日も高く上り詰めた、昼間時。

太陽は今日も元気に核融合を繰り返し、輝き続けている。

少しは休めばいいのに・・・・太陽には休日という物が無いのだろうか?

そんな中、ルアスの町の一角からこのお話は始まる。




ここはルアス99番地、無法者が大勢居る場所だとされている。

とは言っても、今や国中が無法違いと化している今では、

悪の町と比べるとそんなに酷いわけでもない様にも見える。

そんな中、アレックスとドジャーは何をしているのかと言うと・・・・

「はいはーい、皆さん両手挙げてくださいね〜」

「オイ、そこのテメェ。スパイダーカット使って逃げようとするんじゃねぇよ。」

逆カツアゲをしていた。



「いやぁ、今日は結構稼げましたねぇ。」

ホクホクの笑顔で、アレックスは膨らんだ財布を抱きしめている。

「しかし、あいつらも学習能力無いよな。俺に適う筈がねぇのによ。」

「いいじゃないですか、ドジャーさん。その分おいしいものが食べれるんですから。」

「まぁ、その点は否定しないがな・・・・って、何だこりゃ?」

一冊の本を片手に、ドジャーは繭をひそめながら読んでいた。

「何ですか、それ?スペルブック・・・・じゃあ、なさそうですね。」

「あぁ、そうだと思ったのによ・・・・

ご丁寧に鍵まで付けて、開けた意味無いじゃねぇかよオイ。」

一見スペルブックに未間違えそうなその本は、どうやら誰かの日記帳らしい。

ご丁寧に鍵まで掛かったその日記は、その字体からして女性の物みたいだ。

「ドジャーさん・・・・僕は、乙女の秘密とやらになんか興味はありませんよ?」

白い眼で、アレックスはドジャーを見つめる。

「いや、俺だってそんな趣味はねぇよ。それに、これ持ってた奴は男だ。

コイツを持っていた奴が、どこぞの金に困った馬鹿から買い取ったんじゃねぇか?」

「まぁ、どうでもいいですけど・・・・」

「えっと、何々・・・・?

○月◆日:
マレックスが相変わらず私の部署にやって来る。
何をするのかと思えば、私の飯をタダで食べに来たらしい。
この部署を何だと思っているのだろうか・・・・
本人曰く、「ここのご飯がおいしいから」らしいが・・・・
ここを食堂か何かと間違えているのだろうか?一度正した方がいいのかも知れない。


・・・・だってさ、マレックスってあのカニだろ?変な名前をした奴が居るんだな。」

ドジャーはアレックスのほうを向きながら笑い出した。

「あのですね、ドジャーさん。僕の名前はアレックスですよ。

マレックスなんかと一緒に・・・・って、今何て言いました?」



それは―――


「○月☆日:
マレックスが部隊を引き連れ、ティラノの肉を持ってやって来た。
唖然としていると、これで料理を作って欲しいらしい。
・・・・正気なのか?時々彼のその不思議な行動には私も付いて行けなくなる。
デザートにチャーハンを頼むのはきっとマレックス位だろう。
「食の組み合わせは無限です」だとか言っていたけど・・・・
はっきり言って、食物に対する冒涜なのかも知れない。」


一見、何処にでもある様な、普通の日記だった。


「コイツ、マレックスの事しか書いて無いな・・・・他に書く事無かったのか?」

「ま、まぁまぁ・・・・あまり他人の日記を見るものじゃないですよ。」


まぁ、赤の他人の日記帳なんて読んでも面白い事は何一つ無く、

いい加減飽きてきた調度その頃、ある日を境に内容が一変していた。

それは、今から一年ちょっと前―――

つまり、あのルアス王国騎士団最後の戦いが起きた日だ。






あの日から部隊は日を追うごとに一人、また一人と連絡が途絶えていく

既に父や母は他界し、どうやら私が部隊の最後の生き残りになってしまった様だ。

あの人は無事なのだろうか・・・・元々連絡先すら知らない故に確かめる術も無い。

今更ながらに思うのだが、何故ここまで彼の事が気になるのだろうか。

もしかしたら、きっと私は―――

でも、もうそれも確かめる術も無い。

あぁ・・・・未練だ

あぁ・・・・無念だ

もし叶うのならばもう一度、あの時のあたたかな幸せな日々を――――




そこで日記は途切れていた。





「カッ、胸クソ悪くなる日記だぜ。・・・・なぁ、アレック―――・・・・」

ドジャーの言葉が途中で途切れる。

「まぁ、何だ・・・・・・その、仕方がねぇよ。

自分の人生で関わった全ての人間がどう生きてどう死んだかなんて、

俺達が責任持てる訳がねぇんだからさ。」

「そうですよね・・・・それでも・・・・やっぱり、少し辛いです・・・・」

「・・・・財布に「ゆとり」も出来た事だしな・・・・

心にも、「ゆとり」ってモンを入れた方がいいらしい。

・・・・今日は好きなだけ食っていいぞ。俺の奢りだ、派手に行こうぜ。」

「へぇ、ドジャーさんがそんな事を言い出すなんて珍しいですね。

もしかしたら、雪でも降るんじゃないですか?」

「うるせー、そんな事言うなら取り消しにするぞ?」

「いえ、何でもないです!」

アレックスは、そう言うと凄まじい早さで飯屋へと走っていく。

「早く早く、そんなに遅いと先に食べちゃいますよー!」

既にアレックスはQueenbeeの扉に手を掛けていた。

「ケッ、現金な奴なんだから・・・・」

そうため息を付くと、ドジャーはアレックスの後を歩いていった。






薄暗い記憶なんて、覚えていたって一文の役にも立ちやしねぇ。

人間ってのはな、楽しい事がおきればその倍は暗い事を味わってるんだ。

それでも、楽しい記憶だけは忘れずにへらへら笑って生きていける様に出来てるんだよ。

だから、そんなくだらねぇ事なんか忘れちまって楽しい事だけを覚えてりゃいいんだよ。

特に、今となっては確かめようの無い恋の話なんてのは、よ。









「あ、ドジャーさん遅かったですね。」

「おうドジャー、今日はお前のおごりだってな?何だかわりぃな。」

入り口に入った途端、ドジャーの体はまるで石化された様に動かなくなった。

アレックスとメッツが二人、仲良く飯を食べている。

そして、その机の上には山盛りの・・・・

そして、足元にさえ空になったお皿が行き場所を失い山の様に敷き詰められていた。

「てめぇら・・・・」

ドジャーが、顔を引きつらせながらもそう呟いた。

「「何だ?(です?)」」

二人は不思議な顔でドジャーに聞き返す。

おそらく、二人は悪気があってそんな事をした訳ではない。・・・・筈だ、多分。









三日月が口元を緩めて輝き人々を見下ろす。

その夜は静かな夜だった。

獣の雄叫びも少なく、

酒場の人々以外は誰もが寝静まっているかのようだった。


そんな静かな静かなルアスの深夜



ルアス全体にドジャーの悲鳴(?)が響き渡った。





END

















***********紫陽花さんによるオリジナルキャラ紹介**********





 名前/フェイリスフィール=F=ベルンカステル 職業/料理人(盗賊

王国崩壊まで、ルアス王国騎士団兵糧部隊の部隊長を勤めていた。
彼女の一族は、代々ルアスに名を誇る「サバイバル料理」の名家らしい。
ここ最近の、彼女の自慢の料理はディドスープだとか。・・・・おいしいの?それ。

城攻戦が起きた時、彼女が指揮する部隊は直接的な戦闘が無かったのだが、
無法地帯になった途端、残党狩りに会いあっけなく滅ぼされていった。
元々戦闘に向かなかったのが原因なのだろうか・・・・






                 






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