーカ」
「なんだって?」
「ミルレスの薬屋が分からんくて帰れんだってよ」

「・・・・・・・・・」

「あとカバンの中にカバンを入れる方法教えてだってよ」

もういい。



ユベンはそこで切り上げ、
見つからないよう、
ルアスに戻ったあと、
ルアス城へとコッソリ移動した。


「お帰りユベン」
「ヘヘッ、スパイどうだったスパイ」
「見つからなかったのは聞くまでもないないアルね」

「俺がそんなヘマすると思ったか?」

「ヘマしなくても見つからねぇよ」
「地味だから」
「地味だしな」

「・・・・・・」

「で、どうだったんだよ」
「今回の相手は強敵か?」
「調べ上げてきたんだろ?」

「まぁよく分かったよ」

ユベンは書類を放り投げる。

「よく分からん連中だって事はな」





******注意******

この短編は、
実際のSOADと全く関係ありません。

本編と世界はリンクしていませんし、
実際のキャラとは無関係です。


出てくるキャラも性格変更されております。
なお、
当作品はフィクションであり、ノンフィクションです

**************




                 






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