「お前もここに来たって事は考えてる事は一緒だな」
シーザーはこいつだろ?とコンコンッと手首のリングを二・三度叩く。
「まぁそんな感じです・・・」
ため息と共にその騎士は苦笑いを浮かべた。
「ちょっと失礼」
言いつつシーザーは騎士の足を軽く蹴飛ばした。
「ッた!!」
「---ッ!」
自分の足にもダメージが返ってきた。
予想はビンゴ。まったく嬉しくないが、結果はこういう事だ。
スキルだけじゃなくて痛みまで全部共同。運命共同体。
本音女と繋がれたいのに今は目の前にいる見知らぬの騎士と一心同体ときたもんだ。
この腐った赤い糸をちぎってやりたい事この上ない。
「やっかいなリングですね・・・・」
目の前の騎士(マイハニー)がそう言った
そう、やっかいだ。
こいつを押し付けた商人さえいればと思ったが、
いたのは同じ悩める子羊。
「あ〜・・んと・・・」
「あ、アレックスです」
「そうか、俺はシーザーだ。で、どうする兄弟」
「どうしましょうね。一心同体仲良くいきますか?」
アレックスという騎士は言うなり手を握ってきた。
「・・・・じょーだんだろ・・・」
「はい冗談です」
アレックスはニコリと笑った。
笑えない。男の肌が恋しいなんて思うはずがない。
それになにせ普段から性格の悪い人間と生活しているから
この外見優しそうな騎士の内側の性格の悪さが感じ取れる。
さっさとこのリングとおさらばしたい所だ。

「まぁこんな所に立ってても太陽が落ちてくだけだ。
 オメェらとりあえずその商人を探したらどうなんだ?」
「ドジャーさんにしてはそれっぽい事いいますね」
「うっせ!初対面に変な印象を与えるんじゃねぇよ!」
アレックスの隣にいたドジャーという盗賊。
見るからに自分と同じ針のむしろな人間だと分かる。
小さな頃から自分の命のために命がけで生きてきた人間だろう。
いろいろと共通点が見つかる。
「シーザーつったな?男とペアリングの感想は?」
「最悪だな。まず俺は一人の女に入れ込まない。
 だからペアリングの時点で御免だ。こんなのなら尚更だ」
「カカッ!だろうな。でもお前ら面白いな」
言うなりドジャーはアレックスの手の甲をつねった。
「イ゛ッ!!」
「いてててててて!」
当然シーザーにも痛みは以心伝心。
それを見てニヒヒと笑うドジャー。
「んでもって今までの感じからして・・・・こうすると」
ドジャーはアレックスの片足を引っ掛けた。
アレックスはコロンッと転ぶと同時にシーザーの片足の力も抜けてバランスを崩した。
「カカカカッ!!おもっしれ!」
ドジャーは腹を抱えて笑う。笑うたびにピアスがゆれている。
「ドジャーさん!」
「おいてめぇ・・・」
シーザーとアレックスがドジャーを睨む。
「わ、悪ぃ・・・ふたりして睨むなよ・・・・」
ドジャーは怒りと恨みが二倍になる事にも今気付いたらしい。
















「とりあえず入ろうぜ」
「道草食ってる場合?」
「案外道草ってのはうまい場合が多いんだよ」
ジャックとシンシアが足を止めたのは酒場だった。
こんな時間から酒を飲むつもりはないが、
とりあえずあせってむやみに歩き回っても仕方がない。
まぁ酒場は情報収集の基本だろうと軽い気持ちで足を止めた。
そこは"Queen B"と書かれた店だった。
扉を押し開ける。まだ時間も早いというのにまぁガラの悪い連中が酒を片手に騒いでいた。
「いらっしゃい。あら、見ない顔ね」
すぐそばに一人の女性。身なりと雰囲気から店員だと分かる。
しかしその女性の片手に持つ物は皿ではなかった。
血だらけの男の頭を鷲掴みにして引きずっていた。
そしてそのままジャックとシンシアの横からポィっと店外に放り投げた。
「私マリナの店へようこそ♪ゆっくりしていってね」
そう笑顔で言ってその女性は店の奥へ入っていった。
「ねぇ・・・今の何?」
「さぁ、出血大サービスってやつじゃないか?」
「それはそれはありがた迷惑ね・・・・・通常のサービスをお願いしたいわ」
言うなりジャックとシンシアも店の奥へと入っていった。
カウンターの横のあいてるテーブルにこしかけると、
それを狙ったようにさっきのマリナという女性が水とおしぼりを持ってきた。
「はいはい、何にするー?」
「あぁ、適当に2人分頼む」
「はーい」
「あと聞きたい事があるの」
「あら、どんな事?」
「盗賊を探してるんだ」
「ここでそんな事を聞くって事はドジャーの事かしら?」
「違うな、その盗賊は柄が悪くて」
「手癖が悪くて」
「やっぱりドジャーね」
「いや・・・・」
どこにでも似たような輩はいるもんだとジャックは思った。
だがシーザーが二人いる想像をすると頭が痛い。
「私たちが探してる盗賊は銀髪で女癖が悪いの」
「名前はシーザーとかそんなのだ」
「っていうかシーザーだけど」
「まぁ限りなくシーザーだな」
わけの分からない会話をするジャックとシンシアに対し、
頭の上に"?"を浮かべながらマリナは答えた。
「とにかく本当にドジャーじゃないのね。でもそんなのこのルアス99番街には腐るほどいるわ
 いや、腐ってる奴らが多いっていうべきかしら?でも料理は新鮮な物を出すわよ?
 力になれなくて悪いけど店としてのおもてなしは力いっぱいするわ」
ジャックとシンシアは礼と共にため息を漏らした。
「ジャック。道草はなんだって言ってたっけ?」
「・・・・・まぁ道草は大概寄り道の事を指すもんだ」












「んで、この広いルアスのどこをどう探すつもりだアレックス」
アレックスとドジャーはとにかく闇雲に歩き回っていた。
とりあえずはシーザーという盗賊とは別れて探す事になった。
というよりいつの間にか居なくなっていたのだが
まぁWISの連絡先だけ聞いておいたので問題ないだろう。
「そうですね、とりあえずレストランを片っ端から調べていきましょうか」
「あぁ、食わないのならそれでもいいけどな」
「じゃぁ普通に探しましょう」
「・・・・」
まぁだが探すあてがない事が大変だった。
広いルアスの中で人一人を探すのがどれだけ大変か。
「ねぇ、ドジャーさん」
「あん?」
「お腹が空きました」
「そうか」
二人の間に沈黙が走る。
アレックスの言わんとする事は分かる。
だが自分の事なのに何をのん気な事をとも思う。
面倒事はちゃっちゃと片付けておきたい性分なだけに
そんな事に耳を傾けている場合じゃない。
とにかく商人を探す事が先決だ。
「ねぇドジャーさん」
またアレックスが今度は立ち止まって言う。
「なんだよ!」
「お腹が空きました」
「・・・・・・・」
ドジャーはため息を吐く、
本当に危機感というものがないんじゃないのかとある意味心配になったが
ここはもう強行突破だ。
立ち止まるアレックスを無視してドジャーは一人歩き始めた。
オモチャ買ってくれと駄々をこねる子供のようなアレックス。
それを無視して帰ろうとする親のようなドジャー。
ドジャーはアレックスに背を向けたまま歩く。
が、突然ドジャーの足が止まる。
いや、動かない。
ハッ、と思い自分の足元を見ると
自分の足にがんじがらめに絡まった蜘蛛の糸があった。
スパイダーウェブだ。
奇妙なリングのお陰で使えるようになったスキルである。
ドジャーが振り向くと
そこではアレックスが微笑んでいた。
「ねぇ、ドジャーさん」
「わぁ〜ったよ!マリナの店でいいな!?」














食事も済ませた。
特に有意義な情報を得られたわけではないが、
この酒場に用はもうないだろう。
道草は終いだ。
ジャックは会計を済ませようと店主のマリナを呼ぼうとしたが、
あいにくマリナは手が離せない状況であった。
まだ夜でもないのに客がいっぱいなのだ。
たった一人の店員では限界といえば限界である。
しょうがないのでジャックはテーブルにグロッドを置いて席を立とうとした。
が、シンシアが思いも寄らない事を言い出した。
「あの、手伝いましょうか?」
「は?何言ってるんだシンシア。飯が脳に詰まったか?」
「いいじゃない、手詰まりなんだからこの世界の人と仲良くなっておくのも手だわ」
「あら、ありがたいわ!えっと・・・」
「シンシアです!」
「じゃぁシンシアちゃん。注文やお酒の専門的な事は私しか分からないから
 調理場の方へ行ってくれるかしら。入って右の机にあとは焼くだけの物が並べてあるわ
 ただのツマミだし大体の目分でいいから焼いといて頂戴」
「調理場!?やった!はーい」
「ちょ、調理場・・・・」
ジャックの顔が青ざめる。
シンシアを調理場に入れるという事がどういう事か、
それはガスの充満した部屋に火のついたマッチを投げ入れるようなものである。
・・・・・死人は免れないかもしれない。
ジャックは手を額に当ててため息をついた。
「あら、どうしたのお客さん」
「あぁいや、先に謝罪を言ったらいいのか線香を添えるべきなのか」
「?」
「まぁごちそう様、そしてご愁傷様。お金はここに」
ジャックは火事場から逃げ出すように一人店から出ていくことにした。
「道草はよく燃える・・・・か」















マリナの店"Queen B"
アレックスとドジャーが店の入り口にさしかかると
一人の黒髪の盗賊が出てきた。
「ん?」
その黒髪の盗賊はドジャーを見るなり立ち止まった。
そしてドジャーに話しかけてきた。
「あんたがドジャーか」
「あん?どっかで会ったか?」
「いや、障害一度たりともないな」
「じゃぁなんだ。俺のファンかなんかか?」
「・・・・・本当にあいつみたいな事いう奴だな」
「は?どういうこった」
「まぁあんたの柄が悪いってことさ」
「カッ、意味わかんね」
ドジャーがペッと唾を吐く。
そしてドジャーが黒髪の盗賊を無視して店に入ろうとした時だった。
アレックスがその黒髪の盗賊に話しかけた。
「あの、あいつって誰の事ですか?」
「ったくオメェは本当に知りたがりなんだからよ
 どうでもいいじゃねぇか。あいつっつたらあいつなんだろうよ」
「あぁ、調度いいな。もし見かけたら教えてくれ。
 銀髪の困った盗賊だ。名前はシーザー」
「「あぁあいつ(です)か」」
「へ、知ってるのか?」
「知ってるもなにもある意味すぐ近くにいますよ」
「は?どこにシーザーが?」
「それはですね」
アレックスは両手を胸に手を当て、
神々しさまでにじみ出る様な顔で言った。
「今も僕の中に」
ドジャーとジャックの飛び蹴りがダブルでヒットした。
アレックスは無残に吹っ飛んだ。
「何するんですか!」
「くだらねぇ事いうからだ!」
「そんなに間違った事いった訳じゃないじゃないですか!」













「----ッ!」
シーザーの体が突然ふっ飛んだ。
その衝撃はまるで二つのとび蹴りでも食らったかのように感じた。
何があったか知らないが・・・・・
「・・・・・アレックスと分かれて行動したのは失敗だったか・・・・」
だがまぁ今更「よぉ」とでも言って合流する気にもなれない。
一刻も早くあの商人を捕まえてこのリングを外したい所なのだ。
アレックス達とノンビリしていたら飯でも食べに行ってしまう悪寒さえした。
「ガハハ!なんだオメェ!勝手に吹っ飛んだぞ!」
気付くとシーザーの目の前には一人の大柄な戦士が居た。
引き締まった筋肉にドレッドヘアー。
そして口には煙草がくわえられていた。
「俺はメッツだ。盗賊さんよぉ、あんたはなんつーんだ?」
「・・・・あんたは道端で出会う全ての人に自己紹介するのか?」
選挙じゃないのだから他人に名前を公表して歩こうとは思わない。
「ガハハ!いっやぁー!なんか面白そうだからよ!」
「こっちは面白くないもんで、先急がしてもらう」
「待て待て、ヒマなんだって!その様子じゃなんか面倒事なんだろぉ?
 いいぜ、ヒマな時の面倒事。大好きっちゃぁ大好きだ!受け持つぜ?」
「頼んでない・・・・セールスならそこらのドアでもノックしててくれ」
シーザーは相手にしようと思わなかったが、
ふと思いとどまった。
まぁよく考えてみると一人で見知らぬ街をフラフラしていてもらちが明かない。
ここはこのメッツという男の言葉に甘えてみるのもいいかもしれない。
見るからに使いやすそうな男でもある。
「俺はシーザーだ」
「おぅ、俺はメッツだ」
「・・・・・さっき聞いた。同じ事を繰り返すなんてお前は九官鳥か?
 頭も鳥の巣見たいな髪形してるしな」
シーザーはメッツのドレッドヘアーを見て言う。
よくもまぁこんな頭にするものだ。
「う、うるせぇ!あらためてってやつだっての!で?どんな面倒事だ?」
「あぁ、詳しい事は後で話すが・・・・・・手っ取り早い話このリングを外したい」
シーザーは腕を軽く挙げ、リングを見せるようにした。
いつ見ても忌々しいリングだ。
「はぁ〜〜ぁん。外れねぇのか。一番手っ取り早い方法を試してやろうか?」
「いや、やめとく」
「ォォウ?まだ何も言ってないじゃねぇか」
「いや、やめとく」
嫌な予感がする。
こういう時のカンは当たるものだ。
「まぁまぁまぁ!ちょっとそのまま手ぇ伸ばしてろ」
「?」
シーザーは言われた通り手を伸ばしたままにした。
「よぃしょっと」
そう言いながらメッツは両手に何かを持ち上げた。
左手と右手に一本づつ。
だが太陽の逆光で見えづらい。
シーザーはリングの無いほうの手で太陽を遮った。
そして指の隙間から見えた物は・・・・・
「ちょ、まて!」
聞くか聞かずか
メッツは二本の両手斧を振り下ろしてきた。
もちろんシーザーの腕目掛けて。
二つの斧が地面に叩きつけられる。
地面のタイルはその衝撃で砕け、
斧という名の二本の牙の噛み跡を残した。
「いッたか?!」
「いかせてたまるか!お前の頭はほんとに鳥の巣か!?」
シーザーはそういいながらも自分の腕の無事を確認した。












アレックスはポトンとスプーンを落とした。
「あ?どうしたアレックス。オメェが食べる前に食器を置くなんてよぉ」
「い、いや・・・・なんか腕に悪寒を感じて・・・・」
「ん?まぁいいや。で、ジャック。大体の話は分かったか?」
「あぁ、つまりはこのアレックスをイジめればシーザーもイジめれるって事だな」
「そういうこったな」
「素晴らしいアイテムだ。ぜひ我が家にも一個って感じだ」
自分に対して小さな危機を感じられる会話だったが
アレックスは目の前の料理にゾッコンLOVE中であった。
さてどれから食べようか。
目移りするアレックス。
それを尻目にドジャーとジャックは会話を続けた。
当の被害者はアレックスとシーザーなのだが、
今一番心配して深く考えているのはドジャーとジャックである。
おふた方共々ご苦労様な事である。
「そういえばなんか店内が静かになってきたな」
「あぁ、俺がさっき来たときはまだ時間も早いというのに騒がしかったんだが」
ドジャーとジャックが店内を見渡すと
ほとんどの客がテーブルや床に伏せっていた。
「酔いつぶれるのが早ぇ奴らだ」
「どうやらみんなお昼寝の時間らしいぞ。ここは保育園か?」
「うーん・・・・」
まだ料理を迷っていたアレックス。
だがとうとうひとつの料理に目が留まった。
「このチャーハンから!」
ひとつの皿を手元に引き寄せる。
「チャーハン?俺にはハンバーグに見えるけどな」
「いや、俺にはその料理はまるで・・・・・」
そこでジャックの言葉は止まった。
頭の中でいろいろなモノが巡っているようだ。
潰れている客。
奇妙な料理。
・・・・・シンシア。
その瞬間、全てがひとつの糸に収縮された。
「まて!アレックス!それを食べるな!」
ジャックが叫ぶ。
だが
「食事に待てはありません」
アレックスは凛とした表情で言う。
そしてそのチャーハン?をスプーンで口に運んだ。
「遅かったか・・・・」
アレックスの顔が青く染まるのは次の瞬間だった。











                 






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