「で、どうするんですか」

マリナの店"Queen B"

さきほどのシンシアの騒動のせいで
他に客のいない貸しきり状態

聞いたのはアレックス。
口にスプーンを運んでいる。
まだ食べるのか・・・・と言ったところだ。

「ダメもとでやってみるしかねぇんじゃね?」
「そのダメもとってのが一番怖い」
「そうだよねー」

真面目に考えているのは
ドジャー、ジャック、シンシア。
ダメもとでリングを外し、
その時発生するという黒いティラノとぶっつけ本番で戦ってみるか
だが、おかしな情報が多すぎる故に心配だ。

「そのティラノたぁ戦ってみてぇもんだけどな!」
「まずモンスターごときでビクビクするのがおかしい」

メッツとハーデスはさほど深く考えていないようだ。

「俺はさっさと外したい。トイレにいくのさえ気味悪いんだからよ」

シーザーは腕のリングを見つめる。
外せそうで外せない今の状況が一番イラつくかもしれない。
そして人事ならメッツやハーデスと同じような反応をしているだろうが、
いざ自分の事となると・・・・・

「僕はこう思います」

ご飯を詰め込みつつ言うアレックス。
そして水を一杯飲み干した後、話を続けた。

「多分このリングは完成するまで何回も何回も実験が行われたんでしょう
 もちろん人じゃなくてモンスターとモンスターでとかででしょうね
 そしてもちろん失敗も多々あったでしょう。
 魔力の抜きすぎでやせ細ってしまったり・・・・死んでしまったり」
「そりゃぁいいダイエット方だな」

ジャックが言う。

「で、それがなんなんだアレックス」
「はい。とにかくリングの実験体が痩せたり死んでしまった場合は
 壊さずにリングを外せるでしょう?」
「死人にくちなし。手首切られても死んだ実験体が文句をいうわけないよな」

ハーデスは椅子に深くもたれかかりながら言った。
その後シーザーも言う

「そりゃぁ壊さないにこした事ないだろうからな。何せリングは実験の結晶だろうし」
「はい。で・・・・・ですね。僕はこう思います。
 モンスターで実験は何度も行われました・・・・・・・けどリングは壊れずに最利用再利用。
 その結果リングにスキルやスペルの魔力なんかの塵が残ってしまう」
「それが黒いティラノの正体か」
「じゃぁほんとに幽霊なの?」

シンシアは片目をつぶりながら嫌な顔をした。
そんな事おかまいなしにシーザーが切り返す。

「で、俺が知りたいのはリングの外し方だ。外したらどうなるなんて事は後で考えればいい」
「外し方はまぁどうとでもなると思うぜ?」
「たしか原理はエナジースイッチだって言っていた。魔術師を使えばどうとでもなるだろう」
「魔術師ってのはどこにいるんだ?」
「あぁ・・・ここに」

ハーデスの目線の先。
そこにはシンシアがいた。
そして全員の視線が集まりつつ、
ため息を含め、心配な雰囲気が漂った。

「本職じゃない人で大丈夫なんでしょうか・・・・」
「まぁ多分大丈夫だ。これでもそこそこ勉強してるはず」
「はず・・・ねぇ」
「わ・・・・私だってやればできるんだからっ!」

「で、リングを外した時に出てくるモンスターの霊はどうする気なの?」

カウンターの後ろで話を聞いていたマリナが言う。
そして両手に皿を載せて運んできた。
おつまみのようだ。

「霊っていうかなぁ・・・」
「どっちかっていうとスペルの塵ですね」
「いや、魂の記憶?」
「モンスターの魔力の塊かな」
「どれでもいいだろそんなの。俺が欲しいのは結果だ」

シーザーがため息をつく。
とにかくはやく結論にたどり着いて欲しいらしい。

「そんなもん成仏してもらえばいいんじゃねぇのか。霊ならよ」

メッツがつまようじで歯の隙間をほじくりながらそれとなく言った。
全員一瞬時が止まったようになった。
メッツはつまようじをピンッと捨て、タバコに火をつけた時点でその状況に気付いた。

「お、俺なんか悪いこと言ったか・・・・」
「それだ!」
「あ?」
「それならいけそうね」
「パージフレアの炎で浄化すればいいな。ありゃぁ浄化の炎らしいし」
「解決じゃねぇか!」
「だな」
















「お前らのその態度には参るな」
「そんなに離れて・・・・ひどいですよ・・・・」


マリナの店Queen B

その中心。
そこにはアレックス。シーザー。そしてシンシア。

残りのメンバーは・・・・・

「ほらほらさっさとやっちゃってよ」
「ガハハ!死ぬなよ!」
「死んでも面白いけどな」
「そんな簡単に死ぬたまじゃないし、どうせなら派手な方がいいな」
「カカカッ!爆発したら絵になるな」

まるで人事な言葉が飛び交う。
マリナ・メッツ・ジャック・ハーデスにドジャーの5人は、完全避難体制。
店の隅に避難していた。
まるで怖いもの見たさの野次馬のようだ。

「絶対あたし損な役回りだ・・・・・」

アレックスとシーザーの腕、
つまり二つのリングを掴みながら
シンシアは泣き言を言った。
たしかに困ってる本人ではないのに、危険の一等地的な役割。
泣きたくもなる。

「きっと大丈夫よシンシアちゃん。多分」
「シンシアがエナジースイッチの応用で能力を戻しなおし、
 それでリングが外れ次第出てきたモンスターの魂をパージで浄化
 理論的には問題ないはずだ。多分」
「そうそう、心配するこたねぇぜ!・・・多分」
「死ぬこともないだろう。多分」
「さすがにヤバい状況が起こったら俺らだって助けるぜ。多分」

「「「・・・・・・」」」

アレックスとシーザーとシンシアは呆れたが、
まぁやるしかなかった。

「じゃぁいくよ〜〜」

シンシアが魔力を込めようとした。
が、

「ちょっと待て」

シーザーに"待った"が入った。

「リング壊れたら俺はパージできないんだぞ
 このリングのお陰で聖職者のスペルが使えるようになってたんだからな。
 そうなるとアレックスしか聖職者がいないわけだが・・・アレックス一人で浄化できるのか?」
「あぁ・・・・そっか」

そこは少し心配だった。
どんな霊なのかも見たこと無いが、
ティラノというからには相当の大きさだろう。
もし浄化できなかった場合・・・・・腹ペコの恐竜霊にパックンチョされる。
アレックスとシーザーとシンシアは店の真ん中でうーん・・・と腕を組む。
そしてマリナとジャックとメッツとハーデスとドジャーも部屋の端で同じように腕を組んだ。
他人事のように安全地帯で盛り上がってたくせに。

と、その時ドアが開く。
ガランガランという音が鳴り響く。
そこに二人の聖職者が入ってきた。
と、同時に店内でニヤけ顔が大量発生した。

「な、なんだ・・・・」
「・・・・・・・・・・・レックス・・・・よく分からないが・・・・・帰った方がよさそうじゃないか・・・・・・」
「・・・・・・・懸命だ」

店から出ようとしたレックスとレイズに向かって数人が飛びついた。









-5分後-





「はいはい仕切り直しー」
「カカカッ!死ね死ねー!」

「「「・・・・・」」」


店の中心には
リングが付いている当の本人であるアレックスとシーザー。
リング外し役のシンシア。
そして追加が二人。
リングが壊れたときに出現するモンスター浄化役のレックスとレイズ。

部屋の端には
もはやただ面白がっているだけの野次馬5人(マリナ・ジャック・ハーデス・メッツ・ドジャー)

「んじゃもう始めちゃおうか〜・・・・」

シンシアがノリ気じゃない声で言う。
レックスとレイズはすぐには言葉も出ない。
シンシア以上に巻き込まれた感があるので、ノリ気じゃない気持ちも分かる。

「というか俺が火が苦手なの知ってるだろ。そんな俺にパージを注文するのか?」
「魔力を足してくれるだけでいいんだよ。目ぇつぶって頑張れって!」
「いや、それ以上になんで唐突にこんな危険な役」
「・・・・・・・みんな・・・・・・死ねばいいのに・・・・・・・・・・」

どこの世界でも聖職者という者は苦労するものである。

シンシアがアレックスとシーザーのリングを掴む。
そして魔力を込め、詠唱を始めた。
エナジースイッチ・・・・・の応用。
遠くで見ている野次馬5人にも魔法の発動が分かる。
魔力と気力がシンシアの腕を伝わり始めた。
光り輝いている。
アレックスのシーザーのリングに直接触れ、リングで得た余分な魔力を吸い出している。
シンシアの両手がロープのような役割をし、
アレックスとシーザーにその魔力を交換・・・・というより
簡単に言えば元に戻そうとしている。
言うほど簡単な事ではないだろうが、
シンシアはそれをやっている。
正規の魔術師ではない分、マニュアル外の魔法に強いのかもしれない。

ピシッ、

「お?」

リングにヒビが入った。

「いい感じみたいですね」

ピシピシッ、
亀裂がさらに生まれる。
ピシピシピシッ、
ヒビ割れが大きくなってきた。
そして・・・・・

「割れた!!」

野次馬5人の方から「おぉー」っと小さな歓声が起こった。
そしてなにか手品でも見ているかのような小さな拍手も発生する。

「今!元気なひな鳥が生まれました!ってか?」
「ドジャーさん・・・・そういうのいりません・・・・」
「だが、これが悪夢の始まりだとは夢にも思わなかった」
「ジャック。そういうナレーションもいらない」

ウダウダ言っている間。
アレックスとシーザーの割れたリング。
それは地面へと崩れ落ちた。

「なーんも起きないじゃねぇか」
「黒いティラノってのはデマだったん・・・・」

ハーデスが言いかけたその時、
地に落ちたリングの破片から
煙のようなものがゆっくりと噴出し始めた。
そしてそれが次第に集まり・・・・

「マジかよ・・・・・」

店内の天井スレスレの巨大な黒いティラノの形を生成した。

「でっか・・・」
「ボヤボヤするな!」

誰かの叫び声と共に
レイズとアレックスがパージを放とうとした。
だがその時には
すでにティラノは走り出していた。
狙いが外れる。
足音の聞こえない不思議な爆走。
霊だからであるが、
それがいっそう気味悪い

「このやろっ!ごちそうをくれてやるっ!」

ドジャーのダガー。
投げられた四本の閃光は、的確にティラノを捉える。
そしてダガーはティラノに直撃・・・・・
したと思いきや

「通り抜けたっ!?」

ダガーは店内の壁に虚しく突き刺さった。
なんかしたか?といった感じに、ティラノのばく進は止まらない。
そしてその走行の先には・・・・

「ちょ、ちょっと!なんで私なの!」

マリナ。
とっさマリナはギターを逆手に構えてティラノを迎え撃つ。
だがドジャーの攻撃が通り抜けてしまったのを見ると、
迎え撃った所で・・・・

その時
ティラノが突然走行をやめた。
何かに目を奪われたのだ。
そして飛び回る虫を目と手で追いかける猫のような仕草をする。
ティラノが気を奪われた者。
それは金・銀・黒の三連星。
三人の盗賊がティラノの周りを飛び回る。

「触れられないなんてな。もし人間の女の霊を見ても声をかけない事にするかな」
「このティラノもメスかもしれないよ〜!」
「何にしてものれんに腕押しとはこの事・・・・いや、ちょっと違うな」

シーザー・ジャック・シンシアはティラノを翻弄しつつ、
しゃべる余裕もあるようだ。
だが、逃げ続ける以外しようがない。
なにせ攻撃が透けて当たらないのだから。

「押してだめならぶった切るまでよ!」

メッツが巨大な両手斧を振り上げ。
そしてティラノに向かって特大スイング。
だがもちろんティラノには通り抜けてしまう。
メッツは自分の力強いスイングの力で「おっとっと」と体勢を崩した。

「少しは考えろメッツ!」

ドジャーがそんなメッツの頭を踏み台に飛び上がる。

「頭ならどうだクソッタレ!」

店の天井付近。
そこはティラノの頭部。
ドジャーはそこを思いっきりダガーで切りつけた。
だが、無意味。
スルっとすり抜けてしまう。

「カッ!食われた奴がいるって聞いて頭ならと思ったんだけどなっ!」
「物理攻撃がダメならスペルです!レックスさん!目ぇつぶっててください!」

レックスは嫌な予感がして目を背ける。
というより耳をも塞ぐ。
感じるのも嫌だ。
火なんて・・・・。

アレックスが十字を描く。
そして指を突き上げた。
床の魔方陣からパージフレアが噴出す。
だが・・・
噴出しただけ。

「くそぉ!ダメです!」
「こいつ無敵かよ・・・・・」
「無敵?」

ハーデスが槍を構える。

「俺をさしおいて無敵だぁ?こいよ魔物風情!」

ハーデスの挑発が聞こえてか聞こえなくてか、
ティラノはハーデスを睨みつけ、
そして大きな口でかぶりついてきた。
ハーデスを晩御飯にする気だ。
だがハーデスがディナーになるはずがない。

「ライトニングスピアッ!」

電撃を付加した槍撃。
それはティラノのアゴに・・・・
突き刺さった。

「効いた!?」
「ケッ、ざまぁみやがれ」

ティラノがうめきをあげる。
ハーデスは槍を引き抜き、フッと笑った。

「なに?!なんで今のは当たったの!?」

ティラノがそんな疑問に答えてくれはずもない。

「まいったな・・・・動きを止めてくれないと浄化は無理だぞ」
「・・・・・・まぁ・・・・・・・・それは前衛の役目・・・・・・・・・」
「だな、俺達聖職者には料金外の話だ」
「・・・・・・・・・・・・いつ金が発生したんだ・・・・・・・・・・」

レックスとレイズをよそに、
ティラノがまた腕を振り上げる。
そして骨付き肉ハンマーはメッツへと振り落とされた。

「うぉ!?」

メッツは両手の両手斧をX字に構えてそれを・・・・
受け止めた。
ティラノの一撃を受け止める腕力はさすがと言える。

「透けるのか透けないのかハッキリしてくれよこのキチクめ!」
「あ!分かりました!」

アレックスが突然叫ぶ。
が、そんな言葉をシーザーとジャックがティラノに飛びつく。
そしてティラノがメッツを攻撃したままの腕と肩へ飛び乗り、
同時にダガーを突き刺した。

「何で攻撃が当たったのか分からないってのも気味が悪いな」
「アレックスと一身同体のときの気持ち悪さと比べりゃわけないけどな」

突然フッとダガーに手ごたえがなくなる。
そして腕にのっていたはずのシーザーとジャックは地面に落ちた。
またティラノに質量がなくなったのだ。
また攻撃の透ける無敵ティラノの完成。

「タ、タイミングはずれたぁ〜!」

自分も斬りかかるはずだったのだろう。
シンシアが飛びついていたが、透きぬけて勢い余る。
透けるティラノを突きぬけ、シンシアはそのまま酒が並んでいる棚へと突っ込・・・・
いや、着地した。
空中で?
いや、シンシアが着地したのはマリナのギター。
マリナがシンシアを受け止める形でギターを構えていたのだ。

「シンシアちゃん。女の子はあんまりがっつかない方がいいわよ?」

シンシアはギターに掴まった状態でしょんぼりした。

「んでアレックス!何が分かったって!?」

ドジャーが叫ぶ。
飛び回りながら。
今度はドジャー・シーザー・ジャックの三人でティラノを翻弄していた。
アレックスが答える。

「たしか先ほど聞いた話ではティラノに食べられた人がいるんですよね?
 それと今々の出来事を見て分かりました!
 そのティラノは攻撃の前後だけ実体化するってことです!」
「なるほど。そりゃいい体だ。羨ましいくらいだ」
「じゃぁ誰かが攻撃されなきゃいけないわけだな。オトリってやつか」
「そんなの誰がやるのっ!?」
「カッ!そんなの決まってら!」

飛び回っていたドジャー・ジャック・シーザー。
三人はまるで息が合ったように動く。
そして三人は走り回った後、
ある場所で止まった。
詳しくはあるモノに回り込んで。
そこは・・・・・ハーデスとメッツの後ろ。

「お前らなら攻撃止めれるだろ!」

その声と同時に三人の盗賊はまた素早い身のこなしで散った。
メッツとハーデスにティラノのターゲットがうつったからだ。
注文どうり、
ティラノはメッツとハーデスへと突進する。

「ガハハ!止めるだってよハーデス!」
「おかしな話だ。俺が受け手に回ると思ってるのか?」

ハーデスは振り下ろされたティラノの骨付き肉(100tハンマー)を潜り抜ける。
そしてそこはティラノの懐。腹の目の前。

「俺の槍は腹痛じゃ済まないぜ」

ライトニングスピア。
さっき以上の一撃をお見舞いする。
その槍はティラノの腹に突き刺さった。
槍はティラノ全体の大きさと比べれば小さなものだが、
まるでティラノ全体を貫こうとするかのような威力。
大木が突き刺さったような穴が開いた。

「オッラ!死ねやコラァ!!!!」

メッツの二つの斧。
いつの間にかティラノの後ろに回りこんでいたメッツは
思いっきり斧を重ねてぶった斬ってやった。
何かが飛ぶ。
それはティラノの大きな尻尾。
それがぶった斬られて宙へ飛んだ。
普段ならこの尻尾で大量のステーキでも作ろうと思うが、
透けたステーキなど誰も食べないだろう。

「おとなしくしててよ恐竜さんっ!」
「まぁ言葉は通じてないと思うぞ」

シーザー・ジャック・シンシア・ドジャーの4人の盗賊は、
ティラノを囲むように4角形の形で陣取った。

「料理は作りやすくしとくかっ!」
「俺は女にはやさしいが縛りプレイもイケるもんでな」

4人が同時に放つ。
それはスパイダーウェブx4。

魔法の蜘蛛の糸が激しくティラノに撒きつく。
そしてその糸はティラノの動きを止め、
ティラノがまた透けるのを封じた。

だが、透けるのは封じたが、
たとえ4人分といえど、
この巨大なティラノ全体を蜘蛛の巣にからめる事はできなかった。
体はがんじがらめにしたが、頭だけは縛り付けられなかったのだ。

ティラノは顔だけ動かし、
そしてその大きな口で・・・・

「げ!」

ドジャーに噛み付こうとした。
ドアよりも大きいその口は
ドジャーを飲み込む勢いで・・・・
だがティラノはうめき声をあげる。
そしてひるんだ
何かがティラノの目に刺さったのだ。
それはダガー。
・・・・であるが、もちろん投げたのはドジャーではない。
投げたのはシーザーだった。

「おま、投芸できたのか!」
「いい男はなんでもそつなくこなすもんだ」
「手癖が悪いだけだろシーザー」
「まぁ否定はしないさ」

そしてティラノの頭上。
そこにマリナが着地した。
ふわっと浮くように華麗にだ。
マリナはギターの先をティラノへ向けている。

「残念だけどうちの店でティラノ料理は扱ってないのよ!」

言うなり響く連続音。
マリナのワイキギターもといマシンガンが
ティラノへと銃弾の雨をぶちこむ。
ティラノはうめき声と共に体を激しく揺らした。
そして大きな口で大きな叫び声をあげる。

そんなティラノの大きな口に・・・
何かが入った。

「ごちそうをくれてやる・・・だったな」

それはシーザーの爆弾。
食あたり確実の黒く丸い料理。
ティラノはスパイダーウェブのせいでもう透ける事も適わない体。
飲み込んでしまった爆弾は・・・・
もう爆発するしかなかった。
ティラノの体の中で爆発する爆弾。
体の中での爆発なので音は聞こえづらかったが、
多分ダメージという点では一番効いただろう。

外傷と内傷が重なり、
とうとうティラノは力尽きる寸前の状態になる。
そしてバタンと酒場の床に崩れ去った。

「やっと出番か」
「・・・・・・・ダルかった・・・・」
「長かったですね・・・・」

十字を描いた。
二つの十字。
レイズとアレックス。
レックスは二人に聖の魔力を手助けをしようと手をつきだす。
レックスの助力はレイズとアレックスのパージを増幅するためのエンジン。
アレックスとレイズは聖なる力がみなぎるのが分かった。

「金がかかってればもう少し頑張れるんだがな」

十分だった。
十分すぎる魔力がレイズとアレックスに溜まる。
そしてレイズとアレックスが指を刺すと。
ティラノの足元にあらわれた・・・・・・・・・・巨大な魔方陣。

「それじゃぁ・・・・・・・・」

「「「アーメン」」」

アレックスとレイズが同時に指を上へと突き上げる。
それと同時に吹き上がる超特大パージフレア。
レックスの魔力を巻き込んだ3倍力のパージ
この世のパージと思えない規模。
それはティラノの体を丸ごと包み込む爆発的な炎。

そしてその青白い浄化の炎によって・・・・・

ティラノは跡形もなく消え去った。

フゥ・・とパージの炎がやむ。

そこは静寂の酒場へと戻った。
一名だけ火のせいでパタンと倒れて静寂している美男子もいる。

「解決・・・・・か」

火を見て気を失っているレックスをよそに
シーザーがボソりと言う。
そう。
やっと終わり。
解決だった。

「ちょっと!何しているの!やりすぎよ!」

マリナが叫ぶ。

・・・・・無理もない。

その特大のパージフレアのせいで・・・・・

天井が焦げ・・・・いや、燃え始めていた。
小火(ぼや)発生だ。

「あちゃ・・・・・」
「やっべ」
「おうおう、次から次へとめんどうな・・・・」

マリナは焦ってカウンター裏の水道を全開にする。
そしてコップなどの食器に水をため始めた。

「うわ!早く早く!」
「いそげオラァ!!」

アレックスとドジャーとメッツが焦って火消しをしようとする。
レイズも「・・・・めんど・・・・」といいながらウォーターダウンを詠唱しはじめた。

だが、
動き始めないシーザー・ジャック・シンシア・ハーデス
動くどころか意識さえ動いてないレックス。

「手伝うべきだよね〜」
「何言ってんだシンシア。お前さっきこの店に迷惑かけてばっかなんだぞ」
「今度ばかりは後であの怖ぇ姉ちゃんにどつかれるぜ?
 レックスも意識があったら弁償の代金気にするところだろうよ」
「じゃぁ・・・・」

少し間をおき、
そしてシーザーが言う。

「俺らはここらでトンヅラするとするか」

4人はニヤっと笑った。

「ちょ!あんた達火消しくらい手伝ってきなさいよ!」
「オラァ!逃げんのか!」
「・・・・・・死ねばいいのに・・・・・」
「テメェら・・・・」
「ドジャーさんそれよりそっち!火!火!」

そんな彼らを尻目に
5人は出口の方を向く。

「恨まないでくれよ。別れの挨拶くらいはちゃんとするからさ。"それじゃぁな"」

ジャックは軽く片手を振って外に飛び出す。

「これぞワイルドクラッシャーズってやつだねっ!じゃ、まったね〜!」

シンシアは無邪気の笑顔を振りまいて走っていった。

「今度ケリつけようぜメッツ。俺の方が強いってな」

ハーデスは笑いながら堂々と背を向けて歩いていく。

「待て・・・ハーデス・・・・こんなところに置いてくな・・・・」

レックスが目を覚ましてどうにか言う。
ハーデスは気付いてレックスに肩を貸した。
レックスは火に背を向け、見ないようにしながら、微妙に手を振った。
そしてまた気を失った。

最後にシーザー。
何を言わずに出て行こうとした。
が、

「待てシーザー!」

ドジャーが叫ぶ。
シーザーは振り向いた。
・・・・と同時に二本の指で何かをキャッチした。
それはダガー。
ドジャーが投げたのだった。

「そのごちそうはみやげだ。くれてやる。また遊びにこいよ」

ドジャーが言う。
シーザーはフッと笑ってダガーを懐に閉まった。

「悪いが男と約束する性格じゃないもんでな」

シーザーはそう言って背を向けて酒場のドアを押し開いた。
だが、ドアを半分開いたままで立ち止まり、
背を向けたまま言う。

「だがこの世界の女を漁りにまた来るかもな」

そしてドアが静かに閉まった。

「素直じゃないとこもドジャーさんに似てますね」

アレックスがドジャーにそう言うと。
ドジャーは「うるせぇ!」と言って火消しを再開した。










二つの世界。

それが偶然繋がり、

出会った5人と5人。



偶然がもう一度起きる事があるなら

彼らがもう一度会うこともあるかもしれない。



そんな偶然が巡り会わせた偶然の物語














-翌日-








ガランガラン



「いらっしゃい!酒場"Queen B"へようこ・・・・」

マリナが言葉に詰まる。
そしてたまたま食事に来ていたアレックスとドジャーも「は?」と言った表情だ。

客は5人。
その客は言う。

「あ〜・・・なんだ。昨日の今日で悪いんだが」
「実は帰り方がまだ見つからない・・・・」
「マリナさぁ〜ん・・・・。もう少しだけここに置いて。ね?」

「「「・・・・・・・・」」」

マリナは血管の切れる音と共にギターを握り締める。

当然のことながら、
この後破壊組5人はルアス99番街中を逃げ回ることになった。














-SYSTEM CRUSHERS 完-

















                 






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