「メッツって言ったか・・・・」
「ぉお?」
「いや・・・どけって・・・・」
シーザーの上にはメッツの大きな体が乗っかっていた。
吹っ飛ばされたメッツの下敷きになったのだった。
はっきり言って重い。
何食って生きてるのだろうか。
「ガハハ!悪ぃ悪ぃ」
メッツが起き上がる。
目の前には極悪騎士が立っていた。
その極悪ハーデスがメッツに怒鳴りつける。
「なんだてめぇいきなり襲い掛かってきやがって!」
「ガハハ!なんか強そうな騎士だと思ってよぉ!
 だが俺吹っ飛ばす奴なんざそうそういないぜ?やるなあんた」
「嬉しかねぇな」
たしかにメッツの体格は屈強なものだったが
ハーデスにとったら人生でこんな相手は腐るほどいた。
そして勝ってきた。
今更そんな事でホメられても嬉しくともなんともない。
「あんたとはいつか本気でやり合ってみてぇもんだな」
メッツはそう言って煙草を口にくわえ、火を点けた。
「なんなら今やったっていいぜ?」
ハーデスの口が怪しい笑みで歪む。
メッツも「それも悪くないな」と煙草をくわえた口に笑みを浮かべた。
が、その瞬間後で軽くドサッという音が聞こえた。
戦いの合図ではないだろう。
メッツとハーデスとシーザーが同時に振り向くと、
そこには聖職者が片膝をついて手を額に当てていた。
「どうしたレックス。」
「いや・・・・」
「おい、アレのせいじゃないか?」
シーザーとハーデスの視点がメッツに向けられる。
「?・・・どったんだ?その聖職者俺に一目惚れでもしたのか?」
ガハハと笑うメッツ。
それはありえないだろう
俺のような色男ならまだしも・・・・
なんてシーザーは思いながらメッツの口の煙草を弾き飛ばした。
「てめっ!何すんだ!」
「レックスは火が苦手なんだよ」
「ん?あぁそうなのか」
そう言いながらメッツはまた新しい煙草を手に取り火を点けた。
それを今度はハーデスが弾き飛ばした。
「テメっ、話聞いてたのか!?」
「アホか!俺にとっちゃぁ煙草は呼吸なんだ!呼吸するなってのか!
 そこのお嬢ちゃんがどうだか知らねぇがこれは譲れねぇな!」
「お嬢・・・・だって?」
レックスの目がメッツを睨む。
「俺は男だ・・・・」
「のぁ!マジで?!そういやさっきからレックスって呼ばれてたが男の名前だな
 いや・・・綺麗な顔してるからよ・・・・そりゃ悪かったな・・・・」
「いや・・・・・まぁいい。それに煙草の火くらいならまぁ・・・大丈夫だ。
 ただライターだけは見えないように点けてくれ」
「おっけおっけ了解。俺ぁ吸えれば文句は言わねぇよ」
と言いながらも目の前で煙草を点火するメッツ。
シーザーとハーデスが同時にメッツごと煙草を吹き飛ばした。
メッツが尻餅をつくより早く、
美麗な容姿の聖職者はとうとうドサッと地に倒れた。


















「じゃぁ後で!」
「・・・・・一生のお別れにならないといいけど・・・・・・・・・」
クックックと笑うレイズ。
そしてアレックスとレイズはゲートで飛んでいった。
行き先はミルレス白十字病院。
病院でならなんとか外せないと考えたからだ。
病院とは聖職者の集まりのようなものだ。
何かうまい話があるんじゃないかという考えだった。
「病院で全て解決するようなら神も警察もいらないがな」
ジャックの毒舌が発せられる。
普段苦労している彼にとったら当然の考え方でもある。
とりあえずアレックスとレイズが居なくなったので
テーブルにはドジャー・ジャック・シンシア・マリナの4人が残り、腰掛けていた。
「でもまぁお前マジ24か。ホント人は見かけによらねぇもんだな」
ドジャーはシンシアを眺めながら言った。
「世の中見かけじゃ判断できない事ばっかだ
 だから詐欺商売が成り立ってるわけだからな」
ジャックがそう返す。
まぁたしかにそうである。
見た目だけでは内なる凶悪さに気付けはしないものだ
人もしかり、物もしかり、そしてシンシアの料理もしかり・・・・
「でもまぁ24っていうのはホントビックリしたわ、
 24って事は私の妹どころかお姉さんだもの」
マリナがケロリとそう言う。
ジャックとシンシアは「?」と言った感じの顔をした。
「え?24より下なの?」
「えぇ、私は20よ」
「じゃぁ私より下なんだぁ」
「やっぱ見かけで判断できる事ばかりじゃないな」
見るからに大人の雰囲気を纏っているマリナ
それが20と聞いてジャックとシンシアは少し驚いたが
へぇ〜といった感じにまぁ納得したようだった。
そこでドジャーが笑いながら返す。
「カカカッ!騙されんなって!マリナは今年でにじゅーろ・・・・・」
マリナの手が伸びる。
鬼が手を出したかのような勢いだった。
そしてドジャーの胸倉を掴み持ち上げた。
「私は今年でいくつって?」
「いや・・・・」
「20よね」
「・・・・・・・・・20だな・・・」
「他に私の年齢に文句のある人は?」
ジャックとシンシアは首をブンブンと振る。
触らぬ神にたたりなし・・・・。
マリナはそれを確認するとニコリと笑い、
ドジャーから手を離した。
「ともかくリングを加工した奴を探さないか?
 ここに居ても金と時間を浪費するだけだからな」
「命・・・・もな」
ドジャーはチラりとシンシアを見た。
シンシアは手を合わせて片目をつぶり、ゴメンのポーズをとった。
「まぁともかく探しに行くか」
ドジャーも席を立つ、
だがシンシアは席を立つ気配は無かった。
「どうしたシンシア?」
「わたしはもうちょっとマリナさんの手伝いを・・・・」
ジャックをそれを聞いてすぐさまシンシアを椅子から引っ張り起こした。
核弾頭をここに置いておくわけにはいかない。
「行くぞシンシア・・・・」
「でも・・・・」
戸惑うシンシア。
そんなシンシアの肩にマリナはソッと手を置いて言った。
「行ってらっしゃいシンシアちゃん。私を助けると思って・・・・」
マリナの言葉の意味を理解し
すぐさまジャックとドジャーは核弾頭を連れて店から出て行った。



















「やっぱ無理でしたねレイズさん・・・・・」
ミルレス白十字病院。
そこにアレックスとレイズはいた。
しょぼしょぼと廊下を歩くアレックス。
いろいろな医者へ見せてみたがリングを外す手がかりを見つける事は出来なかった。
下を向いて歩くアレックスに平行して歩くレイズ。
レイズはここの医者なため、病院の関係者とすれ違うたびに挨拶をされていた。
が、レイズのあまりの存在感の無さに、レイズ自体に気付かない医者もいた。
レイズはまるで死の国のふちから聞こえてくるような声でアレックスに言う。
「・・・・・・・まぁ・・・・・アレックス・・・・・・」
「は、はい」
「・・・・・・・解決方法はあるにはあるよ・・・・・・・・」
「ほ、ホントですか?!」
アレックスはレイズに飛びつく。
そして血が通っているのか?という疑問さえわくレイズの手を握った。
レイズがユックリと笑いながら言った。
「・・・・・死ねばいいんだよ・・・・・・・」
そう言ってクックックとレイズは笑った。
解決になってない解決法を提案されたアレックスはまたうつむいた。
「どいてどいてー!」
「急患!急患です!」
突然廊下を通過しようとする医者達の声がした。
タンカを中心に取り巻いて走る医者達。
それはアレックスとレイズを弾きどかした。
「いてて・・・・」
「・・・・・・・なんだよ急患て・・・・・・・・・死ねばいいのに・・・・」
医者が患者に言う事ではない。
むしろ医者が言ってはならない言葉ワースト1であろう言葉だが
それをレイズは平気で言うのだった。
運ばれるタンカ
患者はどうやら女性ようだった。
そのままタンカは通り過ぎ、医務室へ入っていった。
タンカを取り囲んでいた医者の一人がレイズを見て立ち止まった。
「あ、Dr.レイズ!いい所に!この患者を診てもらえませんか?」
「・・・・・・・・俺は・・・・・・非番なんだけど・・・・・・」
「そうおっしゃらずに!たいした患者じゃありませんから!」
「・・・・・・・くそ・・・・・・・・・死ねばいいのに・・・・・・」
そう言ってレイズはその医者からカルテを奪った。
だが急患なため必要最低限の情報しか記されていない。
「・・・・・・・・容態は?・・・・・・・・」
「あ、はい立ちくらみのようなものだそうです」
「・・・・・・・そんなんで病院くるなよ・・・・・・・・・・・死ねばいいのに・・・・・・・・・
 ・・・・・・で、原因は?・・・・・・・・・・突発的なものか?・・・・・・・・・・・・・・・」
「いえ、火を見たそうです」
「・・・・は?・・・・・」
レイズはもっと詳しく聞き返そうとしたが、
そう言ったきりその医者はすぐどこかへ行ってしまった。
「火を見て失神?どういう事なんでしょう」
「・・・・・・さぁ・・・・・・・・・トラウマかなんかだろ・・・・・・・・」
あぁなるほど。
腐っても・・・・と言っては悪いがさすが医者である。
それなりの判断ができるようだ。
アレックスとレイズは医務室の中へ入った。
そこへは白いシートの上で先程の患者が寝かされていた。
その綺麗な容姿を見てアレックスは言う。
「綺麗な女性ですね」
「・・・・あぁ・・・・・・・・・・・・ん?・・・・・・・」
カルテを見ていたレイズの目が止まる。
「どうしましたレイズさん?」
「・・・・・・あぁ・・・・レックスって書いてあるんだ・・・・・・・」
「アァレックス?僕ですか?」
「・・・・・・じゃない・・・・・・・・レックスだ・・・・・・・・・・・」
「あぁ・・・・・」
まぁ似た名前なんて世の中どれだけでもあるもんだ。
アレックスとレックス。
うん、なんか僕の方が少し長い分凄そうだ。
なんか嬉しいな。
ん?レックス?
「え?レックスって事は・・・・」
「男で悪いか・・・・」
ベッドからレックスが体を起こした。
意識が戻ったようだった。
「あ、いえ。まるで女性のようだったから・・・・」
「・・・・・・・・・」
レックスは不機嫌そうな顔をした。
いや、少し怒ってるようにも見える。
だがその話はよけてレックスは言った。
「まぁいい、それより俺はまだ別に何も診てもらってないよな?」
「・・・・・・・まぁそうだな・・・・・・」
「金はかかるのか?」
「・・・・・・・どうかな・・・・・・・でもタンカ使っただけでも・・・・・・金は発生するかもな・・・・・・・」
「なんでですか?」
「いや・・・・・」
ベッドから立ち上がるレックス。
そしてアレックスとレイズに向けて言った。
「俺は金のかかる事が嫌いなんだ。もし請求するならあのメッツとかいう奴に請求してくれ」
「え?メッツさんに?」
「・・・・・・メッツ関連かよ・・・・・・」










「ふぇえええっくしょん!!」
親父みたいに馬鹿でかいクシャミを発するメッツ。
半径50メートルに響いたんではないかという勢いだった。
誰かが噂でもしてるのかとメッツは鼻をこすった。
「どうした。なんたらは風邪ひかないと聞いたが?」
「あぁん?なんたらってなんだオラァ!」
メッツとハーデスが顔面を極限まで近づけてガンをつけ合う。
眼と眼が5cmの距離で狂犬と凶悪は睨みあった。
そんな二人を尻目にシーザーが言う。
「気をつけろよお前ら」
「ん?」
「あん?」
「風邪はともかく馬鹿はうつるからな。俺にうつすなよ」













「あぁ〜ダッル」
ドジャーが頭の後ろで両手を組んで言った。
「右に同じぃ〜」
シンシアはそう言った後にため息をついた
「以下同文だ」
ジャックも両手を広げてそう言い、続けて文句をたれた。
「大体な、商人の顔も知らない、加工した奴がどんな奴かも分からない
 そんな状況で見つける事ができるなら神も警察もいらないさ」
今日のジャックは神と警察が嫌いらしい。
「まぁたしかに見つかるわけないよね」
「でも見つけねぇとな」
「見つかると思うか?」
「さぁな、ただダルいのはたしかだ。お前らは?」
「右に同じぃ〜」
「以下同文っと」
並んでとにかく街を歩くドジャーとシンシアとジャック。
いい加減うんざりだ。
「まぁ少しくらい推理も必要だな」
「推理っていっても考えようがないじゃん」
「いや、ただのリングにあんな力を与えた上に取れなくなるような加工
 こんなもん魔力じゃなきゃなんなんだ?」
「つまり魔術師か」
「腕輪の加工が仕事なら自分も付けてるかもね」
「修道士じゃあるまいし腕輪を付けるような特異な魔術師そうそう居ないだろう」
「カッ!あと宝石店狙うぐらいだから常習的な悪かもな」
「こんなか?」
ジャックか自分の横の壁に張られている紙を指す。
それは魔術師の指名手配書だった。
「ま、こいつは関係ないだろうけどな」
「ん?こいつあれじゃねぇのか?」
ドジャーが指差す。
その先には魔術師がいた。
しかも腕に腕輪が付けられている。
ドジャーとシンシアとジャックは同時に指名手配書を見た。
そして三人同時にもう一度その魔術師を見た。
最後に三人は同時にお互いの顔を見合わせた。
「話がうますぎないか?」
「えぇ〜でもぉ〜・・・・」
「まぁ俺の意見としては・・・・・・"とりあえずいっとけ"だが?」
「う〜ん・・・・右に賛成〜」
「以下同文・・・だな」














「店がヒドい目にあって怒れない状況は初めてだわ・・・・・」
マリナは一人で店の片付けをしていた。
調理場がヒドい事になっている。
もちろん犯人はシンシアなわけだが
悪気があったわけじゃないので怒るに怒れない。
ため息をつきながらボロボロのフライパンをゴミ箱に捨てた。
「なんで料理じゃなくてフライパンが焼けてるんだか・・・・」
なにをどうしたらこんな自体になるんだろうか。
調理後なのか調理前なのか分からない食品達が横たわっている。
まぁ調理前だろうが調理後だろうが食べられそうにないが・・・
なぜこの魚は調理場のまな板の上でグチャグチャになっているのだろうか。
そしてなぜどのような状況でまな板が黒こげになっているのだろうか。
マリナはもう一度ため息をついた。
これからする片付けの量を考えたら当然といえば当然のため息であった。
「・・・・・・・・・勘弁してよ・・・・・」













「か、勘弁してくれ!」
3人の盗賊に囲まれ、
その魔術師は半ベソをかきながら言った。
そして頼んでもいないのに自分の財布を差し出した。
ジャック達をカツアゲか何かと思ったのだろうか
まぁ盗賊が三人絡んできて軽くボコってきたらそれ以外に思わないだろう。
ドジャーが魔術師の頬にペタペタとダガーを当てながら言う。
「魔術師さぁんよぉ。俺達ぁこんな物欲しくてあんたに絡んだんじゃねぇんだよ」
そう言いながらもドジャーは財布をちゃっかり自分の懐に閉まった。
「お前リングの加工をしてるんじゃないか?」
「へ・・・・・」
「痛みが共有される変なリングに覚えはない?」
「あ、あぁ・・・あの失敗作か・・・・」
「やったぁ!ビンゴね」
「いや、それ以前にお前失敗作なんて売ってたのか?」
「いやいやいや!あれは勝手にあの商人が売っぱらってるだけだ!
 俺はただ趣味であぁいうリングを作ってるだけで・・・・・」
その魔術師は尻餅をついたまま後ずさりした。
「まぁいい。俺達が知りたいのはあのリングの外し方だ」
「まさか分からないなんて言わせないわよ?」
「わ、分かってる。言う、言うよ!外し方だろ?そんな事を簡単だ。
 最初あのリングはな、魔力(MP)や精神力(SP)を共有できないかと思って作ったリングなんだ。
 まぁうまくいかなくて魔力じゃなくて違うものを共有する変なリングになっちまったんだが」
「リングの作り方なんてどうでもいいんだよ!外し方を言えっつってんだ!」
「ま、まぁ聞いてくれよ。あのリングの種はエナジースイッチってスペルだ」
「エナジースイッチって魔力と精神力を交換するやつ?」
「そう。まぁさっき言った通り成功しなかったんだが・・・・・
 つまりはリングを付けてる両方が魔力か精神力を使い切れば・・・・・・・・・・」
「自然に外れるって事か」
「OK、お前にもう用はねぇ」
そう言ってドジャーはその魔術師を蹴り飛ばした。
魔術師はヒィィと声をあげながら逃げていった。
「これで解決ね」
「まぁそうだな」
「なぁーんかムカツかねぇか?」
「「え?」」
ジャックとシンシアは同時に疑問の声をあげた。
「いや、だってよ。たしかにこれで解決だ。
 シーザーとアレックスが力使い切れば「やったぁ外れたわぁーい!」ってなもんだろうよ」
「めでたしめでたしおぉーっしまいって感じだね」
「病気と面倒事は早々に片付くのが一番だ」
「いやぁな、なんで俺らには関係ないのに俺らが頑張って俺達に何一つ有益がないんだ?」
ジャックは言葉を失くした
そして苦労をかけられる事に慣れてしまった自分自身を同情した。
「たしかにそうだな」
「一理あるわ」
「元はといえばシーザーとアレックスが持ち込んだ問題だ
 あいつらにはそれ相応の"しかるべき事"を与えてやるべきじゃねぇか?
 ま、つまりはだな。どうせ解決法は分かったんだ。
 その前にイタズラしてやろうって事だ。どうだ?お前らもあいつにゃ苦労かけられてんだろ?」
同時にコクンと頷くシンシアとジャック。
特にジャックにしたら苦労なんてものじゃない。
「どうだ?」
シンシアとジャックは見合ってフっと笑った。
「右に賛成〜♪」
「以下同文ってな」






                 






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